オーストラリアに生息するコアラは日本で飼育しようとすると餌代が年間2000万円もかかるといわれていますが、動物園の目玉に据えられることもある人気の高い動物です。そんなコアラの人気の理由について、サザンクロス大学で観光学を研究するケビン・マークウェル准教授が「人間の赤ちゃんに似ているため」という説を唱えています。

Why do we love koalas so much? Because they look like baby humans

https://theconversation.com/why-do-we-love-koalas-so-much-because-they-look-like-baby-humans-153619

コアラの人気は世界的にも高く、新型コロナウイルスによって観光産業が打撃を受ける以前は年間最大32億オーストラリアドル(約2700億円)の経済効果を持ち、3万人の雇用を創出していたという研究結果も存在します。



そんなコアラの人気について、「人間の赤ちゃんに似ていることが理由」という説を唱えるのがマークウェル准教授。マークウェル准教授は「人間は動物の中に人類に共通する特性を認めたときに共感を覚える」という研究結果を挙げて、コアラは人間の赤ちゃんに似ており、擬人化しやすい生物だと語りました。

マークウェル准教授によると、コアラにみられる「赤ちゃんに似ているポイント」が以下。

・目が頭の中心より下にあり、額が目立つ

・丸みを帯びた頭と胴体

・体の表面にみられる弾力性

・垂直な姿勢

このほかにも、コアラは傷ついたり動揺したりすると赤ちゃんのような鳴き声をあげます。実際にコアラが鳴いている様子は以下。

Koala Gets Kicked Out Of Tree and Cries! - YouTube

マークウェル准教授は成体のコアラには幼い身体的特徴が残る「ネオテニー」という現象が見られると指摘。人間の大人がネオテニーに対して肯定的な感情を持つという研究結果を挙げ、コアラの人気が高いのは人間の赤ちゃんに見えることが理由だと主張しました。

マークウェル准教授によると、20世紀前半に出版されたコアラを報じる新聞記事は、コアラを人間の幼児のように擬人化した表現が多く、1918年出版の「The Magic Pudding(まほうのプリン)」や1933年出版の「Blinky Bill(ブリンキー・ビル)」のようにコアラを擬人化してキャラクター化した児童書も存在するとのこと。このように、マークウェル准教授は歴史的にもコアラを人間の赤ちゃんと結びつけることが多いとしています。



生息地のオーストラリアでは国民がコアラに対して強い愛着を持つとされており、3州にコアラ専門病院が存在するほか、絶滅危惧種よりも一段階低い危急種であるにも関わらず、クイーンズランド州のエッピング・フォレスト国立公園にしか生息しない絶滅危惧種のキタケバナウォンバットよりもはるかに多い保護資金を集めています。しかし、2019年9月から数カ月にわたって続いた大規模な火災によってコアラの生息地の約4分の1が焼失したとみられており、何らかの手を打たなければ絶滅する恐れもあると報じられています。

豪ニューサウスウェールズ州のコアラ、2050年までに絶滅の恐れも - BBCニュース