福井に誕生「たけふ新」駅 なぜそこに「新」? 実は理由があった
福井鉄道の越前武生駅が、2023年春に新たな駅名「たけふ新駅」へ変更されます。先日発表されたこの見慣れない新駅名、なぜ生まれたのでしょうか。
一瞬「ん?」となる駅名が生まれた理由
福井鉄道の越前武生駅が、2023年春に新たな駅名「たけふ新駅」へ変更されることになりました。
変更になった理由は、およそ3kmほど東側に新設される北陸新幹線の駅名が「越前たけふ駅」に決まり、重複を避けるためです。
駅名が「たけふ新」となる越前武生駅(乗りものニュース編集部撮影)。
さて福井鉄道の新駅名、"駅"が付いていると違和感はありませんが、正式には「たけふ新」です。あまり他で見かけない珍妙な駅名に、SNS上でも困惑の声が。
この「たけふ新」、実は2010(平成22)年まで使われていた駅名なのです。当時は漢字表記の「武生新」でした。また同時に、福井市内にある赤十字前駅は、同年まで「福井新」駅でした。
福井新駅は1933(昭和8)年、福井駅前までの路面電車区間が開業したことで移設・再開業し誕生しました。かつては、専用軌道として走っていた区間の南端が武生新駅、北端が福井新駅だったのです。
越前武生駅の新駅名は「福鉄たけふ駅」「福鉄えちぜん駅」「武生新駅」「菊花たけふ駅」「越前府中駅」から投票が行われて決定されました。福井鉄道によると、「武生新駅」が最多得票を得たため決定したとのこと。
しかし昔とは違って武生を「たけふ」とひらがな表記にした理由について、福井鉄道は「武生という地名は県外のお客様に馴染みが薄く難読であるため、利便性を図ってひらがなとしました」と話します。
なお、北陸新幹線の新駅が「越前たけふ」に決まったときも、同様に越前市長が「県外の人には読みにくく、また平仮名のほうが親しみをもってもらえる」と話しています。
そもそもなぜ「新」の位置がそこ?
そもそもなぜ「新武生」ではなく「武生新」なのでしょうか。福井鉄道によると、現在の越前武生駅が開業したのは1924(大正13)年ですが、折しも、国鉄武生駅の駅前から東の戸ノ口町までを結ぶ武岡軽便鉄道(のちに福井鉄道南越線)が1914(大正3)年にすでに開業しており、その始発駅の駅名が当時「新武生」だったのです。
南越線の旧村国駅付近の民家に残る160形電車(乗りものニュース編集部撮影)。
中長距離列車が発着する国鉄駅と区別するため「新」を付けたい、でも「新武生」はもう使われている……そこで生まれたのが「武生新」という駅名でした。南越線が新武生から「社武生」に改称したあとも、福武線ではこの駅名を2010(平成22)年前で使い続けていました。
今回、改称駅名の最終候補に「新武生」ではなく「武生新」が選ばれた理由についても、馴染みの深い旧駅名であるからとしています。
さて、車内放送などはどうなるのでしょうか。かつては他の駅と同じく「この電車は、武生新ゆきです」「まもなく、福井新です」と放送していたため、それに準じる可能性が高そうです。
ちなみに、島根県内の宍道湖北側を走る一畑電車には、「湖遊館新駅」という駅があります。こちらは「駅」までが正式名称。つまり、「湖遊館新駅駅前」などという言い方が生まれたりするのです。こちらも不思議な駅名と言えます。