「発達障害は才能だ」。児童福祉歴16年の専門家がそう語る理由とは
子どもの発達障害は、近年ますます注目されている。推計で約68〜70万人いるとされている、発達障害をもつ子どもたち。どう接し、どう育てればよいのかわからず、悩みを抱えている大人は、それ以上にたくさんいるのではないだろうか。 児童福祉施設を16年間経営している茂呂史生さんは、発達障害をもつ子どもたちと関わる中で、あることに気づいたという。
発達障害は「才能」だ。
茂呂さんの著書『世界を変える子どもたち 発達障害という才能を最高に輝かせる方法』(サンクチュアリ出版)に、発達障害を「才能」と言える、納得の理由が書かれている。
人と違うことは「才能」だ
発達障害のひとつであるADHDは、右脳と左脳の情報伝達をおこなう「脳梁」という部分の違いによってあらわれる。脳の違いで起こるのは悪いことばかりでなく、人と違う発想やセンスをもつなど、既存の枠にとらわれない豊かな想像力を生んでくれる。 「無理に才能だと思い込もうとしているだけではないか」と思う方もいるかもしれないが、これが運動神経だったらどうだろうか。運動神経のいい子もADHDの子も、「ほかの人と神経回路が違うため、特殊な才能を発揮している」のは同じことだ。それなのに運動神経のいい子なら喜び、ADHDなら悲しむというのはおかしいのではないかと茂呂さんは指摘する。 また茂呂さんは、これからの時代、発達障害が「才能」として武器になっていくと言う。これまでの時代、教科書通りのことを正確にできる子が優秀とされていた。しかしこれからは、教科書通りのことはAIがやってくれるようになるだろう。そんな時代で武器になるのは、発達障害の子が得意な「発想力」「センス」「人と違うことを考える力」だ。 発達障害のポジティブな面に目を向けよう。そう茂呂さんは主張している。そうすれば、親も子ももっと楽しく生きられるのではないだろうか、と。
支援は「専門的施設に任せきり」でよい
発達障害の子をもつ親の中には、「専門的施設に預けるのは、親の責任を放棄しているのではないか」と罪悪感を持つ人もいるかもしれない。しかし茂呂さんは、「専門的施設に任せきりでよい」と言う。 才能を伸ばすには、専門家に任せるのが一番だ。むしろ、一般の幼稚園や保育園、通常学級に通わせると、子どもが周りと同じことをできずに挫折したり、からかわれたりしてトラウマを負ってしまう可能性が大きい。発達障害の専門家のもとでは、そのようなトラウマを負うリスクがない。早いうちに専門的施設に任せたほうが、子どものためなのだ、と説いている。 発達障害は才能。そう考えると、発達障害をもつ子どもとの関わり方も変わってくる。「普通」にとらわれ過ぎていないか、考えさせられる一冊。
茂呂史生さん。ご自身も発達障害の特徴を多くもっているという■茂呂史生(もろ・ふみお)さんプロフィール1978年生まれ、埼玉県草加市出身。介護を受けられない障がい者をなくそうと26歳で独立。2006年、株式会社ひいらぎを設立。訪問介護事業からスタートし、第17期目を迎えた2022年現在は、放課後等デイサービス、児童発達支援事業所、相談支援事業所、就労継続支援B型事業所、生活介護事業所、ペット共生型グループホームまで事業を拡大。年齢に関わらず、障がい児・障がい者・高齢者すべての方が利用できるサービスを提供している。
※画像提供:サンクチュアリ出版 書名: 世界を変える子どもたち
サブタイトル: 発達障害という才能を最高に輝かせる方法
監修・編集・著者名: 茂呂史生 著
出版社名: サンクチュアリ出版
出版年月日: 2022年5月18日
定価: 1540円(税込)
判型・ページ数: 単行本(ソフトカバー)・200ページ
ISBN: 9784801481046
(BOOKウォッチ編集部)