※この記事は2014年05月06日にBLOGOSで公開されたものです

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ヤフー株式会社は、定期的に「熟論 日本の課題」と題した政策に関する討論会を行っている。この「熟論」は、社会問題への興味喚起と理解促進のための情報提供を目的とし、政治家や学識者などを招いて実施されている。

4月16日に実施された回では、「待機児童問題と日本の保育のこれから」をテーマに、自民党の丸川珠代参議院議員、民主党の林久美子参議議員、共産党の高橋千鶴子衆議院議員が参加し、議論が行われた。

丸川議員「すごく頑張る女性だけが自分の思いを叶えられるという状況を解消したい」


冒頭、モデレーター務めるヤフー執行役員社長室長・別所直哉氏が、「待機児童の問題は、共働き世帯やシングルマザーなど限られた世帯の問題ではなく、少子化の解消や、女性の社会進出、ワーク・ライフ・バランスの実現といった日本全体の課題解決につながる部分があり、だからこそ消費税が財源に充てられているとの認識している」と述べた。その上で各議員に対して、「“待機児童問題の解決”という手段を通じて、どのような社会を実現していきたいのか」について意見を求めた。

この質問について丸川議員は、目先の目標として現在困っている母親を助けたいとした上で、「結局今までは、体力のある、すごく頑張る女性だけが自分の思いを叶えられるという状況だったので、これを解消したい。そして、子育てを楽しいと思える時間を増やしたい」と述べた。

林議員は、日本の成長阻害要因を「人口減少」「少子高齢化」「莫大な借金」の3つだと指摘。その上で、「待機児童問題の解決が、人口減少、少子化に歯止めをかけ、持続可能な日本の将来をつくっていくことにつながる」と話した。また、幼児期における教育の重要性にも言及した。

高橋議員は、「待機児童の定義についても議論があり、まだまだ補足出来てない部分があるため、まずは実態を把握することが重要だ」と述べた。その上で、現在体力的に厳しい中で育児を手伝っている高齢者や母親が夜勤のため一人で留守番をしている子どもなどがいることを指摘し、こうした問題を解決することの社会的な意義を強調した。

その後、丸川・林両議員からは、三党合意の下で成立した「子ども・子育て新システム」や平成29年までに受け皿を40万人分増やす「待機児童解消加速化プラン」の概要や同制度に対する期待が語られた。一方で、高橋議員からはこうした制度における「保育の質」の問題が指摘された。

林議員「低所得者がハイリスクなところに流れてしまう可能性がある」


「保育の質」についての議論では、「保育士の処遇改善」が問題となった。これについて、林議員が「平成26年度の予算で『保育士等処遇改善臨時特例事業』というのをつくって給与が上がっていく仕組みをつくったので、これには期待したい」と話した。

また、保育士の長時間労働が問題になることについては、丸川議員が「潜在保育士というか、資格を保有しているが働いてないという方もいる。フルタイムは難しいけど数時間は働ける。そういう人が働きやすい職場としての保育も考えていかなければいけない」と述べた。

さらに、3月に起きたベビーシッターの男が幼児を死に至らしめた事件も話題となり、「どういう人かもわからないという状況であっても、そこにすがらないといけない立場の母親がいることも事実。とりわけ、低所得者の方たちはリスクの高いところに流れてしまう可能性がある」と林議員が指摘。その上で、一定の質のところを利用してもらい、税額控除の対象にすることやバウチャー制の導入といったアイデアをあげた。

一方で、丸川議員は、「届出制でも許可制でもないため、現状を把握するということが出来ない状況。まず現状を把握できるような環境をつくることからはじめなければならないが、これを厚労省に今検討してもらっています」と話した。

高橋議員「7000億円投入しても不安な部分がある」


平成27年4月から本格施行される新保育制度では、小規模保育や、病児保育・学童についても国の資金を投入し、質・量ともに向上を図るとされている。

この財源には、消費税が充てられ、計7000億円が投入されるとのことだが、高橋議員は“質の確保”の観点から、「この額で本当に十分なのか」という懸念を示した。また、共産党は消費増税に反対の立場でもあるため、他の無駄な事業を削減し、財源に充てるべきではないかと指摘した。

議論の終盤には、ヤフーの別所氏から「政治家から民間に求めること」を問われ、それぞれが意見を述べた。

林議員は、父親の育児参加時間が短すぎることを指摘。「育児の経験が人間的な成長にもつながる」と述べ、父親や経営者側の意識改革を訴えた。

丸川議員は、今後は子育てに加えて介護の問題もでてくるとし、「仕事しながら、介護なり育児ができる職場でなければ家族が支えられないという時代が近づいている。家族を大切にする人を後押しする企業が増えてほしい」と話した。

高橋議員は、「女性が働きやすいということが、賃金の格差や処遇の改善と同時に図られていくことが理想」として、企業にもそこを期待したいと話した。

この討論会の様子は、ヤフー株式会社のページで公開されている。後日、全文書き起こし記事も公開予定とのことだ。

討論会の様子(※一部)