新年度が始まって1か月以上が過ぎました。4月から職場が変わった人も慣れてくる頃ではないでしょうか。
一方で人間関係の悩みも出始めるのがこの頃。
ここでは「職場の先輩が怖い」という悩みに、漫画家の瀧波ユカリさんが答えてくれました。


職場の先輩が怖い

職場の先輩が怖くていつもビクビクしてしまいます



【お悩み】
職場の女性の先輩が怖くて悩んでいます。過去に、怒鳴られたりしていた時期があり、またいつ機嫌が悪くなるかわからないので、いつも緊張してしまって…。
ときには仕事と無関係なことでも、先輩がやってほしそうにしていると、つい自分から進んで請け負ってしまいます。たとえばゲームの抽選や、フリマアプリで不要品を売ってあげるなど。仕事は気に入っているので、ある程度のつき合いのつもりでがんばっていこうと思っていますが…。
Aさん(広島県・30歳、夫35歳、長女4歳、二女1歳)

【瀧波さんの回答】
ビクビクする、緊張する。Aさんは先輩におびえている状態なんですね。おびえは、正体が見えにくいものに対してもつ感情。まずは先輩の正体を見きわめましょう! そのために使えるのは、言葉。Aさんが言う「職場の先輩が怖い」、これを具体化すると「職場の先輩が○○なので私は先輩が怖い」になりますよね。この○○に当てはまる言葉はなんでしょう? 「パワハラする人」「私から時間と労力を奪う人」「不機嫌で私をコントロールする人」「私を奴隷扱いする人」など、相手の性質をどんどん言語化して分析しましょう。

「そうか、あれはパワハラなのか」「私は奪われていたのか」「私をコントロールするために不機嫌になっていたのか」そんなふうに相手の目的や行動原理がわかれば、いつなにをしかけてくるかの予測がつけやすくなります。そうすれば、おびえの感情も減っていくはずです。

●我慢する人生はリスクが高い



おびえをなくすのは、あなたの中にあるべき「怒り」を取り戻すためです。人間はおびえながら怒ることができません。相手の正体がわかり、自分のされていることを理解したとき、人はやっと怒ることができます。

怒りを取り戻すべき理由はふたつ。ひとつは、自分の尊厳のため。ひどい目に遭っている自分のために怒ることは、自分の尊厳を守ることと同義です。もうひとつは、防御のため。自分のための怒りをもたない人間は、簡単に他人になめられます。


しかし自分のための怒りをもつことは、じつはとても難しいこと。「こんなの大したことじゃない」と思って我慢して生きる方が、自分を変えなくてすむ分楽だったりします。

だけど、怒りを忘れた人を待っているのは、他人になめられ続けて利用されるリスクの高い人生です。夫に家事育児すべて担わされたり、PTAの役員を押しつけられたり、しゅうとやしゅうとめに当たられたり、子どもにババアと呼ばれたりします。そして、これくらい大したことない、私が我慢すれば…、という諦めのなかで生きることになります。脅しではなく、本当に!

●怒りのイメージを見直して



怒ったりなんてできないと思うなら、怒りのイメージを見直した方がいいかもしれません。怒りとはその感情を常にむき出しにすることではありません。私を侵害したら許さないぞ、という意思を心に燃やし続けることです。この炎はその人自身を強くさせ、拒否の意思を示す勇気を与えてくれます。

最後に、先輩を遠ざけるための簡単なおまじないを。「私はあんな奴にこんな理不尽なことをされていい存在ではない。絶対に許さない」と毎日大きな声で唱えましょう。怒りを取り戻せますように、応援しています!

●教えてくれた人
【瀧波ユカリさん】



1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『30と40のあいだ
』(幻冬舎刊)『ありがとうって言えたなら
』(文藝春秋刊)など。