月の裏側で不思議な「ガラス球」が見つかる
中国の月面探査機「玉兔2号(YuTu-2)」は2019年1月3日に月面に着陸してから、3年以上にわたって月の裏側を探査しています。その玉兔2号が半透明のガラスでできた球体を発見したと、中山大学および中国科学院の研究チームが発表しました。
Translucent glass globules on the Moon - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2095927321006964
https://www.sciencealert.com/the-moon-has-glass-balls
月は公転と自転が同期しているため、常に地球に同じ面を向けて公転しています。普段私たちが夜空に浮かぶ月を眺めている時に見えているのは月の表側で、その裏側は地球から見ることはできません。
月には地球の大気圏のように隕石(いんせき)の落下を防ぐものがないため、月の裏側はクレーターだらけでボコボコになっているといわれています。そんな月の裏側で、玉兔2号は3年間にわたって探査を行っており、2022年1月時点で撮影枚数が1000枚以上、総走行距離が1000メートル以上に達していると報じられました。
玉兔2号が月の裏側で見つけたガラス球の写真が以下。どちらも非常に小さなものですが、きれいな球体をしていることがわかります。
研究チームによれば、ガラス自体は月において珍しいものではなく、月面の砂に含まれるケイ酸塩や隕石が高温になったときに生成され得るとのことで、これまでにもガラスが月面で発見されたことは何度もあるそうです。
地球や月に隕石が落下した時、衝突の際に激しい熱を発して地表が溶けて、空中に飛び散ることでガラス球が作られることもあるとのことですが、そうした球体は非常に小さく、1mmに満たないサイズであることがほとんど。しかし今回玉兔2号によって撮影されたガラス球は直径およそ15mm〜25mmといったところで、非常に珍しいサンプルといえます。
なお、過去にはアポロ16号が月面から直径40mmのガラス球を回収しています。このガラス球はクレーター近くで発見されたもので、やはり隕石の衝突によって生まれたと考えられています。ただし、研究チームは、ガラス球の形状や周囲の環境を踏まえて、「今回発見されたガラス球は、火山性ガラス質が衝突で溶けて、半透明の球体になったのではないか」と推測しています。
今回は玉兔2号が撮影した写真しかなく、ガラス球の組成を調べることはできませんが、研究チームは「月面で、目に見える大きさで半透明のガラス球が発見されたのは初めてです。このようなガラス球は月の高地に豊富に存在するはずで、月の歴史を明らかにするための有望なサンプルになると、本研究は予想しています」と述べ、ガラス球の存在は今後の月の研究に大きな可能性を与えてくれるものだと評価しています。