非喫煙者には理解不能? 1本約30円のたばこを、喫煙者が快く他人にあげられる理由
喫煙所でたばこを吸っていたときに、友人のX君から
「たばこ、一本ちょうだい」
と聞かれた。たばこを家に忘れてきてしまったのだとか。
だから、1本手渡した。
これを世間では、「もらいたばこ」という。
非喫煙者には、よくわからない文化かもしれない。筆者は知人から、こんなことを言われた。
「喫煙者の人って、なんでそれが許せるの?すごいよね」
曰く、自分が、自分のために購入したものの一部を無償であげることって、あんまりないんじゃないか、ということだった。
たしかに、言われてみればそうかもしれない。お土産や、誰かと一緒に楽しもうと思って買ったお菓子なんかを分けることに、もちろん抵抗はない。
でも、大好物の唐揚げ弁当の唐揚げを「一個ちょうだい」と言われたら......正直嫌だ。
たばこは誰かのために買ったお土産より、自分のために買った唐揚げ弁当に近い存在のはず。
なのに、「もらいたばこ」という言葉があるくらい、人にたばこをあげたり貰ったりするのは、珍しくないことだ。
喫煙者の筆者は思う。
「だって、1人で吸うよりも、誰かと一緒に吸うことが好きだから...」
でも、もしかしたら嫌だと思っている人のほうが多かったりして......。
みなさんは、この行為ってアリだと思う?そんな疑問から、Jタウンネットでは2021年5月17日から25日まで、「『たばこ、一本ちょうだい』ってアリだと思う?ナシだと思う?」をテーマにアンケート調査を実施した。
積極的にオススメする喫煙者も
回答として用意した選択肢は、
「自分は喫煙者で、『たばこ、一本ちょうだい』はアリ」
「自分は喫煙者で、『たばこ、一本ちょうだい』はナシ」
「自分は非喫煙」
の3つ。
喫煙者の自分が「言われる側」だと仮定して、それが「アリ」か「ナシ」かで投票を募った。
得票総数は767票。今回は、喫煙者から集まった票(612票)を元に、結果の円グラフを作成した。
見ていただいているように、アリ派が全体の74.5%(456票)という大多数を占める結果に。ナシ派は25.5%(156票)だった。
たばこを1本手渡すことに、抵抗感がある喫煙者は少ないようだ。
Jタウンネットが投票を呼びかけた記事に対するコメントや、ツイッターで喫煙者の「もらいたばこ」に対する印象を見てみると、ナシ派の意見としては、
「価格が上がった今特に、あわよくば一本くらい貰っとこうという魂胆が...」
「わずか数十円のことかもしれせんが、喫煙者の負担は大きいですもんね」
といったものが。
たしかに、たばこって年々値上がりしている。
愛煙家の筆者が吸っている銘柄・「メビウス」のメンソールは、20年10月の「たばこ税」増税にともなって、1箱490円から540円に値上げした。
そもそも、たばこの価格は、そのかなりの部分が...、税金だ。JTの公式ウェブサイトにあるたばこ税の仕組みを解説したページによると、1箱540円のたばこは、その61.8%にあたる333.97円が税金なのだ。
ゆえに増税は、喫煙者のお財布事情に直結する。現在1本あたり27円なので、積み重なれば結構な額になるわけだ。
あげたくないなぁと思う喫煙者がいるのも、頷ける。
では、圧倒的な支持を誇るアリ派の意見とは?
「逆に私の場合、珍しいタバコもどきを吸ってるので 味、どうおもいますってすすめてる」
「1箱とかカートンなら話は別だけどあげたっていいじゃない?逆に貰うことだってあるかもしれないし経験談として言うと...半分くらい残ってたやつを...『もぉ1箱持ってきてるからこれ吸いなって』あげたこともあるよ」
「今は周りに喫煙者がいないのでしないが、15年位前までは自分の吸っているタバコもあげてたし、貰ってもいた。どんな味か知りたいけど、一箱買って自分に合わなかったら嫌だし」
たばこを1本あげれば、あとで1本返してもらえることがある。そんな感覚であげたり、貰ったりしているようだ。
その際、普段吸わないフレーバーを楽しんでいる人もいるらしい。たばこを1本手渡すことで、生まれるコミュニケーションがあるのかもしれない。
喫煙者には、他の喫煙者との間に、「仲間意識」のようなものがあるらしい。
一般社団法人・電子情報通信学会の技術研究報告に掲載された講演論文「喫煙が喫煙者同士の対人関係の形成に及ぼす影響」(金山富貴子ら、2014年)には、こんな調査結果が記載されている。
「喫煙者は喫煙者に対して肯定的印象をそれほど強く持っているわけではないが、喫煙者同士という意識を持ち、喫煙者に関係形成への期待を持っていることが示された」
これは、関東圏内在住の成人喫煙者男女500名を対象に行った調査によるもので、
「タバコを吸うことで普段接することが少ない人とも仲良くなれそう」
「一緒にいてタバコを吸っているといろいろな話ができて連帯感が感じられそう」
といった項目を10個作成し、同性の非喫煙者と喫煙者を比べて「自分のもつ同性の喫煙者のイメージに最も当てはまるもの」について7件法(「当てはまる」「当てはまらない」などを7段階のグラデーションをつけて評価させる方法)で回答を求めた際の考察の一部だ。
多くの喫煙者が「もらいたばこはアリ」と答えたのは、それを通して互いに密な関係を築きたいという気持ちの表れなのかも?