「人間の暮らしできない」 非正規公務員の低収入・雇用不安、コロナ禍で追い打ち
国や地方自治体で働く非正規公務員の現状を調べている団体「公務非正規女性全国ネットワーク」(はむねっと)は7月5日、東京・霞が関の厚労省で記者会見を開き、当事者に対しておこなったアンケート調査結果を公表した。
アンケートでは、長引くコロナ禍や、昨年4月から導入されている「会計年度任用職員制度」によって、経済困窮や将来への不安、メンタル不調を抱えている人が多いことが浮き彫りとなった。また、非正規公務員の約8割が女性であり、ジェンダー不平等の問題も指摘されている。
アンケート結果を受けて、はむねっとは「社会生活の支え手である非正規の公務員が不安定な雇用状態にあることは、すべての人に関わる問題であり、状況改善をする必要がある」と訴えている。
関東地方の公共職業安定所(ハローワーク)で働く女性は会見で、「正規職員が毎年、削減されて非常勤職員が置き換わっています。国の機関がこうした状態では、国が瓦解しかねないという危機感を持っています」と語った。
●9割が「将来に不安」抱える
調査は今年4月から6月にかけてインターネットで実施し、1252人から有効回答を得た。このうち女性は97.2%で、大多数を占めた。
回答者の職種は30種以上で、住民に直接応対する領域、市民生活に関連する職種が多かった。最も多かったのが一般事務(23.7%)、次いで学校図書館司書(15.1%)、図書館員(12.7%)となっている。これ以外にも、博物館や美術館、公務員の職員や、保育士、教師、学童保育職員など多岐にわたった。
回答者の就業形態は2020年度から導入された会計年度任用職員が76.1 %となっており、雇用期間は1年および、1年未満を合わせると93.8%で、「不安定な身分で働いている人が非常に多かった。会計年度職員への移行時には説明もなく大幅な賃金の減額がおこなわれた例っもあった」(はむねっと副代表、瀬山紀子さん)という。
また、2020年の収入を聞いたところ、52.9%が200万円未満で、回答者の3人に1人は「主たる生計維持者」(世帯の中で生活費を主に負担している人)だった。主たる生計維持者でない場合も、自分の収入がないと家計が厳しいとした人が52.7%におよんだ。
こうした短い雇用期間と低収入により、将来不安でメンタル不調を抱えている人も少なくないという。直近1カ月の体調についてたずねたところ、メンタル面で「不調」「やや不調」と答えた人は、45.9%だった。また、93.5%の人が将来について「いつも不安」「一定の時期に不安」「時々不安」と回答している。
はむねっとでは、「職務内容や経験に関する評価基準がなく、報酬額の上限が正規職員の大卒初任給相当と設定されるなどの職務の実態に合わない不合理な現状があるのではないか。また、専門職としての役割を求められる職務につく人が、給料や待遇が低く、昇給も中で、不安や焦燥感にかられながら働いている」と分析している。
これ以外にも、妊娠出産による雇い止めへの不安から、「子どもを持ちたくても持てない」という声もあり、雇用への影響を心配してパワハラなどがあっても問題にできないと感じている人もいた。
●「ボランティアで仕事しているわけではない」
アンケートには、自由回答でさまざまな意見が寄せられた。一部抜粋する。
「給与が少ない。限られた時間のシフト制で手取りが11万円。一人暮らしをしなければならないので家賃などを引くと副業せざるを得ない。正直、人の暮らしをナメている。人間的で健康な暮らしは全くできない」(関東・甲信地方、20代女性)
「女性たちの善意や気持ちに頼りすぎ。私たちはボランティア精神で仕事しているわけではない。自分たちにも生活がある。経済的不安定さが、精神的な不安定につながるため、毎日どこか不調を抱えている。
低賃金で重労働の仕事を平気でさせている自治体行政に怒りがわく。率先して、女性たちを使い捨て労働の駒として使っている。女性蔑視、人権侵害以外の何者でもない」(関東・甲信地方、30代女性)
「(コロナ対応で)正規職員との危険度の違いを感じる。窓口に出ているのは非正規職員」(関東・甲信地方、50代女性)
「正規職員だけが在宅勤務可能になって職場が非正規だらけになり、その分電話対応などに追われ地獄を見た」(関東地方、60代女性)
はむねっと代表の渡辺百合子さんは、アンケート結果について「非正規雇用で働くということと、コロナという二重の苦境が明らかになりました。また、非正規雇用の8割が女性であり、ジェンダー不平等も関わっていると認識しています。ここに寄せられた声を公表するだけでなく、今後は提言など制度的な問題の改善を訴えていきたいです」と話している。