黒いシャツは“ぞうきん臭”が発生しやすい!? ※写真はイメージです

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 お盆が過ぎても暑さが残る今夏。自分の、あるいは街ですれ違った人の衣類からぞうきんのような悪臭がして、ギョッとした経験はないだろうか。

【写真】「洗濯ハカセ」こと白洋社・部長の神崎健輔さん

濃い色の服はにおいやすい

「この『ぞうきん臭』の原因は、衣類に残った汚れと雑菌です」

 と話すのは、「洗濯ハカセ」こと老舗クリーニング店「白洋社」部長の神崎健輔さん。

「着てすぐは無臭でも、動いて汗をかくと、その水分が活動場所となって雑菌が繁殖します。におうのは汗の水分が空気中に蒸発するタイミング。一緒に雑菌や汚れのにおいが発散されて、あの鼻につくぞうきん臭になるのです」(神崎さん、以下同)

 そんなぞうきん臭のする人をここでは「ぞうきん族」と命名。スメルハラスメントという言葉があるように、ぞうきん族は悪気がなくても周囲を不快にする危険性大! それを避けるために、まずはぞうきん臭について知ることから始めよう。

「ぞうきん臭は汚れや雑菌が原因ですから、それらが増える条件がそろうと、当然、発生しやすくなります」

 黒い服はにおいやすいという噂があるが、これは本当?

「白など色の薄い服は、黄ばんだり黒ずんだりするので、劣化がすぐにわかります。しかし黒など濃い色は、汚れが蓄積しても気づかず、そのまま着てしまいがち。私自身、黒いTシャツをよく着用しますが、見た目では劣化具合の判断がつかないので、においを目安に買い替え時期を判断しています」

 おまけに黒には熱を吸収する性質がある。

「その結果、生地が熱くなり汗もかきやすくなります。黒い服は雑菌が繁殖しやすい条件がそろっている、といえるでしょう」

 黒は紫外線をカットするため、アームカバーなどにもよく使われる色。愛用している人はぞうきん臭に注意を。

 汗をよくかく夏は、速乾性の衣類を着ることも多い。

「夏に重宝する速乾性の衣類ですが、実はぞうきん臭が発生しやすい条件がそろっています。まず、汗がすぐに乾くのは、生地に水分を素早く吸収・発散する機能があるから。ところが汗には水分だけでなく、皮脂など脂分も含まれています。それらは蒸発せず残り、時間とともに硬くなって繊維に絡みつく汚れに。そうなると洗濯機で洗ったくらいではなかなか落ちず、頑固な汚れとして蓄積していきます」

 速乾性衣類によく使われる素材のポリエステルも、ぞうきん臭の要因になりやすい。

「ポリエステルにはにおいの分子を吸着する性質があります。この性質のおかげで柔軟仕上げ剤の香りがよく残りますが、その反面、ぞうきん臭も吸着するので、においのもとに」

 洗い方でも大きな差が出る。

「洗濯機は水の力で汚れを落とします。ですから、水で攪拌される時間が短い、すすぎ1回やスピードコースは、汚れが残りやすい洗い方といえます。大量の衣類を一度に洗濯機に詰め込むのも、水の力が生かされなくなり、汚れが落としきれません」

 使う洗剤でもにおい除去に差がつく?

「夏に起こるぞうきん臭の要因になりやすいのは、液体洗剤。汗と皮脂を落とす力が最も強いのは粉末洗剤なので、そちらと比較すると、液体洗剤は汚れが残りやすいといえます」

 汗と皮脂の汚れ対策をするかしないかもポイントに。

「襟周りとわき周りは、多量の汗を吸収しているゾーン。下処理をせずに洗うと、汚れが残りがちです。また、夏は肌に触れる裏側に汚れがつくので、裏に返さず洗うのも、汚れ残りの一因に」

 ということは、肌に直接触れる衣類のほうが当然、ぞうきん臭がしやすい?

「そのとおりです。肌着や下着なしで着るTシャツは要注意。また皮肉なことに、お気に入りの衣類ほど着る頻度が高いので、汚れが蓄積。ぞうきん臭が発生しやすくなります」

だから臭くなる! ぞうきんベスト10

 ぞうきん臭が発生しやすい服の特徴や洗い方をベスト10方式でピックアップ。これらの要素がそろうほど臭くなるので、黒い服はヘビロテしないことなどを心がけて!

1 黒や紺など濃い色
2 ポリエステル素材
3 速乾性の素材
4 洗濯のすすぎが1回
5 洗濯物の詰め込みすぎ
6 液体洗剤の使用※夏の場合
7 部分洗いをしない
8 服を表にしたまま洗う
9 肌に直接触れる衣類
10 着る頻度が高い衣類

 コロナ禍の今、黒いウレタンマスクをつけている人も多いが、汗や呼気で雑菌が繁殖すると、繰り返し使ううちに、ぞうきん臭を放つおそれも! それでは不衛生で感染予防対策にもならない。次から紹介する対策を早速、実行しよう。

「洗濯ですべての汚れや雑菌を落としきるのは不可能です。でも、洗い残しがたくさんあるのと、少ないのとではぞうきん臭の発生具合に大きな差が出てくる。ですから、汚れや雑菌の量をできるだけ減らす洗い方を実践しましょう」

 そのために、神崎さんがすすめるのは、次の洗濯テク。

ぞうきん臭を撃退する洗濯テク

●洗濯物の量を減らす

 汚れは水流にもまれることで落ちるが、洗濯物を詰め込むとこの力が弱まってしまう。

「1回の洗濯物の量は、縦型洗濯機なら7分目、ドラム型洗濯機なら3分目が目安。この分量で、水は最大量に設定すると、汚れ落ちが格段によくなります」

●すすぎは2回

 すすぎ1回だと衣類に汚れが残りがち。これを2回にするだけで汚れ落ちがアップ。

「スピードコースや節水機能がついている洗濯機もありますが、ぞうきん臭対策に重点をおきたいなら使わないのが正解です」

●襟とわきに下処理

 通常の洗濯では落ちにくい皮脂汚れがたまる部位。

「洗濯前にこの2か所に脂分を溶かす作用のある洗剤をぬると、皮脂が落ちやすくなります。専用洗剤もありますが、食器用洗剤でも同じ効果が見込めるので、代用が可能ですが、その場合は2回すすぎにしましょう」

●裏側に返して洗う

「洗濯前に服を裏返しに。それだけで、裏側が水流にさらされて、汗や皮脂の汚れが落ちやすくなります」

 脱衣時に裏返して脱げば、手間いらずのテクに!?

●粉末洗剤を使う

「粉末洗剤の洗浄力は、酸素系漂白剤を最初から加えられているので液体よりも強力。ちなみに、粉末洗剤には衣類をパリッと硬く仕上げる性質があるので、そういう点でも夏向きです。一方、ふわふわした衣類が多く、汗汚れも少ない冬は、やわらかく仕上がる液体洗剤がピッタリ。洗剤を季節で使い分けることをおすすめします」

 ぞうきん臭がとれにくい衣類は、粉末洗剤に酸素系漂白剤をプラスするのも手。

●早く乾燥させる

 乾燥するまで時間がかかると、その間に雑菌が繁殖してぞうきん臭のもととなる。

「5時間以内に乾かせば、雑菌はほとんど繁殖しない、といわれています。夏は晴天の日に外干しすれば2〜3時間で乾くので問題ありませんが、注意してほしいのは雨の日や部屋干し習慣の人。早く乾燥させるためには、エアコンの近くなど空気が循環している場所に洗濯物を干してください。一般的に人間が快適に過ごせる場所は、洗濯物も乾きやすいので、それも目安に」

 ここで紹介した対策をいくつか実践すれば高い効果が得られる。ただ継続を考えると、すすぎ2回や粉末洗剤など機械や道具に頼るのが楽。

「今着たい!」におい緊急撲滅テク

 ぞうきん臭がする衣類はもう一度洗うのがいちばん。どうしても今、その服を着たいという場合の応急テクニックを神崎さんが伝授。

◯布用消臭剤を吹きつける

「布用消臭剤を試すのもありですが、直接吹きつけるのはおすすめできない。机や床の上に衣類を置き、その上方で空気中に消臭剤を振りまいて、服全体にまんべんなくかけます」

◯制汗剤で汗を抑える

「においの原因である汗を制汗剤※で抑えるのも重要。外出先でぞうきん臭に気がついたときも、自分の汗対策をすることで、それ以上においが強まるのを抑えることができます」

 ※制汗スプレーは変色の原因になることがあるので多用は控えて。

「これらの方法を併用しても、ぞうきん臭がとれないなら、それはもう処分のサイン。新しい服を買いましょう」

 正しい撲滅ケアでぞうきん族は今年で引退だ!

お話を伺ったのは●神崎健輔(かんざき・けんすけ)さん●老舗クリーニング店「白洋社」部長。宅配クリーニング「Nexcy(ネクシー)」CTO。洗濯・シミ抜き職人としての知識を生かし、家庭でできる洗濯術をテレビや雑誌などで発信。

(取材・文/中西美紀)