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トランスジェンダーであるアメリカ人女性と日本人女性のカップルが6月21日、法律婚しているにも関わらず、住民票に同性のまま婚姻関係が記載されないのは違法であるとして、国や目黒区、大田区(いずれも東京都)を相手取り、計220万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

同性婚をめぐっては、今年3月に札幌地裁で「同性婚を認めないのは違憲」との判断が出されているが、今回の裁判も、新たな「同性婚訴訟」として注目を集める。

●「同性婚を政府が認めない理由がわからない」

提訴したのは、青山学院大学英文科教授のエリン・マクレディさん(47歳)とパートナーのマクレディ・緑さん(51歳)。2人は2000年に日本で法律婚し、3人の子どもを育てているカップルだ。男性だったエリンさんは自らの性に違和感を持ち、2018年に国籍のあるアメリカ・テキサス州の裁判所で性別と氏名を変更した。現在、パスポートや在留カードには女性と記載されている。

しかし、その後、エリンさんが当時住んでいた目黒区で住民票の性別変更を申請したところ、性別を女性に変更するかわりに、緑さんとの続柄を「縁故者」にするとの申し入れをされたという。2人はこれを拒否した。

2019年5月には、総務省や法務省、目黒区に対して適切な対応を求めて申し入れを行なったが、回答はなかったという。エリンさんたちは転居先の大田区でも今年3月、同様の申請をしたが、受け入れられず、現在、住民票は「男性」のままになっている。

代理人である山下敏雅弁護士によると、こうした目黒区や大田区の対応は、現行法では認められていない同性婚を国が避けたためと推測されるという。

エリンさんと緑さんは提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。エリンさんは、提訴の理由を次のように語った。

「私が性別変更してからも、家族や職場の方々はみんながサポートしてくれていています。私たちのような家族はたくさんいます。政府が私たちを家族と認めてくれない理由はなんでしょうか、まった理解できません。

また、政府は多くの人たちが反対している東京五輪を開催しようとしていますが、五輪憲章には多様性を認めるということが書かれています。それを無視して、政府が私たちのような家族を潰そうとしていることは理解できません。この裁判でそうした現状が変わればうれしいです」

●「アメリカの裁判所命令による性別変更は日本で有効」

訴状などによると、エリンさんが国籍のあるアメリカの裁判所命令によって性別変更が認められたことは、「日本でも効力を発揮する」と指摘、住民票の性別が変更されないことは、憲法13条が保障する人格権を著しく侵害しているとしている。

また、目黒区がエリンさんと緑さんの住民票の続柄を「縁故者」にするよう、エリンさんに求めたことは、憲法24条1項が保障する「適法に成立した婚姻関係に対し公権力から不当な干渉を受けない」という2人の利益を侵害すると主張。国に対しても、目黒区に対して適切な指導を行わなかったことは、憲法に違反するなどとしている。

山下弁護士は、「民法上、おふたりは法律婚している状態にも関わらず、住民票で認められないのはおかしい」と指摘。「札幌地裁では違憲判決が出ており、世論も同性婚に賛成が5割を超えています。おふたりはすでに20年以上、結婚している状態であり、実態に合わせなければならない。婚姻とは何か、同性婚はなぜダメなのか。裁判所にはきちんとした判断を出していただきたいです」と話している。