金沢市民熱愛のB級グルメ「ハントンライス」とは? 元祖店『グリルオーツカ』に行ってきた!
金沢の名物グルメの一つ・ハントンライス | 食楽web
「金沢のご当地グルメ」として市民にはよく知られているものの、県外の人にはほとんど知られていない「ハントンライス」なるメニューをご存知でしょうか? ケチャップライスを卵で包んだ、いわゆるオムライス状のものの上にフライをのせ、ケチャップとタルタルソースをかけるというもの。独特な構成かつボリューミーな印象ですが、これがやみつきになるということで、地元ではかなり有名。金沢市内にはこの「ハントンライス」を出す洋食店が複数あるそうです。
というわけで今回は、この「ハントンライス」の元祖と呼ばれる名店『グリルオーツカ』に出向き実食。さらにこのメニューの成り立ちを店主の大塚正樹さんに聞きました!
外観からして「絶対にうまい店感」を醸し出す『グリルオーツカ』
金沢片町にある『グリルオーツカ』
JR金沢駅から約2.5キロほど離れたエリアにある片町エリア。金沢市内屈指の繁華街であり、飲食店や居酒屋などが多く立ち並ぶエリアです。余談ですが、この地の賑わいを拝借し、北陸地方の別の街では「片町」と名乗るエリアもあるようです。さながら東京で言うところの「○○銀座」のような感じですね。
さて、この片町の一角にあるのが「ハントンライス」の元祖と呼ばれる『グリルオーツカ』。雪国・金沢らしく雪がしんしんと降る中、お店に入ってみることに。
歴史を感じつつ、清潔に保たれた店内
外観からして「絶対にうまい店」感を醸し出しているシブい『グリルオーツカ』ですが、それは店内に入って確信に変わりました。歴史を感じる店内である一方、細部まで清潔に保たれており、ここでもまたシビれる筆者でした。お店の方の思いとは別にして、こういうお店はこれから先もずっと変わることなくこのままでいて欲しい! と勝手な思いを抱く筆者でした。
トロットロの卵で巻いたケチャップライス、魚介フライ、ケチャップ・タルタルが渾然一体に!
『グリルオーツカ』の「ハントンライス」980円
日替わりのランチメニューもかなりそそられましたが、迷わず名物の「ハントンライス」(980円)をオーダー。オーダー後、数分後にサーブされたのがこちら。ケチャップライスをトロットロの卵で巻き、その上にのせられたカジキマグロ・エビフライが各2個ずつ。さらに、ケチャップとタルタルソースがコンビネーションでかかっています。
エビフライ
さっそくいただきましたが、これがもう絶品! カジキマグロとエビフライは底面がトロトロ卵と一体化しており、盛り付けの際に転がらないよう工夫されているようです。また、卵で巻かれたケチャップライスは、ごくごくシンプルな味である一方、和えムラなどがなくかなり繊細に作られていることがわかります。
ムラなくケチャップが綺麗に和えられたケチャップライス
これらを、ケチャップ・タルタルソースでさらに和えていただくわけですが、この融合ソースが複雑な味を醸し出しつつ、素材それぞれの旨みも引き上げる感じで実に美味しい。どこか可愛らしくも感じるこの「ハントンライス」、日本人なら誰でも好きな味だと思いました。県外にこのメニューが浸透しなかったことが不思議です。
その歴史は65年! 諸説ある「ハントンライス」の変遷をズバリ大塚さんに聞いてみた
創業者の孫にあたる三代目店主の大塚正樹さん
結構なボリューム感もある金沢名物「ハントンライス」ですが、『グリルオーツカ』の現店主、大塚正樹さんの祖父にあたる創業者が「まかない」として考案したものが広まっていったそうです。大塚さんに聞いてみました。
「当店は昭和28年に開店した『喫茶スワン』という喫茶店がルーツです。この店は、割烹着を着た女の人が飲み物を出すお店でしたが、当時は『水商売的だ』として、地元ではあまりウケが良くなかったと聞いています。そこで祖父が昭和32年に洋食屋として再出発すべく『グリルオーツカ』に転じました。
祖父はもともと金沢に昔からある『大和』というデパートの中のレストランで料理長をした経験があり、この時に祖父が従業員用のまかない料理として考案したのが今の『ハントンライス』に近いものだったようです。厨房の従業員たちはとにかく時間がありません。限られた時間であっても、一皿で料理もご飯も全部食べられるように、と祖父が考案したものだと聞いています。
その後、この『大和』のレストランで働いていた人が独立され、新しいお店を出す際に『何か名物的なものがあったほうが良い』と、この『ハントンライス』をメニューに加え広まっていったようです。これが昭和42年のことですが、その後、当店でも『ハントンライス』をメニューに加えました。ですので、メニューを考案したのは私の祖父ですが、実際に商品化したのは別のお店だったということです」(大塚さん)
全国的には珍しいメニューだが、老若男女誰でも美味しくいただける「ハントンライス」
『グリルオーツカ』の歴史ある店内でいただくハントンライス、とにかく絶品です!
気になる「ハントンライス」の名の由来は「ハンガリーの『ハン』、そしてフランス語でマグロを表す『トン』を合わせた」と言われています。
「もともと『ハントンライス』の上にのせるフライは、かつて価格が安かったカジキマグロだけのことが多かったようです。現在の当店ではカジキマグロのフライに加え、エビフライをのせたものをお出ししていますが、この構成もお店によって微妙に異なるようです。
私にとっては、自分が生まれた頃から普通に口にしていたメニューですので、『全国にある料理だ』とずっと思っていましたが、大人になって金沢だけのものだと知り驚いた経験があります(笑)。
しかし、これだけさまざまな料理がある中、当店であえてずっと変わらず作り続けている『ハントンライス』を『金沢名物』としてご支持いただけていることは本当にありがたいことです。また、このように広めてくださったのは他でもない地元のお客さんですので、地元の方々には感謝しかありません。全国的に見れば珍しいメニューだと思いますが、お子さんから年配の方まで誰でも美味しく感じていただけるはずだと思っています。金沢にお越しの際はぜひ一度食べにお越しいただければ幸いです」(大塚さん)
雪がしんしんと降るなかに行った『グリルオーツカ』ですが、「ハントンライス」の美味しさに身も心もすっかり温まりました。「金沢のご当地グルメ」であることに加え、筆者的には「癒しのメニュー」でもあると思いました。
(撮影・文◎松田義人)
●SHOP INFO
店名:グリルオーツカ
住:石川県金沢市片町2-9-15
TEL:076-221-2646
営:11:00~15:30、17:00~20:00 ※まん延防止の為、今は時短営業中。平常時はこの時間での営業です
休:水曜