森保一監督の采配に疑問の声も【写真:ⓒJFA】

写真拡大

前半で中国を圧倒しながら、強さを誇示できなかった日本のパフォーマンスを酷評

 森保一監督率いる日本代表は、7日にドーハで行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第2節の中国代表戦に1-0で勝利した。

 23年間、負けたことのない中国から今予選初勝利を挙げて、勝ち点3を掴んだ日本。しかし、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、「とてもではないが、これは同じグループ内のライバルたちが、日本に恐れを抱くようなパフォーマンスではなかった」と、中国戦の試合内容に疑問を呈している。

   ◇   ◇   ◇

 森保一監督は、深い安堵のため息をついたに違いない。カタールW杯アジア最終予選で、日本は月並みな中国をわずかに上回り、グループBの戦いで最初の勝ち点3を獲得した。

 中国戦に先発出場したMF久保建英は、初戦のオマーン戦(0-1)で森保監督が犯した過ちを明確にした。わずか1ゴールしか挙げられずに中国に勝利した日本だが、彼の創造性と視野は、ギリギリの勝利と感じさせないものにまで日本の攻撃のレベルを向上させた。

 日本が最後に中国に負けたのは、23年前のこと。そして両チームの力の差は、最初の45分間だけで明らかとなっていた。大阪(オマーン戦)での悲惨なパフォーマンスの後、いくつかのゴールを挙げて、得失点差を取り戻すとともに、自信を高める絶好の機会だった。

 ところが完全に試合を支配していた日本は、前半終了間際にFW大迫勇也が見事な先制点を決めると、そこから緩んでしまう。チームはバラバラになり、中国に同点に追いつけそうなチャンスも与えた。結果的にそうならなかったのは、単にリー・ティエ監督の率いたチームが、十分なクオリティーを備えていなかったからに過ぎない。

 たった一つのゴールだけで勝てばいいという森保監督の狙いは、日本にダメージを与えることになる。冷酷さを見せて決定力を示し、圧倒的な力の差を誇示する必要があった。中国戦は、その絶好の機会だったが生かされなかった。

 今回の中国はチームで最高のDFであるチャン・リンポンを開始6分で負傷によって欠くこととなった。そして、前半の彼らのボール支配率はわずか23%。そんな状況にもかかわらず、勝利した日本が挙げたのはわずか1得点だ。

同グループのライバルが、日本に恐れを抱くパフォーマンスではなかった

 久保や大迫のシュートがポストを叩く場面はあった。中国は自陣ペナルティーエリア内に人を詰め込んでいた。それでも日本は時間と空間を作り出して攻略しなければならなかったが、この勝利は最低限の期待に応えるものにしかならなかった。

 DF長友佑都とDF室屋成は、前半のほとんどの時間帯でそれぞれのサイドを上下動する自由を与えられ続けた。中国は彼らに対して守備をする任務が免除されているかのようなプレーぶりだった。

 MF遠藤航とMF柴崎岳は、敵陣深くまで押し込むことが可能だった。DF吉田麻也とDF冨安健洋が問題に直面することは皆無に近く、GK権田修一は観客状態でいられた。久保はオマーン戦の日本に完全に欠如していた狡猾さと策略をチームにもたらして、前の試合でMF鎌田大地がいかに機能しなかったかを強調した。

 久保のハーフターンは、DFにとって悪夢だ。中国戦でも彼は最初のタッチで何度もDFを振り切り、素早くゴール前のスペースを見つけ出して、DFに影をも踏ませなかった。大迫との連係プレーは鋭く、最終ラインを切り裂いた。惜しむべくは、その回数が少なかったことだ。

 すべての条件が揃っていた。ハーフタイムの時点で、両チームの間にはもっと大きな点差がついているべきだった。それでも1-0でリードしていた日本は、余裕をもって勝利を掴めるはずだった。

 しかし突然、すべてが止まってしまう。流動性は消え、パスは道に迷う。MF古橋亨梧が膝を負傷し、MF原口元気に交代したことで、セルティックのアタッカーが左サイドにもたらしていたスピードが失われた。中国が改善するにつれて、日本は憶病になっていった。

 とてもではないが、これは同じグループ内のライバルたちが、日本に恐れを抱くようなパフォーマンスではなかった。オーストラリア代表のグラハム・アーノルド監督、サウジアラビア代表のエルヴェ・ルナール監督は、サムライブルーとの対戦を前に、この試合の映像を繰り返しチェックする必要も、眠れなくなることもなくなった。

 この日本は締まりがない。この日本には優位に立てる。そして、すでにオマーンが証明したように、この日本は十分に倒せる、と――。

この勝利で日本のプレーが冒険心に欠けるものになることも保証された

 同組のライバルに勇気を与えた日本の勝利は、同時に森保監督が最低でもあと1カ月は、現在の役職に留まることも約束した。対戦相手からすれば、当面の間、日本のプレーが冒険心に欠けるものになることも保証されたのだ。

 東京五輪の決勝トーナメントでも見たように、かつてのサンフレッチェ広島の監督は実用主義者だ。彼は確率を優先する。そして、リスクを排除する。これは日本が用いることのできるタレントの無駄使いに他ならない。

 異なる方法を取るチャンス、中国を圧倒して自分たちの強さを示すことに失敗した。もっとも森保監督が指揮官のうちに、これ以上を期待するのは、認識が甘いのだろう。(マイケル・チャーチ/Michael Church)