エンストを警戒する長い半クラだと自信がないまま

キャリアの浅いビギナーはもちろん、そこそこ経験年数があっても発進の半クラッチに自信がないライダーは多い。
典型的なのがNGにあるような、エンストを怖れて少しエンジン回転を上げておいて、クラッチをそろそろと滑らせながら、どこかで勝手?にクラッチが繋がってしまい、エンジン回転がドロップするものの、まァ繋がったからイイかとあらためてスロットルを捻るパターン……これだと完全に繋がるまで長い時間と距離を使ってしまい、信号待ちから発進直後に左折や右折ができない、もしくは大回りに陥りがちで、何とかしたいと思いながら解決できていないパターン。
上手な半クラッチは、GOODにあるようにアイドリングよりちょっと上の回転でクラッチが滑る時間が短く、瞬く間に繋がって半クラッチがなかったかのようにサクッと発進……ベテランのこの仕草を真似たいけれど、ちょっと試してみてもエンストするばかりで諦めるしかないほどむずかしい。
ではなぜ半クラッチがむずかしいのか、まずはその理由を知ることからはじめてみよう。

オートバイの湿式多板クラッチの曖昧さが原因

ほとんどのオートバイエンジンには、右側に丸い膨らみが出っ張っているはず。これがクラッチのある場所で、内部にイラストのようなフリクションプレート(青)とクラッチプレート(黄)が交互に重なっていて(イラストでは3枚+3枚だが実際はおよそ6枚ずつ)、クラッチレバーを握るとお互いが離れた状態となり、レバーを放すとスプリングの張力で全部の板がくっついた状態になる。
半クラッチは、お互いがくっついた状態よりちょっとだけ離れる位置となって、滑りながらチカラを伝える状態。ただこれが何枚もあるので、均等に滑ってくれるワケではなく、半分はくっついたままの位置で半分が滑りながら繋がる状態だったりする。つまり安定して一定の滑り方をキープする状態にはなりにくいという曖昧な作動なのだ。
因みに何で何枚もあるややこしい構造になっているかといえば、自動車などのお互いが一枚どうしで離れたり繋がったりするクラッチは、大きなパワーやトルクで滑ってしまわないよう直径が大きく接触面積も大きな構造になっているのに対し、オートバイのエンジンはそんな大きな円盤を設定するスペースもないのと、大径だと慣性力でエンジンのレスポンスが回転を上げるのにもたつくことになり、スロットルを閉めても回転が落ちてくるのに時間がかかるという、とてもスポーツライディングできないお荷物を抱えてしまうことになる。
そこで大きな円盤をイラストのように何枚もの小径の円盤に分離することで、接触面積を稼ぎながら回転しても慣性力の少ない小径な構造としたのだ。

滑りやすいクラッチレバー位置を避け、繋がる寸前の位置を使いのがコツ

ではどうすれば短い半クラッチが可能になるのかといえば、クラッチレバーのストロークする位置を再確認することからはじめるしかない。ご存じのようにクラッチレバーには、操作できるまでのレバーの遊びのストロークがまずあって、そこから切れはじめて完全に切れるまでの間に、半クラッチで使うストローク位置があるワケだ。
ただこの半クラッチで使う範囲が特定しにくい。
そこで必要なのが、エンストを何度も経験しながら、発進するのに必要なトルクが伝わる、狭い範囲の位置を特定する練習からはじめたい。

アイドリングでFブレーキを握ったままクラッチを放しながら繋がる位置に慣れる

ではそのエンスト練習を説明しよう。エンジンを始動してクラッチを切りローギヤへシフト、フロントブレーキをシッカリ握ったままでバイクが動かないようにして、アイドリングのままスロットルを捻らずにクラッチレバーだけ少しずつ放してみよう。
どこからかクラッチにエンジンの駆動力が伝わり、滑った状態から発進できる位置に近づくと、駆動力がチェーンやシャフトに伝わってシート位置がグッとテールリフトをはじめる。
このままさらにクラッチを放す側へ動かすと、どこかで当然エンストする。このエンストする位置を何度も繰り返し覚えてしまおう。

エンスト寸前の位置までクラッチレバーをスッと放し、すかさずスロットルを同時に捻り発進!

発進できるレバー位置を覚えたら、いよいよフロントブレーキをかけずに実際にスタートしてみよう。
最初はクラッチの位置でアイドリング回転でも発進できそうな感じは伝わるものの、スロットルを開けるタイミングが遅れエンストを繰り返すと思う。立ちゴケしないよう注意しながら、何度もエンストさせスロットルを開けるタイミングとやや大きめに捻るコツがわかってくるはずだ。
そして、アッサリと短い半クラッチで発進に成功!
一度覚えてしまうと、これまでそろそろと曖昧で長い半クラッチだったのがどれだけ無駄な時間と距離だったのか思い知るに違いない。
そして発進直後の左折や右折も、ちょっとでも速度が出たらクラッチを切ったほうが小回りしやすいのも含め、クラッチをうまく使い切るワザがどんどん自然と身についていく。
ぜひYouTubeでの実際のシーンもチェックして、早くスマートな半クラッチを身につけよう!

発進と小さなターンでクラッチを使いこなす|RIDE LECTURE 031|RIDE HI

RIDE HI(オリジナルサイト)で読む