学校への相談の仕方を伝授します(写真:zon/PIXTA)

「学校の決まりに子どもが困っている」「先生の指導方法に疑問がある」といった悩みはあるものの、学校にどう相談すればいいのか、相談してきちんと対応してくれるのか、モンスターペアレント(モンペ)と言われないか、悩んでいる保護者が少なくありません。ではどうすればいいのでしょうか。今回は「子どもと合わない担任を変更してもらうことが可能なのか」という保護者から寄せられた質問について、くまゆうこ氏、小野田正利氏、鬼澤秀昌氏が回答します。

※本稿はくま氏、小野田氏、鬼澤氏の共著『学校あるあるトラブル18 保護者のお悩み解決します!』から一部抜粋・再構成したものです。

制度的には校長の裁量の範囲内

Q.担任と子どもが合いません。変更していただくことはできますか。

・どのレベルなら学校に相談すべきか迷います。とくに担任の言動が微妙と感じても、それを誰に伝えるの?というかんじです。クレーマーと思われる、それで子どもに害があることが不安で口をつぐんでしまいます。
・担任の顔が怖くて子どもが学校に行くのを嫌がっています。こうした事情はどのように解決すればいいでしょうか。
・低学年は特に先生の指導次第で精神面への影響が大きいのでベテランの方とか要望したいですが難しいですよね。

A.担任の変更は校長の裁量の範囲です。事情を相談してみましょう。

鬼澤:まず、制度的には、担任変更は「校長の裁量の範囲内」になりますので、校長がうんというか、です。

変えるということは、教員の配置が変わりますので、ほかの先生方も配置を動かさないといけません。校務分掌、が根拠になると思います(学校教育法施行規則第43条)。基本的に学校としては、1人の子が合わないという理由で、クラス全体が影響を及ぼすような対応はすべきではないという考え方だと思います。

担任の言動にかなりの問題がある場合は別ですが、うちの子が少し合わないという場合につきましては、裁量として認められるかと考えると、難しいのではないか、と考えます。

小野田:担任の顔が怖くて子どもが委縮しているというのは、笑い話ではなくけっこうある話です。実際に担任が変更される可能性は、学級崩壊状態になり収拾がつかない状態になったり、親御さんとのトラブルで精神的に追い詰められたりして、病気休暇をとる形となった、ということはいくつか聞きます。

長期間担任なしの学級の状態を続けるわけにはいきませんので、教育委員会に頼んで講師を回してもらうとか、校内人事でやりくりする方法がとられますが、最近はその余力がなくなってきた学校が多いので、緊急事態として教頭先生が担任を兼務することもまれではありません。

担任を変更してもらう、という要求がどこまでできるか、となると、それなりの根拠が必要ですよね。わいせつの事実を掴んでいるとか、ひどい暴言について記録をつける、などが必要です。そしてそうした事実があるのならば、速やかに要請するほうがよいです。

まずは「申し訳ないですが、うちの子が怖いと言っているのでなるべく優しい声掛けなどしてもらえるでしょうか?」などの相談から始めるとよいでしょう。

くま:それでも変わらなければ、管理職に相談してみる、という流れになると思います。

私はこうした悩みから通学する学校を変更した親子の例を聞いたことがあります。子どもが、先生が怖くてもうどうしても登校できなくなったので、親としては変わるしかない、となって、引っ越しはできないので、同じ区内で次に近い小学校に行ったパターンがありました。意外と歩いても行ける距離なら、幼稚園のときや習い事のつながりで知っている子もいて子どもの心理的にも変更しやすいということがあるようです。

都内であれば、学校数がけっこうある場合もあるので、隣の学校がそう遠くなく、引っ越しを伴わない変更も視野に入りますが、私の出身地の福岡だと、隣の小学校はすごく遠いんです。歩いていけないですね。ほかには、友達のいたずらがどうしてもなくならなくて、引っ越したという人もいましたね。けっこう判断は難しいです。

確かに、会社や組織で、いきなりあの上司と合わないから部署を変えてくれ、と言われても対応できないのは、いろいろな方針が絡み合っているからですよね。このように合わないと思って「仕方ない、こちら側が変わろう」ということで、年度途中の通学する学校の変更について、法的にはどのような仕組みでしょうか。

教育委員会が相当と認めるかどうか

鬼澤:根拠を調べると、これも裁量で「保護者の申し立てにより、市町村教育委員会が相当と認めるときには、市町村内のほかの学校に変更することができる」です(学校教育法施行規則32条2項、学校教育法施行例8条)。

そもそもは学校教育も行政システムの一部ですから、行政システムについて個人の意向がすべて反映されるという状況は、制度的には無理な話です。やはりそこは教育委員会の裁量と言うしかないですね。

小野田:転校というのは、これは各ご家庭の事情に大きく左右されますのでなかなか簡単にはできません。

ただ、昨今はいじめの問題、不登校の問題が社会的に認知されてきたことなどから、心機一転やり直そう、と思い立った場合、教育委員会は昔よりは柔軟に相談に乗ってくれる例があると聞きますね。先ほど鬼澤さんのおっしゃった「就学校の指定変更」と言います。

教育委員会は「子どもが学校に行くこと」を大事にする機関ですから、「なおもその学校で頑張り続けられるよう体制を整える」か「就学校の指定変更を認める」かの判断をすると思います。

大事になってくるのは、まずは子どもの意志です。次はそれを親が了承しているか。この確認があれば、移る先の学校長と今の学校長が情報交換をして、受け入れやすそうな組の担任に「どう?」と確認していく。

とはいえ就学校が変わっても、通学手段は自助努力してください、となるのが現実です。くまさんがおっしゃったように歩いてでもいける距離に学校があるのならば、転校を勧めたい気持ちもわかります。

最近は特認校という制度も広がっていますね。「この学校は自治体内のどこから来てもいいという学校」のことです。これは学校の存続、地域の活性化などを目的にしている場合が多いですが。

くま:心配なのは、「合わない」のレベルです。正直に言うと、「完全に合う学校」なんてないんですよね。よほどの場合であれば変わったほうがいいですが、場を変えるのは大賛成ですが、それがある意味手軽な選択肢になると、何かあったら次の場所、誰か合わない人がでてきたら次の場所、となるとこれは子どもの負担が逆に大きいですよね。

鬼澤:例えば、いじめやトラブルの場合、なんで加害者じゃなくて、私が最終手段として転校しなければならないのだ、という声が当たり前ですがあがります。一方、法律上強制ができないので、被害者側が動くことで改善に向かうならありなのではないか、という論理は理解できますが、いろいろ思うところはあります。

小野田:そうですね。基本的には子どもの意志がいちばん大事ですよね。「新しい所でがんばれる?」。ここには親子の関係として、子どもの意志をどれだけ尊重してあげるか、というのが大事ですよね。

学びの質と環境が保障されないなら改善を訴える

くま:また、自治体によって違いはあると思うのですが、要請されたからすぐ学校変える手続きに入るかというとそうではないですよね。1人がOKなら、「他にもどんどん変わりたい!」となる……ことは聞いたことはないですが、可能性としてはありますよね。


個人的なまとめとしては、学びの質と学ぶ環境が保障されるなら、いたずらに変えることがいいことだとは思いません。このいずれかがない場合は相談するべきですし、改善を訴えてよいと思います。

鬼澤:いろいろ述べてきましたが、就学の変更は、変えないところは変えないでしょう、と個人的には思いました。裁量なので自治体によると思います。こういうケースでは就学変更を一緒に考える、というような基準を明確にもっていればいいのですが。

小野田:私の実感ですが、「〇〇さんが学校変えた。じゃあ私のところも」ということはあまりないと感じます。

教育委員会や学校にお願いしたいのは、まず、移りたいという理由になっている事実関係を確認して、子どもの意志も確認し、それらが妥当なものだと認めたうえで、親御さんがそうしたいのであれば、最終の調整作業をするということです。

そのうえで、事前に考えたいのは「移る先はどこ?」という話ですね。体験見学も柔軟に実施しているところもあります。