金正恩「原潜開発」担当者ら14人を処罰…目標基準を満たせず
北朝鮮で最近、原子力潜水艦に搭載する小型原子炉の開発を担当していた幹部と技術者ら14人が、朝鮮労働党から要求された基準を順守しなかったとの理由で交代させられ、一部は重い処罰を受けたとの情報が出ている。
金正恩総書記がすでに、「原子力潜水艦の設計が終わった」と宣言していることも、処罰の重さに影響した可能性がある。
金正恩氏は今年1月の第8回党大会での報告で、次のように述べていた。
「中型潜水艦武装近代化目標の基準を正確に設定し、模範改造して海軍の現存の水中作戦能力を著しく向上させうる確固たる展望を開き、新しい原子力潜水艦の設計、研究が終わって最終審査の段階にあり(後略)」
ただ、北朝鮮ウォッチャーの間では、同国が実際に原潜を建造し、実戦配備するのは容易でないと見られていた。交代・処罰の情報が事実だとしても驚くには当たらないが、北朝鮮当局にとっては一大事だろう。
金正恩氏は、軍需関係の科学者と技術者を誰よりも大事にしているが、北朝鮮において最高指導者の権威を貶める行為は絶対に許されない罪だ。
(参考記事:金正恩に「残酷な証拠写真」を撮られた軍幹部らの悲惨な運命)
デイリーNKの複数の内部情報筋によれば、党中央委員会の軍需工業部は昨年10月から原潜の設計に関する審査を進め、今年8月末に完了した。そして、結果をまとめた報告書に対し、党の上層部から非難の声が噴出したという。
具体的には、交代させられた幹部と技術者らは、党が示した3つの開発基準(目標)をいずれも満たせなかったとのことだ。3つの開発基準とは◇既存の小型潜水艦の性能改良◇既存の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載可能な新型潜水艦の建造◇多角化した核発射手段を搭載した原潜の建造――だという。
正直なところ、情報筋の説明では具体的な状況がよくわからない。特に小型潜水艦に関する項目は、これを原潜に改造せよということなのか、あるいは原子炉開発と関係なく改良せよということなのかで、要求水準は全く異なる。というより、老朽化して船体にガタがきている北朝鮮の小型潜水艦に原子炉を搭載することなど、土台無理な話だ。
いずれにせよ、設計された原子炉では大きすぎて、ちょうど良いサイズの潜水艦を作れないということなのだろう。
設計図には、ほかにも大小さまざまな欠点が見つかったとのことで、現在の目標である2025年の原潜完成はおろか、「さらに10年はかかる」との党高官から出ているという。
ちなみに、今回の処分の内容だが、14人中6人が僻地に追放され、他の8人は交代にとどまったようだ。「僻地に追放」ならば処刑よりはマシだが、当事者にとって絶望的な処罰であることに変わりはない。
ただ、経験のある幹部や技術者はいくらでも替えの効く人材ではない。金正恩氏の原潜保有への野心が強いほど、彼らが呼び戻される可能性も高まるだろう。