新キーワード「デジタル田園都市国家構想」 国の後押しで5Gエリアは一気に広がるか?
10月4日に発足した新内閣の成長戦略の一つ「デジタル田園都市国家構想」は、2020年6月11日公表の「自民党デジタライゼーション政策に関する提言 デジタル・ニッポン2020〜コロナ時代のデジタル田園都市国家構想〜」に登場する言葉だ。記者はつい最近、この概念を知ったが、約30分の「概要」をはじめ、YouTubeに複数の解説動画をアップロードするなど、かなり前から広報・PRに力を入れていたようだ。
「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めます」という、岸田文雄新総理大臣の所信表明を受け、デジタル庁では三つの柱「地方におけるデジタルインフラの整備などによる『デジタル田園都市国家構想』の実現」「データ戦略の推進」「行政のデジタル化の強力な推進」に重点的に取り組む。
地方におけるデジタルインフラの整備とは、具体的には、2020年3月にNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、少し遅れて楽天モバイルが開始した次世代通信規格「5G」の整備を指す。各社は、今年春からエリア拡大を本格化し、夏から秋にかけて技術面の対策などを相次いで発表。ドコモは21年度末までに5G基地局2万局、人口カバー率55%の達成を目指す。
ソフトバンクは今年10月末までに5G基地局2万局、人口カバー率80%目指すと、21年9月14日開催の新サービス発表会で明らかにした。さらに22年春には5万局に増やし、人口カバー率を90%にする計画。
一方、KDDIは独自の「鉄道路線5G化」を宣言。既に山手線と大阪環状線の駅間は全て5Gを利用可能になり、21年度末までにJR・私鉄を含む関東21路線、関西5路線の主要区間のホーム、駅間・駅構内での5Gエリア化を目指すほか、乗降者数上位の駅を中心とした全国の商業地域でも5Gサービスを利用可能になった。鉄道・商業エリアの5Gエリア化の進捗情報はウェブサイトで公開している。
iPhone 13/12シリーズと、主要3キャリアが販売する「キャリアモデル」のスマートフォン新機種は、ミドルレンジ以上は全て5G対応。自宅に設置して使用するタイプのモバイルWi-Fiルータ(ホームルータ)にも5G対応モデルが登場し、11月には3社の5G対応新機種が出そろう。また、ソフトバンク(ワイモバイル、LINEMO含む)、au(povo、新規契約のUQ mobile含む)、楽天モバイルは、1つのプランで4G/5G共通サービスとなっている。つまり、最新の5Gスマートフォンを購入すればエリアによっては5Gで通信できるのだ。
しかし、各社が公開している5G通信のサービスエリアマップを見ると、来年春の時点では、首都圏の都心部と、その中心からやや離れたエリアがスポット的に5Gに対応する状況にとどまる見込み。とはいえ、そのスポットはかなり広域で、まだら模様で広がっていくようだ。なお、auとソフトバンクは、総務省の省令改正によって可能になった「4G LTEからの5Gへの転用(転用5G)」が主体となっており、ソフトバンクの場合、転用5Gエリアには「5Gと表示されても4G LTE相当の速度となります」と但し書きを入れている。
初めてiPhoneがLTEに対応した「iPhone 5」発売日の12年9月21日以降、本格化した3Gから4G LTEへの移行期も同じような状況だった。当時は、より鮮明に3大都市圏の中心から周辺部に拡大し、3Gと4G LTEの速度差が誰でも分かるほど大きかったため、4G LTEエリアであってもつながらない、速さが出ないといったトラブル・クレームの多発と、各キャリアが自社回線のつながりやすさ・速さをアピールするつながりやすさ競争は2〜3年ほど続いたと記憶している。
残念ながら、現在、最新の通信規格や国内外のスタートアップによる新サービスをいち早く体感したければ「3大都市圏の中心部に住む」、せめて「仕事や学校、資格試験予備校などで定期的に通う」必要がある。この市場原理を事業者が崩さない限り、地方にいながら都市の賃金水準で働く「デジタル田園都市」の誕生による地方活性化は難しいと言わざるを得ないだろう。実現のためには、最低条件として「高速・大容量の5G」の早期普及・エリア拡大が必要だ。
従来の逆方向となる社会機能の地方分散(逆都市化)と多様な働き方を前提とした「デジタル田園都市」の行方に注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)
「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めます」という、岸田文雄新総理大臣の所信表明を受け、デジタル庁では三つの柱「地方におけるデジタルインフラの整備などによる『デジタル田園都市国家構想』の実現」「データ戦略の推進」「行政のデジタル化の強力な推進」に重点的に取り組む。
地方におけるデジタルインフラの整備とは、具体的には、2020年3月にNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、少し遅れて楽天モバイルが開始した次世代通信規格「5G」の整備を指す。各社は、今年春からエリア拡大を本格化し、夏から秋にかけて技術面の対策などを相次いで発表。ドコモは21年度末までに5G基地局2万局、人口カバー率55%の達成を目指す。
ソフトバンクは今年10月末までに5G基地局2万局、人口カバー率80%目指すと、21年9月14日開催の新サービス発表会で明らかにした。さらに22年春には5万局に増やし、人口カバー率を90%にする計画。
一方、KDDIは独自の「鉄道路線5G化」を宣言。既に山手線と大阪環状線の駅間は全て5Gを利用可能になり、21年度末までにJR・私鉄を含む関東21路線、関西5路線の主要区間のホーム、駅間・駅構内での5Gエリア化を目指すほか、乗降者数上位の駅を中心とした全国の商業地域でも5Gサービスを利用可能になった。鉄道・商業エリアの5Gエリア化の進捗情報はウェブサイトで公開している。
iPhone 13/12シリーズと、主要3キャリアが販売する「キャリアモデル」のスマートフォン新機種は、ミドルレンジ以上は全て5G対応。自宅に設置して使用するタイプのモバイルWi-Fiルータ(ホームルータ)にも5G対応モデルが登場し、11月には3社の5G対応新機種が出そろう。また、ソフトバンク(ワイモバイル、LINEMO含む)、au(povo、新規契約のUQ mobile含む)、楽天モバイルは、1つのプランで4G/5G共通サービスとなっている。つまり、最新の5Gスマートフォンを購入すればエリアによっては5Gで通信できるのだ。
しかし、各社が公開している5G通信のサービスエリアマップを見ると、来年春の時点では、首都圏の都心部と、その中心からやや離れたエリアがスポット的に5Gに対応する状況にとどまる見込み。とはいえ、そのスポットはかなり広域で、まだら模様で広がっていくようだ。なお、auとソフトバンクは、総務省の省令改正によって可能になった「4G LTEからの5Gへの転用(転用5G)」が主体となっており、ソフトバンクの場合、転用5Gエリアには「5Gと表示されても4G LTE相当の速度となります」と但し書きを入れている。
初めてiPhoneがLTEに対応した「iPhone 5」発売日の12年9月21日以降、本格化した3Gから4G LTEへの移行期も同じような状況だった。当時は、より鮮明に3大都市圏の中心から周辺部に拡大し、3Gと4G LTEの速度差が誰でも分かるほど大きかったため、4G LTEエリアであってもつながらない、速さが出ないといったトラブル・クレームの多発と、各キャリアが自社回線のつながりやすさ・速さをアピールするつながりやすさ競争は2〜3年ほど続いたと記憶している。
残念ながら、現在、最新の通信規格や国内外のスタートアップによる新サービスをいち早く体感したければ「3大都市圏の中心部に住む」、せめて「仕事や学校、資格試験予備校などで定期的に通う」必要がある。この市場原理を事業者が崩さない限り、地方にいながら都市の賃金水準で働く「デジタル田園都市」の誕生による地方活性化は難しいと言わざるを得ないだろう。実現のためには、最低条件として「高速・大容量の5G」の早期普及・エリア拡大が必要だ。
従来の逆方向となる社会機能の地方分散(逆都市化)と多様な働き方を前提とした「デジタル田園都市」の行方に注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)