2021年、ほとんど定期便へ投入されることなく1年を終えたANAの超巨大旅客機「エアバスA380」。ただ、さまざまな意味で注目を集め続けました。その1年は、どのようなものだったのでしょうか。

「初日の出フライト」から始まったA380の2021年

 新型コロナウイルス感染拡大の影響が続くなか、2020年3月から定期便運用から外れている、ANA(全日空)の総2階建て旅客機「エアバスA380」は、その巨大さもさることながら、ルックスも特徴的です。ANAでは「フライングホヌ」の愛称のもと、平時は成田〜ホノルル(ハワイ)線の専用機として運用。ハワイの神聖な生き物とされるウミガメ(ホヌ)の特別塗装を、機体ことに異なるテーマカラーで施しています。
 
 年間通してほぼ定期便への投入が見合わせとなった2021年、平時のように旅客便で活躍――とはならなかったものの、ANAのA380は多方面で、その注目を浴びました。


成田空港にならぶANAのA380(乗りものニュース編集部撮影)。

●元旦から魅せた! A380で初日の出フライト

 2021年元旦、成田空港発着の「初日の出フライト」にA380が投入されました。「初日の出フライト」は2000(平成12)年から羽田空港発着などで実施されており、毎年恒例となっていますが、A380が投入されるのは初とのことでした。

 当日は226人の乗客を乗せ成田空港を出発し、富士山上空で初日の出を30分ほど鑑賞しました。フライト時間は約2時間で、ドリンクやおせち風の食事も用意されたほか、ぬいぐるみなどの搭乗記念品もプレゼントされたとのことです。

チャーターなどイベント拡大 そして500日ぶりにホノルルへ

●名物「遊覧チャーター」が各地で開催、駐機状態でレストランも

 ANAのA380は、成田空港で羽を休めつつ、不定期で同一空港を発着する遊覧チャーターなどに投入されています。2021年は、拠点の成田空港以外でも、中部や関西などへその取り組みを展開しました。

 このほか、地上駐機をしたA380を機内食を提供するレストランとして開放するイベント「レストランFLYING HONU」なども実施。現在も不定期で”開店”しています。このイベントでは、駐機中の2機をフル活用。1機はレストラン、もう1機は「機内見学会」の会場として開放されます。


ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港へ着陸するANAのA380(2021年8月、乗りものニュース編集部撮影)。

●500日ぶりにホノルルへ就航

 2021年8月のお盆期間に照準を合わせ、ANAのA380は2往復のみ、成田〜ホノルル線へ限定復帰しました。1往復目(8月9日成田発→10日ホノルル発)には「ANAブルー」がテーマカラーの1号機(機番:JA381A)が、2往復目(13日成田発→14日ホノルル発)には「ハワイの海」がテーマカラーの2号機(機番:JA382A)が投入されました。復活初便となった9日成田発のNH194便は143人が乗り込んでいます。

 このとき担当したパイロットは「『しっかり準備しなければいけない』と気が引き締まる思いでした」と話し、CA(客室乗務員)は「率直にとても嬉しかったです。来ました!といった感じですね。まざまなことをイチから勉強し直し確実な知識や技量をつけ、イメージトレーニングを重ねました」とコメントします。

ついに3号機納入! 国内線にも限定就航

●ついに来た!オレンジカラーの最後の1機が納入へ

 2021年10月、「ハワイの夕日」をイメージした「サンセットオレンジ」をテーマカラーとするANAのA380の3号機(機番:JA383A)が、当初の計画から1年半後ろ倒しする形で納入されました。当初3号機は、2020年4月に納入され同年夏に路線就航予定でしたが、新型コロナの拡大により納入延期を余儀なくされていた機体です。3号機は、ほとんど完成状態のままエアバスの施設に保管されていたのです。

 エアバス本社のあるフランス・トゥールーズからの出発に際し、ANAの担当者は「コンディションが良く、保存期間中もエアバスさんがしっかりメンテナンスとサポートをしてくれたのだなというのが見て取れた」とコメント。納入のためのフェリーフライトでは、出発地のトゥールーズ、到着地の成田空港ともに、その姿を撮影しようと航空ファンが集まりました。


下地島空港へ飛来したANAのA380(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

●A380がなんと国内線へ!

 先述の通り、A380は成田に留まらず、全国各地で遊覧チャーターを実施するようになりましたが、それに加えファン向け企画の一環とし、成田発着のチャーター便の「国内線」を運航するようにもなります。9月には成田〜新千歳、那覇のチャーター便を運航し、それぞれの地で遊覧チャーターも実施しました。

 10月には、沖縄特有の青い海と機体との距離感などから「航空機見学の聖地」(ANA)とされる沖縄・下地島空港へも、チャーター便での国内線を運航しました。ここでは遊覧チャーターは実施されず、機内見学ツアーが行われています。なお、ANAの同空港への旅客便乗り入れは、これが初めてでした。

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 2021年のANAのA380は、2機で計41回、旅客を乗せてフライトを実施しました。2022年は、2年連続で実施される元旦の「初日の出フライト」からスタートする予定です。来年も引き続き、航空ファンを喜ばせてくれる旅客機となることでしょう。