韓国グルメ専門家が推す!日本の冷麺とは違うネンミョンの魅力とおすすめの市販商品
教えてくれた人
コリアン・フード・コラムニスト/八田靖史(はったやすし)さん
慶尚北道、および慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。ハングル能力検定協会理事。1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。韓国料理の魅力を伝えるべく、2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆活動を開始。
韓国の冷麺/ネンミョン(냉면)とは?
いま日本では冷麺専門店が出店、スーパーの店頭に冷麺の商品が並び、いわゆる “韓国冷麺” を目にすることが少なくありません。韓国の冷麺とはどういう料理なのでしょうか。
「冷麺は韓国語でネンミョン(냉면)といい、そば粉やでんぷんを原料とした冷たい麺料理のこと。押し出し式(生地に圧力をかけて小さな穴から押し出す方式)で麺を作るのが大きな特徴です。
日本では韓国冷麺と呼ばれることも多いですが、これは岩手の盛岡冷麺と区別するために使われている言葉。ちなみに盛岡冷麺の発祥は、韓国の咸興出身の人が盛岡に開いた『食道園』というお店のため、特徴は韓国の冷麺(咸興冷麺)に近いといえます」
冷麺には2種類の麺がある、そのルーツは…
「冷麺のルーツは、朝鮮半島の北側。つまりいまは北朝鮮に位置する平壌(ピョンヤン)、咸興(ハムン)の冷麺が本場とされています。それぞれ平壌冷麺・咸興冷麺として分けられ、親しまれています。
大まかに違いを説明すると、平壌冷麺はそば粉とでんぷんで作られたもの、咸興冷麺はじゃがいもなどのでんぷんだけで作られたもの。咸興冷麺は噛み切るのに苦労するほどのコシの強さがあり、細いのが特徴です。
ですから、韓国冷麺と一括りにいっても、じつはいろいろあるんです」
味の種類は大きく分けて2つある
「味の種類も大きな違いのひとつ。ムルネンミョン(水冷麺/물냉면)とビビンネンミョン(混ぜ冷麺/비빔냉면)の2種類があります。
ムルネンミョンは、その名のとおり冷たいスープに入れる “汁あり” の冷麺。ビビンネンミョンは、唐辛子ベースの辛い薬味だれと絡める “汁なし” の冷麺。
いずれも王道で、韓国ではどっち派か論争が生まれるほどではないでしょうか」
専門家の推しはこれ!おすすめの市販冷麺
冷麺の特徴を知ったところで、とにもかくにも食べてみなければ正体はわかりません!最近ではスーパーでも手軽に手に入りますが、八田さんイチオシの商品を教えてもらいました。
1. 水キムチあらい「水キムチと韓国冷麺のセット」
大阪の水キムチ専門店「水キムチ あらい」のお取り寄せ商品。水キムチとは、大根や白菜などの野菜を塩水に浸し、薬味や香辛料とともに漬け込んで作るキムチのことをいいます。具材はもちろん、その汁を味わうためのキムチなのだとか。
本商品は韓国料理通の間で人気沸騰、注文してから届くまでに約半月~1カ月ほどかかります。
「汁気の多い水キムチは、韓国で冷麺のスープとしても使われます。同店ではセット販売をされており、届いたあとに冷蔵庫で寝かせ、発酵が進んだところで冷麺を入れると最高なんです。水キムチ単体でも非常においしいのですが、冷麺との組み合わせもまた格別ですよ。
店主のあらいさんは『自分で作った水キムチよりもおいしい水キムチを食べたことがない』とおっしゃっているのですが、本当にその通りだと思います」
2. モランボン「韓の食菜 冷麺」
焼肉のたれが有名な食品メーカー「モランボン」の “韓の食菜シリーズ” から選ばれた、さっぱりタイプの冷麺。生冷麺と専用スープと辛味キムチだれがセットになった商品です。
※春夏限定商品につき、8月末で販売を一時終了
「もともと子どものころから酸っぱい味が得意ではなく、それもあってか冷麺も肉出汁の濃いほうが好きなんですよね。その個人的な好みに合うということで、セレクトしたのが本商品。
モランボンからは複数の冷麺が販売されていますが、そのなかでもお気に入りです。肉出汁の旨みが濃く、さっぱりとした仕上がりですよ」
3. モランボン「韓国式冷麺」
モランボンから今年3月に発売された新商品。そば粉が香るコシの強い生冷麺(細麺)と牛出汁の専用スープがセットになっています。
「韓国のトレンドであるニュートロ(ニューレトロ)ブームを取り入れた、従来にないパッケージのデザインで話題を集めた商品。牛出汁のきいたスープにはほんのり甘みもあって濃厚な仕上がりです。姉妹品の『韓国式ビビン冷麺』はしっかりした辛さとフルーティな甘さのバランスが絶妙」
※春夏限定商品につき、8月末で販売を一時終了
冷麺を食べるときにおすすめのトッピングは?
市販の冷麺はそのまま食べても十分ですが、具材があるとよりおいしくなります。おすすめのトッピングを聞いてみました。
「こればかりは好みによりますが、定番はゆで卵、きゅうりの千切り、キムチが定番。梨があるとより贅沢な仕上がりになります。最近は手軽にサラダチキンを入れることも多いですね。韓国の冷麺(ムルネンミョン)には肉がのっていることも多いのですが、これは『この肉の出汁を使いましたよ』という印。ゆでた牛肉や豚肉をスライスしてのせるほか、昔はきじを使うことがあり、それを肉団子として提供する店もあります」
話のネタになるかも?冷麺にまつわる豆知識
最後に、八田さんが教えてくれた豆知識をご紹介します。思わず人に話したくなるかも……?
冷麺は “夏の食べもの” ではない!?
「みなさんに話してよく驚かれるのが、冷麺の本当のシーズン。冷麺は夏ではなく、冬の料理です。暑い時期に食べたくなる料理であることは間違いありませんが、本来は旧暦の11月の料理なんですよ。
昔の冷蔵庫がなかった時代は作れるはずがなく、冬場の冷たいキムチ汁に麺を入れ、夜食として食べられているものでした。わたしたち韓国料理通の間では、冬に冷麺の話題が出ますね」
はさみで切るのはNG?麺にまつわるジンクス
「韓国ではよく冷麺をはさみでバツバツと切って食べるイメージがあると思います。実際、麺がかなり長いので切らないと食べづらいんですよね。
ところが、北のほうでは冷麺をはさみで切ってはいけないといわれています。わたしが北朝鮮に行ったときに聞いた理由としては、“縁を切ってしまうから” とのこと(諸説あり)。韓国でも古い冷麺文化を大切にする人たちは切らないようですよ」
一度食べたら、冷麺の魅力にハマる
一口に冷麺といっても、その種類はさまざま。本場には平壌冷麺と咸興冷麺の2種類があること、味の種類はムルネンミョンとビビンネンミョンがあるということ、おすすめの商品まで、八田さんに冷麺の魅力をたっぷり伺えました。
百聞は一食にしかず(!?)、未経験の人は一度食べてみてください。元から好きな人は、本記事の情報を参考に新しい冷麺に挑戦してみてはいかがでしょうか。
取材・文/倉持美香(macaroni 編集部)