1日の予定は「寝る&起きる時間」から決める 仕事の質を上げる24時間のマネジメント
連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」
忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。今回は「毎日を『いい仕事』にする1日のスケジュール」について。
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「パフォーマンス=体力−疲労」という公式が成り立つのは、アスリートに限った話ではありません。ビジネスパーソンも疲労が抜けなければ、仕事の処理の能力が低下し、パフォーマンスが下がります。
疲労回復に絶大な効果を発揮するのは、何と言っても睡眠です。アスリートはトレーニングや練習に大半の時間を割くイメージが強いと思いますが、睡眠をどれだけ長くとれるかも重視しています。なぜなら、トレーニングでどんなに体力を高めたとしても、疲労が抜けなければ力を発揮できないことを、経験則としてわかっているからです。
一方、多くのビジネスパーソンは睡眠よりも目の前の仕事や家事、そしてプライベートの楽しみを優先しがちです。そして1日24時間から活動時間を差し引き、余った時間で眠ろうとします。
しかし、日々、「いい仕事」をするには、ビジネスパーソンもアスリートと同様、眠りによる疲労回復効果を高めることが大切。ですから、1日のスケジュールは、寝る時刻と起きる時刻から決める。これが正解です。
最初に決めたいのは、起床時刻です。
ヒトの眠りのサイクルは地球の周期とほぼ一致しています。これを概日リズム(サーカディアンリズム)といい、脳にある体内時計によって支配されています。「ほぼ」と書いたのは、体内時計は24時間きっかりに設定されているのではなく、だいたい24時間10分と考えられているからです。
「早寝早起き」ではなく「早起き早寝」の考え方
体内時計は朝の光を浴びるたびに、24時間周期にリセットされます。そして睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が脳内で増えてくるのは、体内時計がリセットされてから14〜16時間後。つまり、眠くなる時間は目覚めた瞬間に決まります。
体内時計の仕組みを踏まえると、1日のスケジュールを起床時間から決めると、睡眠のサイクルも整いやすい。「早寝早起き」ではなく「早起き早寝」の考え方です。
起きる時刻を決めたら、次は必要な睡眠時間を確保できる就寝時刻を決めます。1日に必要な睡眠時間は、一般的に7〜8時間とされていますが、どの程度の眠りが必要なのかは個人差が大きい。目安としては、朝すっきり起きられて、日中に眠気が出ず、夕方になってもパフォーマンスが下がらなければ、睡眠時間が足りていると考えてよいでしょう。
寝る時刻という“締め切り”を先に定めたら、あとは1日にやるべきことが終わるよう、スケジューリングを立てるのみ。“締め切り”をしっかり決めて置けば、「それまでには何とか終わらせよう!」と俄然やる気もわいてきますよ。
とはいえ、仕事が思った以上に長引いたり、ついついゲームに没頭したり、SNSやニュースをスマホで追っていたら、夜更かししてしまう日もあるでしょう。
ここで大切なのは、何時に寝たとしても、起きる時刻は変えないことです。翌日は疲れが十分に取れない場合もありますが、睡眠のリズムを変えないほうを重視します。
例えば土曜日に夜更かしをして、日曜日(休日)、2時間、寝坊します。朝日を浴びる時刻が遅れたため、体内時計は、2時間後ろにずれる。すると、メラトニンが分泌されるタイミングが遅くなり、量も減るため、その日の夜は寝つきが悪くなります。すると、月曜から体のダルいと感じたり、疲れを引きずったりすることになります。
週末に少し長めに寝たいと思ったとしても、寝坊は1時間以内に留めておくこと。この程度なら、体内時計が大きく狂うことはありません。
夜更かしは成長ホルモンの分泌にも影響
また、夜更かしは、睡眠時の疲労回復効果のカギを握る成長ホルモンの分泌にも影響します。
成長ホルモンは睡眠中、損傷した組織を修復し、疲労回復を助けてくれます。成長ホルモンの分泌も体内時計によってコントロールされており、分泌が高まるのは、寝入ってから1時間ほどで訪れる、深い眠りのタイミング。ここで、日中の数倍の成長ホルモンが一気に分泌されます。ところが、就寝時刻が普段よりもズレてしまい、眠りのリズムが崩れると、入眠後の成長ホルモンの分泌量が減少することもわかっています。これでは、疲労回復を図るうえでマイナスです。
休前日だけでなく、コロナ禍で在宅勤務が増えた方も要注意。「通勤時間がないし、夜更かしして、溜まっている録画をイッキ見しよう!」などと考えるのは禁物です。在宅勤務の前日も、「出社日と同じ時刻に起きて、同じ時刻に眠る」というルールを守ること。通勤時間がなくなった分、朝に生まれた時間の余裕は、体力アップや、心身をスッキリさせる運動、ストレス解消になる趣味の時間などにあてて、有効活用しましょう。
【中野ジェームズ修一氏、新刊発売】
人類普遍の悩みともいえるものの一つ「体の疲れ」。フィジカルトレーナーが最新医学の見地をもとに、疲れない体をつくるトレーニング、食べ方、眠り方から心の疲れを取り除く方法まで、現代社会に生きるすべての人が日常生活で実践できる「疲れない体づくり」を紹介した一冊。
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長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。
中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。