アメリカのアマゾンの「マーケットプレイス」で、中国から出店していた越境EC業者のアカウントが次々に閉鎖されている(写真はアマゾン中国のウェブサイトより)

アメリカのアマゾン・ドット・コムが、中小事業者などから出品を募って運営するウェブ上の仮想商店街「マーケットプレイス」に中国から出店していた越境EC(国境を越えるネット通販)業者のアカウントを(アマゾン側の判断で)大量に閉鎖している。

「今回の動きは、中国の越境EC業者だけが対象ではなく、米中関係(の悪化)とも関係ない。アカウントが閉鎖された店の大部分は規約違反を何度も繰り返してきた。しかも違反だと知りながら、あえてやっていた悪質なケースがほとんどだ」。7月21日、アマゾン側に近いある業界関係者は財新の取材に対してそう語った。

越境EC業者のアカウント閉鎖は2021年5月上旬から始まった。ポータブルオーディオの帕拓遜(パートゾン)、スマートフォン周辺機器の傲基(オーキー)、家電ブランドを展開する沢宝(サンバレー)など、中国の華南地方を拠点にする大手越境EC業者が相次いで店じまいを迫られた。

「アマゾンは、アカウント閉鎖の対象を大手業者から中堅業者へと拡大し始めている」。アカウントを閉鎖された広東省深圳市のある越境EC業者は、財新記者の取材に応じてそう証言し、次のように続けた。

「毎年、販売促進イベントの『プライム・デー』前後に、アマゾンは出店業者のコンプライアンス(法令順守)の監査を行ってきた。今年の監査はこれまでにないほど厳しく、広範囲にわたるものだった」。

アカウント閉鎖の影響は拡大している

財新記者の取材によれば、アカウント閉鎖に追いこまれた越境EC業者の多くは、独自のブランドを立ち上げてオンラインショップを開き、アメリカのアマゾンのマーケットプレイスを販売の主戦場にしていた。取り扱う商品はコンシューマー・エレクトロニクス製品が中心だが、日用品や、生活雑貨、スポーツ用品なども含まれている。


本記事は「財新」の提供記事です

越境EC業者が集中する華南地方では、アカウント閉鎖の影響が広がっている。「一部の中堅業者は破産の瀬戸際に追い込まれ、越境ECに資金を出してきた投資家の関心は冷めてしまった。大手業者は次々にリストラに踏み切り、多数の従業員が失業に直面している。銀行も融資を渋り、商品の仕入れ先に代金を支払うメドが立たない」。深圳市越境EC協会の会長を務める王馨氏はそう嘆く。

なお、アマゾンが越境EC業者のアカウントを閉鎖した理由の多くは、「(発売直後にもかかわらず商品レビューが大量にあるなどの)コメント機能の不正利用」「虚偽のレビューを行うよう(何らかのインセンティブをつけて)ユーザーに依頼」「(商品購入者に)ギフトカードをプレゼントして(好意的な)レビューを書かせる操作」などの規約違反だ。アマゾンは6月16日、2020年に2億件を超える虚偽のレビューを、ユーザーの目に触れる前に削除したと明らかにしていた。

(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は7月21日