この記事をまとめると

■前後4枚のドアをシザースドアにしてしまったワゴンR

■28万円で購入したワゴンRに約300万円のカスタム費用をかけている

■62歳のオーナーはワゴンRをカスタムするときのノリは20代のままだ

ドアを開けても乗り降りは……しにくい?

 軽でも究めれば末永く楽しめる、そんな愛ある一台が大阪オートメッセの5号館、中央辺りで見られる。ツチヤさんの平成11年式(1999年式)ワゴンRだ。

 グイグイ低音というよりボーカルの伸び重視の車載オーディオで、いまどきのアイドルの曲を爽やかに流している。が、4枚のシザースドアは青天を衝くがごとく、勇ましい様子でそそり立つ。

「ドアをあけたらむしろ乗り降りしにくいんじゃない?」というネガティブなツッコミはごもっともかもしれないが、むしろリヤドアまでフルオープンにしても干渉しないことを賞賛したい、そんなシザースドアなのだ。

このワゴンRに普段から乗っているというからスゴい!

ワゴンRをガルウイング化するキットは15年ぐらい前かな、かなり流行ったんですよ。前席ドアはそれを使っていますが、リヤはワンオフでヒンジを作ってもらったんです」

 フツーなら水平方向に開閉するヒンジを、ただ上下に回転させるヒンジに変えるだけではない。そのまま上下回転させたらフェンダーやピラーのパネルに当たるので、逃げの角度が出来る程度に水平スライドさせてから、上にハネ上げなければいけない。そこをダンパーで支えているワケだ。

 閉める時は逆に、ドアを下ろしてから、逃げの角度分を水平に押し込む。ドアキャッチはノーマルそのまま。とはいえ車検時には通常開閉に戻すため、ヒンジは溶接ではなくボルトオンになっている。

「カスタムカーでも普段から乗れないとツマらないじゃないですか」

 車検を通すのが面倒で、カスタムのベース車両に対してはドライなオーナーも少なくはない。でもツチヤさんはもう10数年、28万円で手に入れたワゴンRにその10倍以上のカスタム予算をつぎ込んで、大事に乗っている。

 推しのアイドルが令和にアップデートされているものの、「その昔に流行ったスポコン(スポーツコンパクト)ってスタイルなんです。ほら、フェンダー自体がオバフェンですけど、ここのフェンダースポイラーとかが、それっぽい。だからちょっとレトロなカスタムなんです」

 ちょこっとづつ手を加えてきて、気分としてはハタチの男の子がやるようなイメージのクルマになったと、62歳のツチヤさんは苦笑いする。そう、彼にとっては、免許取り立てのハタチの頃の気分に戻れる一台なのだ。