『鳥割烹 大金』の唐揚げライス | 食楽web

 鶏料理専門店のからあげは絶対に美味しい――

 これは「カラアゲニスト」として日々からあげを食べ続けている筆者の経験則。鶏肉を知り尽くし、その扱いにも慣れたお店のからあげに、まずハズレはありません。今回、取材した東京・日本橋浜町の『鳥割烹 大金(だいきん)』もそのひとつ。もともとは料亭などへの仕出し料理店として明治期に開業したお店で、昭和に入ってから鶏肉の販売を始めたそうです。そして昭和42年、現在の『鳥割烹 大金』を開業したとのこと。いまの店主・鈴木慎太郎さんで4代目。長い歴史と風格を感じるお店です。

都営新宿線・浜町駅から徒歩数分のところにあります

 こちらの人気メニューは「唐揚げライス」と「竜田揚げライス」。5個(990円)、4個(940円)、3個(890円)と個数を選べるだけでなく、からあげと竜田あげのミックスも可能です。筆者は5個(からあげ3個・竜田あげ2個)でオーダーしました。

4代目店主にからあげ&竜田あげの作り方と旨さの秘密を聞く

唐揚げライス。からあげ3個と竜田あげ2個が付いてきます

 待つこと数分、目の前に運ばれてきたからあげ&竜田あげを見ると仰天必至。とにかくデカい! PCのマウス……いや、子どものコブシほどはあるでしょうか。「重量で言えば1個70gほどです」と店主の鈴木さん。平べったい形状も特徴的で、ひと口目で半分も食べ切れないでしょう。しかしここまで大きいとテンションも上がるというもの。漬けダレの色が衣に出て濃い色合いのものがからあげ、やや白っぽいものが竜田あげです。

からあげの衣は濃いめの色合い

 さっそくからあげからいただきましょう。まずは衣。炙りたての新鮮な焼き海苔のようなパリッとした歯ざわりで、軽いおこげが実に香ばしい。弾力のある肉からショウガの爽やかな風味が口から鼻、のど一帯に拡散していきます。ちなみにニンニクは不使用。ショウガの風味と肉の旨み、そこに衣の香ばしさが加わって、ご飯が進む濃厚な味に仕上がっています。

肉が薄めなので、衣と肉のバランスが常に一定で実に美味

 一方の竜田あげは、からあげに比べて衣がフワリとした食感。肉もソフトな歯ざわりで肉汁もたっぷり。こちらも旨み十分。2個だけですがビッグサイズなので満足感は十分です。両者とも味が異なるので、器にほぼ擦り切れ状態のご飯や味噌汁、1個だけ付いているピーマンのからあげで味覚をリセットしつつ食べていきました。

竜田あげの衣はやや白っぽく仕上がっています

 さて、こちらのからあげと竜田あげ、作り方はどう違うのでしょうか。店主の鈴木さんいわく、「肉を漬けダレに1日漬け込むところまでは同じ。からあげはその肉に片栗粉をまぶして揚げますが、竜田あげは溶き卵にくぐらせたあとに片栗粉をまぶして揚げています」とのこと。

 これは先々代に当たる2代目店主が考えたやり方だそうで、それを長年受け継いでいるそうです。「竜田あげに溶き卵を使うのは、旨みや肉汁をより閉じ込められるからです」と鈴木さん。言われてみれば、竜田あげはからあげよりも旨みが強くて肉汁も多い印象です。衣のフワリとした食感も溶き卵のなせる業なんでしょうね。

器にほぼ擦り切れ状態のご飯。からあげにピタリと合う炊き具合

 ところでメニューを見ると、からあげの個数を「5個」ではなく「5かん」などと表記しているのに気付きます。「枚」で数えるお店はありましたが「かん」を使うお店は初めて。鈴木さんにその理由を尋ねると、「私が子どものころからすでに“かん”を使っていました。ハッキリした理由は不明ですが、料亭などへの仕出し料理を作っていたことに関係しているのかもしれません」とのこと。単位の由来は不明のようですが、これも“歴史のあるお店あるある”ですね。

メニューを見ると「個」ではなく「かん」と数えているのがわかります(食楽web)

 この『鳥割烹 大金』ですが、場所柄、界隈のビジネスマンにも愛されるお店です。テイクアウトもやっているそうなので、お弁当でからあげと竜田あげを買って帰り、オフィスなどで楽しんでいる人もかなり多いと思われます。

●SHOP INFO

店名:鳥割烹 大金

住:東京都中央区日本橋浜町2-10-6
TEL:03-3666-6929
営:月~金11:00~14:00、17:00~22:00
  土11:00~14:00
休:日・祝

●著者プロフィール

松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。