牛丼の底に肉を隠す吉野家の裏ワザ「肉下」は本当にできるのか? 試してみた!
食楽web
吉野家の牛丼の裏ワザといえば、つゆを多めにする「つゆだく」、その反対につゆを少なくする「つゆぬき」などが有名ですが、「肉下(ニクシタ)」という裏ワザをご存知でしょうか?
筆者は最近、知人と話していた時に初めて知りました。なんでも彼は独身時代、とある吉野家に足繁く通い、お店の人とも顔なじみになり、常連として「つゆぬき」「ネギ抜き」など自由自在にオーダーしていたそうです。ここまではわかりますが、さらに続けて「肉下もたまにやってたなぁ」と言うのです。
ん? ニクシタ? 初耳中の初耳です。何かと聞けば「牛丼の丼の底に、先に肉を入れてもらって、その上にご飯を盛ってもらうこと」とのこと。え、そんなことできるの? とかなりびっくりしました。
吉野家の牛丼メニュー。最近は肉を増やす「肉だく」(158円、タマネギを増やす「ネギだく」(108円)など追加料金でオーダーできるようになっています
肉下の何がいいのかを聞いてみると、「ご飯につゆが染みないので、吉野家の白飯の旨さが際立つ」とのこと。筆者は、あのつゆが染みたお米が美味しいと思う派ですが、人の好みは千差万別なので、そういう人もいるんだな、と感心してしまいました。
「ちなみに肉下は今も普通にできるの?」とさらに突っ込むと、「うーん、よく行く店だったからできた可能性もあるし、最近行ってないからわからないね…」と曖昧な返答。そういう時こそ俄然、やってみたくなる性分なので、吉野家で“肉下”は普通に頼めるのか、実際にチャレンジしてみることにしました。
果たして肉下はできる? できない?
おなじみオレンジ色に輝く吉野家。[食楽web]
というわけで某日、あまりお客さんがいない時間帯に吉野家に到着。思えば、筆者はかなり久しぶりに吉野家に足を踏み入れます。メニューを見ると、カレーと牛丼のコラボ「肉だく牛黒カレー」(657円)などの新メニューがあって、これはこれでソソられますが、しかし今回はナゾの“肉下”に挑戦すべくやってきたので、浮気はしません。
さっそく注文です。事前に店員さんに伝えるセリフを用意してきました。「牛丼並盛、キムチと納豆、そして牛丼は“肉下”にしてもらえますか?」。これをそのまま呪文のように唱える手はずです。
いざ本番。若い女性店員さんがオーダーを取りに来たので、練習どおりスラスラ伝えました。ところが、店員さんは「???」という顔をしています。案の定というか、恐れていたとおり、“肉下”が通じていません。
となると説明するしかありません。実はこれも想定内。次のセリフも用意していました。「牛丼の丼の下に先に肉を入れて、その上にご飯を盛ってほしいんです」と。すると店員さんは困惑の表情を浮かべたまま、「少々お待ちください」と言い残し、厨房へ走って行きます。うわ、迷惑だったかな…と少し後悔。
しばらくすると、ガタイのいい男性店員さんが笑顔で戻ってきました。そして笑顔で「大変申し訳ないのですが、当店では盛り付けを変えることはできないんです。ただ、お客様ご自身でやっていただけるようでしたら、別皿でご用意しますよ」と言われました。ものすごく柔らかい物腰で、しかも親切。
少し迷惑だったかなとも思ったので、「あ、じゃあ普通の牛丼で大丈夫です」と伝えたところ、「いえいえ、“牛皿定食”のように準備するだけですので、まったく構いませんよ」と実に優しい。「ではそれでお願いします!」と、店員さんの提案方式で出してもらうことにしました。
“肉下”をお願いしたら、“肉別”になった
しばらくして登場したのは、トレイに白ごはん、空の丼、そして肉が盛られた皿、そして追加オーダーの納豆&キムチ。確かに店員さんが言っていた「牛皿定食」のようにも見えます。そして、このまま丼の白飯と牛皿をおかずに食べたとしても、知人の言っていた “吉野家の白いご飯だけを堪能する”ことは十分に可能です。
しかし、せっかく用意してくれた空の丼を使わなかったら、お店の方に申し訳が立ちません。そこで初志貫徹、自分で肉下を作ることにしました。
肉下を自分で作ってみた
セルフ“肉下”作り。と言っても簡単です。空の丼に肉を入れ、その上に白飯をのせるだけです。そして白い丼飯に納豆とキムチをのせます。一見、シンプル&ヘルシーな女子力高めの丼のように見えますが、丼の下には肉が控えているわけです。人知れず肉が隠れている。これだけでワクワクしますね。
トッピングのキムチ、納豆をのせてみました
まずは、納豆キムチごはんからいただきます。やや硬めに炊かれたご飯は、つやつやしていて水分の量も絶妙。粒立ち感があり、知人が言っていた吉野家のごはんの美味しさがよくわかります。吉野家で、ご飯だけを単体で食べる機会、ありそうでないかもしれません。そして掘るように食べ進んでいくと…
丼の下から牛肉がお目見え
じゃ~ん、お肉が登場です。自分で埋めたのでそこに肉があるのはわかっていたとは言え、肉が見えた瞬間、妙に嬉しい。そして久しぶりに食べた「吉牛」はめちゃくちゃ美味しい。ふんわり柔らかな牛肉。適度な脂身。甘すぎず、しょっぱすぎない煮込み具合。たまに遭遇するくたくたの玉ねぎ。汁っけのない硬めのご飯と合わせると、思った以上に味の輪郭がくっきりとして、格別に美味しい気がします。
再び上の納豆キムチご飯を食べ、下から肉を引っ張り出してご飯とかっこむ。これを交互に繰り返していると、これまで食べてきたどの吉野家の牛丼よりも贅沢な気がするのが不思議です。
肉を下から引っぱり出す幸せ
もしかすると、賢明な読者の中には、「牛丼にキムチと納豆をのせればよくね?」と思う人もいたかもしれません。しかし、これが違うんです。まず、ご飯の下に埋められた肉というのは、いつまでもホカホカ。なおかつ最後のひと口まで肉&ごはんを楽しめるうえ、キムチ納豆ご飯の間に食べるとご馳走感が半端ない。そして何より、肉を掘り出す宝探し感は唯一無二。“肉下”でなければこうはいかないのです。
というわけで結論です。吉野家の裏技「肉下はできるかできないか」については、「デフォルトではできない」というのが答えです。しかしながら、親切な吉野家の店員さんのおかげで、今回は肉を別皿にして空の丼まで用意してくれたため、「セルフ肉下」を作ることができました。
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実際に食べてみると、丼の中の肉の上下が変わるだけで、味わいも大きく違ってくるのがよくわかりました。この食べ方はとても気に入ったのですが、やはり興味本位でお店の方をざわつかせることがないよう気をつけねばなりません。反省しつつ、次は、「牛皿定食」を注文したうえで空の丼をお借りして、やっぱり肉下をやってみたいなと思う次第です。
(撮影・文◎土原亜子)