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 おそらく東京育ちの多くが、「茶きん鮨」イコール『京樽』。ひな祭りや七五三など、お祝いの席でのご馳走の一つが『京樽』の「茶きん鮨」という人は多いと思います。元々は、昭和7年、京都に割烹料理店として創業し、13年に東京の人形町にオープンしてから、首都圏を中心に広がっていった老舗店です。戦前からあるお店だったんですね。

 そんな『京樽』と、握り寿司でおなじみの『スシロー』が組んだ、ダブルブランド店舗が7月7日、七夕の日にオープン。場所は東京の市ヶ谷店と門前仲町店、そして千葉の西船橋店と行徳店。テイクアウト専門店で、『京樽』の定番商品である「茶きん鮨」を始め「巻き鮨」、「押し鮨」など定番の上方鮨に加え、「スシロー To Go」の人気商品、マグロ、ハマチ、エビを始めとしたお得な握り寿司のセットなど、多数の商品を取り揃えているとのこと。

 鮮度と価格に自信ありの『スシロー』と、「バッテラ」や「茶きん鮨」など繊細な技術にこだわりありの『京樽』がタッグを組んだ! これは気になる!

ショーケースに握り、巻き、押し、茶きん、ちらしが勢揃いの寿司パラダイス!

店内。テイクアウト専門店なので店内に席などはない。駅近なのも魅力的

 向かったのは『京樽・スシロー 行徳店』、駅を出て徒歩1分ぐらいにある路面店です。店内に入ると、ドーンとショーケース。右側に『京樽』、左側に『スシロー』のお寿司が並んでいます。そしてショーケースの奥には厨房が。

「行徳店では、『茶きん鮨』を奥のキッチンで作っているんですよ」。と話すのは京樽社長の石井憲さん。ここでは、『スシロー』の握りずしは魚を切り付けて握る船橋のキッチンから、一部商品を除いて『京樽』の「茶きん鮨」などは奥の厨房で作られたものを出しているとのこと。

京樽の社長、石井憲さん。茶きん鮨やバッテラ、海苔やシャリを語ると止まらない、『京樽』愛に溢れたチャーミングなキャラクター

 そもそも、なんで『京樽』と『スシロー』がタッグを組むことになったの?

「元々、『京樽』のお客様は年齢が上の方が多く、反対に『スシロー』のお客様は若い方が多いんですよ。そこで、それぞれの良さを知っていただきたいのと、幅広い年齢層のお客様に喜んでいただけるために、ダブルブランドとして展開していこうと」。2つのブランドの商品が並ぶことで、3世代、4世代のお客さんが買いに来てくれる、ということですね。

「鮮度や味はもちろんですが、職人の技も感じて欲しいですね」。と語る社長イチオシの寿司、紹介します!

『スシロー』の人気10ネタが1つに!「にぎり盛り合わせ10貫」

「にぎり盛り合わせ10貫」690円。マグロもイクラもホタテもある華やかなセット

 まずは『スシロー』の注目メニュー、「にぎり盛り合わせ10貫」(690円)。マグロの赤身、ハマチ、甘エビ、ホタテ、イカ、焼きトロサーモン、エビ、玉子、ネギマグロ、イクラのオールスター10貫が1パックに! 『スシロー』の醤油とわさびもパックで入っています。

「解凍や味付けにこだわったマグロ、ハマチやイクラなどランキング上位の握りを召し上がりいただけるセットですね。ハマチは絞められたばかりのハマチが船橋のキッチンに届き、すぐに切り分けたものが握りになって店頭に並んでいるんですよ」(石井社長)。

マグロ好きならこれ一択! 3種の握りと巻きの「天然インド鮪づくし」

「天然インド鮪づくし」1250円。大トロ、中トロ、赤身、ねぎとろ巻きでマグロ満喫!

 マグロへのこだわりはどこにも負けません! と言い切るほど、マグロ愛が強い『スシロー』。冷凍のマグロを温塩水で解凍し、旨みを逃さないよう調理。『スシロー』で一番人気、1日に約15万皿も出るネタだからこそ、美味しさにはこだわっているとのこと。

「マグロの中でも旨みの強いインドマグロの握りとねぎとろ巻きです。赤身と中トロ、大トロの違いも楽しんで欲しいですね」。赤身はすっきり、そして程良く脂の乗った大とろは濃厚な旨みです。

やはり『京樽』といったらこれ! みんな大好き「茶きん鮨」

「茶きん鮨」2個入り432円。エビのピンク、玉子の黄色など、見た目の可愛らしさもさすが!

 そして、『京樽』でマストなのはやはり「茶きん鮨」! 「実は数年前に味のリニューアルをしていて、キクラゲが新たに入っているんですよ」。うわ、知らなかった! 変わっていないのかと思っていたら、実は改良を重ねていたんですね。

「茶きん鮨」の中。穴子、ゆず、かんぴょう、しいたけ、もみのり、キクラゲ、白ゴマの7種入り

 そして子供の頃からの疑問だった食べ方。途中でボロボロになっちゃうんですが、綺麗に食べる技ってある?

「『茶きん鮨』は、まずかんぴょうをほどき、薄焼きの卵を開くと綺麗にお召し上がりいただけますよ」。なるほど。まずはフリフリの薄焼き卵からかんぴょうを外せばよかったんですね。長年の疑問が解消しました!

押し鮨、ヒカリモノ好きには絶対に外せない「バッテラ」

「バッテラ」584円。国産の真鯖にこだわった京樽自信作。穴子の押し鮨派とバッテラ派、究極の選択?

 そして上方鮨の代表的なものと言ったら「バッテラ」。シャリが押されてもっちりしているのも、酢によってサバの旨みがぎゅっと味わえるのもたまらない。子供の頃は食べず嫌いだったけれど、大人になったらこんなに美味しいものを知らなかったのかと愕然とした、ヒカリモノ界究極の食べ物! 

「国産の真鯖にこだわっていること、季節や部位の脂のノリによって、塩の時間、酢の時間を調整しながら、一番美味しいサバを調理人たちが1枚ずつ押している、押し鮨の中でも人気ナンバー1の鮨ですね」。

45年変わらぬ美味しさ!「のり巻」は海苔とシャリにこだわり満載

「のり巻」4貫303円。巻き寿司の王道でありマストな一品

「バッテラ」が大人になってわかった味なら、子供の頃からずっと食べている、長年の付き合いなのが「のり巻」。強い酸味とかわさびの刺激がダメだった小さい頃から、かんぴょうと玉子はずっと寄り添っていてくれた、もはや懐かしさも感じる王道の巻物です。

「『京樽』は有明産の海苔にこだわっていて、長い付き合いの海苔屋さんに、『京樽』用ののり巻の海苔はこのスペックを崩さない、この巻物にはこの海苔を使うべきというのが決まっていて、風味、色合いで有明の海苔に勝るものはないですね。そして上方用の寿司飯ですが、毎年コメに合わせて酢を合わせる、トライ&エラーを繰り返しています。この、海苔・寿司飯・具材のこだわりを感じて欲しいですね」

『スシロー』と『京樽』、二つの看板が出ているのもどこか新鮮。今後店舗が増えることを期待!

「京樽は昭和7年に創業してもうすぐ90年、守らなければいけない伝統は守りつつ、お客様のニーズに合わせて変化も必要。守るところと積極的に変えていくところをきっちり棲み分け、変えていく中で今回新たなカンパニーズとなった今、『スシロー』の持つ調達力を活かせた、今まで使えなかった商材も手に入るかもしれないし、ニュー上方鮨が出せるかもしれない。新たな魅力を生かしつつ、商品、オペレーションの地固めをして、関東以北、以西、海外にもっと店舗を増やしたいですね」と石井社長。

『京樽』×『スシロー』は4店舗の様子を見て、店舗を増やしていくか検討するとのこと。また、今後は『スシロー』とタッグを組んだからこそ出せる、いいとこ取りのメニューも検討中で、秋口に向けリニューアル、さらに美味しいお寿司を考えているそう。もしかしたら、江戸前と上方の垣根を超えたボーダーレスな寿司が出てくるかも? これからの動きにも注目です!

(取材・文◎いしざわりかこ)

●DATA

店名:京樽スシロー行徳店

住:千葉県市川市行徳駅前2-7-14
TEL:047-398-0911
営:9:00~20:00
休:なし

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