東京大学運動会ア式蹴球部では学生が主体となった“ユニット”が活躍している【写真提供:東京大学運動会ア式蹴球部】

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ア式蹴球部がアクセンチュア株式会社とスポンサー契約、ワークショップなども実施

 東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部)では学生が主体となった“ユニット”が活躍している。

 昨年、現役を引退した直後の林陵平を監督に招聘した「強化ユニット」。オーストリア・ブンデスリーガ2部のFCヴァッカー・インスブルックとのパートナーシップ締結に尽力した「国際的活動ユニット」。データ分析やスカウティングを行う「テクニカルユニット」など、その活動は多岐にわたる。

 そして昨年4月、スポンサー獲得活動を行う「プロモーションユニット」は大手コンサルティングファームのアクセンチュア株式会社とスポンサー契約を実現させた。同社は今年、東京大学と京都大学による対抗体育大会「双青戦」のメインスポンサーも務めた。

 2022年2月12日に予定されていた双青戦の試合は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止となったが、同日にはアクセンチュアを招いてオンラインのリクルーティングイベントが実施された。イベントには東大・京大の両校から合わせて約120名が参加。アクセンチュアの企業紹介やスポーツビジネスに関する講義の後には、グループディスカッションのワークショップも行われた。

 アクセンチュアがア式蹴球部のスポンサーとなった大きな目的は2つ。東大生の採用を見据えたリクルーティングと、スポーツビジネスに対するコンサルティングの結果を生み出す1つの場にしたいというマーケティングの両面が挙げられる。

 また、イベントに出席した同社の中村健太郎氏は「日本のスポーツ界においてはスポンサー企業側のアクティベーションがまだまだ不十分で、企業のロゴを掲出するだけとなってしまっている実例もあります。我々はア式蹴球部への支援を通じて正しいスポンサリングを身をもって示したいとも思っています」と、3つ目の目的について語った。

「アクセンチュアさんのスポーツビジネスに関する講義はインターネットで調べて簡単に得られるようなものではなく、僕らが普段の生活では決して触れることができないとても参考になるお話でした」

 イベントを終え、このように話したのはア式蹴球部プロモーションユニットに所属する3年生の石丸泰大だ。アクセンチュアの担当者とのやりとりを重ね、提携後初となるイベントの開催にこぎつけたことにひとまず安堵しつつも、「スポンサーを受けている立場としてはなかなか目に見える形での対価、機会の提供ができていないのが現状」と課題も口にする。

「学生なのにすごい」を超えて、まだ誰も考えたことのない企業とクラブの関係へ

 東大生の採用に関しては多くの企業が興味を示すところで、ア式蹴球部のプロモーションユニットにとっては大きなセールスポイントでもある。石丸は「(東大の)体育会の学生との接点を持てるという部分は企業の方々に魅力を持ってもらえるところ。だからこそ、そういう場を作ることは絶対に必要」と、今後もリクルーティング関連のイベント開催に意欲を見せた。

 そして「僕らはスポーツ業界や日本社会が抱えている問題の解決に大学スポーツの現場から寄与できるようにしていきたい。『学生なのにすごい』という評価を超え、『1つのサッカークラブとして面白い』と思ってもらえるような、まだ誰も考えたことのないような企業とサッカークラブの関係性を築いていきたい」と、さらなる成長を誓った。

 学生スタッフが主体となり、新監督招聘や新規スポンサー獲得などに取り組んでいるア式蹴球部。昨季の東京都大学1部リーグで最下位となり、チームは残念ながら2部リーグへ降格となった。新シーズンは1部再昇格に向けてピッチの上での結果も求められることになる。ピッチ内外で彼らのチャレンジがどのように実を結ぶのか。その行方に注目だ。(石川 遼 / Ryo Ishikawa)