ラミレスが考えた「巨人のベストオーダー」。悩める井納翔一のトリセツも明かした
ラミレスインタビュー 前編
現状で考える巨人ベストオーダー
【「二番最強説」をラミレス氏が解説】
――2021(令和3)年セ・リーグのペナントレースは阪神タイガースが首位を快走し、リーグ3連覇を目指す読売ジャイアンツが続いています。しかし、巨人は大黒柱のエース・菅野智之、そして、キャプテン・坂本勇人が相次いで離脱。苦しい戦いが続いていますね。
ラミレス 新型コロナウイルスの感染が収まっていない状況下で、投打の中心となる選手が離脱するということは、監督としてはとても大変なことだと思います。
5月9日のヤクルト戦で右手の親指を骨折し、長期離脱を余儀なくされた坂本
――そこで今回は、ラミレスさんが考える現状の「ジャイアンツベストオーダー」についてお尋ねしたいと思います。1番での起用が多いのは、横浜DeNAベイスターズ時代に一緒に戦った梶谷隆幸選手。彼の一番起用についてはいかがですか?
(※梶谷は5月25日に選手登録抹消。早期復帰の可能性もふまえ、インタビュー時の内容をそのまま掲載します)
ラミレス カジの1番は適任だと思います。打率、ホームラン、打点と満遍なく記録を残しているし、盗塁もすでにリーグトップの10個もしていますし。彼が1番にいると打線は機能する。DeNA時代と比べて、今年はちょっと強振が目立つというか、右方向に引っ張る打球が多いですね。ホームランを意識しているのかどうかはわからないけど、彼のいい時は左方向への打球が多い。もう少し逆方向を意識すれば、打率も上がっていくでしょう。
――2番には坂本選手が起用されることが多かったですが、その坂本選手が離脱した今、2番には誰を起用したいですか?
ラミレス 2番はウィーラーですね。今年は絶好調だし、彼はパワーもあって、きちんと状況に応じたケースバッティングもできます。2番にウィーラーが控えていることで、相手投手はまったく気が抜けない状況になると思いますね。
――従来までのように「2番は何でもできる小技の上手な選手を」という考えではなく、近年では一発長打のある打者を並べる「2番最強説」も多く聞かれます。この点について、ラミレスさんはどうお考えですか?
ラミレス「2番最強説」はすごく理にかなった考えだと思います。たとえば、バントが上手で小技もうまいけど、打率が1割台、2割台前半程度の打者を2番に置いた場合、1番打者が塁に出れば確かにいろいろなことができるけど、もし1番がアウトになってしまったら、自動的にツーアウトになってしまう可能性がとても高い。これは相手からすれば、とてもラクな打順となります。
【現状のジャイアンツベストオーダー発表!】
――実際に、ラミレス監督時代のDeNAも2番に一発を打てる打者を配することが多かったですよね。
ラミレス そうですね。僕もソトを2番にしたり、筒香(嘉智)や宮粼(敏郎)を2番にしたりしました。ソトを2番にした時には、周りの人たちが「えっ!」って、すごく驚いた顔をしていたことを覚えていますよ(笑)。
でも、ソトはホームラン王を獲る活躍を見せて、打線につながりを持たせてくれました。今年はソフトバンクの柳田(悠岐)も2番で起用されることが多いですし、「2番は送りバント」というのは昔の考え方だと思いますね。
――さて、巨人のクリーンアップはどう考えますか?
ラミレス 3番・丸佳浩、4番・岡本和真、5番・スモーク。この並びが理想的だと思います。特に4番の岡本は絶対に動かせません。ここ数年の彼の活躍ぶりは、本当に目覚ましいものがありますから。
――4番については「打線の中心であるから不動のほうがいい」という考え方と、「状態に応じて臨機応変に起用すべき」という考え方もあるように思います。ラミレスさんは「あるべき4番打者の姿」とはどのようなものだと思いますか?
ラミレス あまりにも調子が悪くて結果が出ない時には見直す必要もあるかもしれないけど、理想を言えば、僕も「4番は不動であるべきだ」と思います。ただ、巨人は迷う必要がないでしょう。岡本がしっかりと4番として存在感を発揮していますから。ヤクルトの村上(宗隆)もそうですよね。去年、僕が佐野(恵太)をDeNAの4番として使い続けたのも、そういう思いがあってのことでした。
――6番以降はどのような打順が理想でしょうか?
ラミレス 私なら、6番に打てる捕手として大城(卓三)を起用して、7番・若林(晃弘)、8番・吉川(尚輝)、そして九番にピッチャーという打順が今のジャイアンツにはいいと思いますね。まとめると、こんな感じの打線が理想じゃないかな?
1.梶谷隆幸(右)
2.ウィーラー(左)
3.丸佳浩(中)
4.岡本和真(三)
5.スモーク(一)
6.大城卓三(捕)
7.若林晃弘(遊)
8.吉川尚輝(二)
9.投手
【「井納翔一」のトリセツは?】
――先ほども話に出ましたが、エースの菅野投手の離脱は巨人にとって、かなりの痛手ではないでしょうか?
ラミレス 去年までの菅野だったら、かなりの痛手だったと思いますよ。でも、今年の菅野には例年のような安定感は感じられない。調子のいいゲームと悪いゲームの差がハッキリしています。去年までなら、彼が投げる試合は75%は勝っている感じだったけど、今年は50%ぐらいのイメージ。高橋(優貴)、戸郷(翔征)、畠(世周)、サンチェスらで菅野の穴は埋められるでしょう。
――今年は、DeNAから井納翔一投手も巨人に入団しました。井納投手については、ここまでどう見ていますか?
ラミレス 「井納」という投手を取り扱うには、彼のことをよく知っていないと難しいと思います。僕は彼と5年間、一緒に野球をしましたけど、彼は得意な球場と苦手な球場がハッキリしています。これまではリリーフ起用が多いけど、それはリスクが大きいんじゃないかな?
――リリーフ起用だと、当然、すべての球場で投げることになりますよね。
ラミレス もちろん、そうです。彼の特性を考えると先発投手として起用したほうがいいと思いますよ。ジャイアンツリリーフ陣の中で、彼は勝ちパターンの継投には入れず、負けている場面のロングリリーフが多かった。移籍直後というプレッシャーの中での彼のメンタルを考えると、それは得策ではないと思います。
――そうすると、先発投手の一角として、彼が投げやすいように配慮して起用する必要があるということですね。
ラミレス そうです。1軍昇格と降格を繰り返していますが、菅野が離脱したからこそ、そういうチャンスを与えてもいいのではないかと思います。でも、先ほども言ったように、今年の状態の菅野ならば、チームにとってそんなに大きなダメージはないはず。ジャイアンツに関しては、気がつけば貯金はすぐに10以上になっているんじゃないかな(笑)。
(後編は「低迷するDeNAの現状ベストオーダー」について)