田中将、開幕2戦目先発の“利点”とは 24勝無敗、優勝に導いた2013年は4戦目
日本野球の対応に試行錯誤中「思い出していかないといけない…」
楽天・石井一久GM兼監督は27日、3月26日の日本ハムとの今季開幕戦(楽天生命パーク)の先発に涌井秀章投手を指名。8年ぶりに復帰した田中将大投手は翌27日に先発することが合わせて発表された。田中将がいきなり大役を任されることはなかったが、2戦目に回ったことで『24勝無敗』でチームを球団創設初優勝に導いた2013年の“再現”につながる可能性もある。
田中将が復帰した途端、楽天のシーズンシートの売り上げが急上昇して完売間近となり、10人限定で設立した年会費180万円の個人ファンクラブ「マー君クラブVIP」が入会受け付け開始から14分で完売……。球団関係者の間では「ファンが望んでいる開幕投手は田中将なのかもしれない」との声も上がっていた。
しかし、石井監督の選択は戦略上、順当な人選と言えるのではないだろうか。日本の野球から7年間離れていた田中将は開幕へ向けて順調にステップを踏んではいるが、まだまだ戸惑いを隠せないようだ。27日のヤクルトとの練習試合(沖縄・浦添)で復帰後2度目の実戦登坂に臨んだが、4番・村上に適時打を許して3回2安打2四球1失点。
日本ハム・中田翔内野手に3ランを浴び、2回3失点だった20日の初登板と比較して「自分が投げるボールの状態は上がってきている」と言う一方で、「アメリカで7年間やって、体に染みついたものもある。それが全てこちらで生きるかというと、邪魔になるものもあるので、削ぎ落し、思い出していかないといけない。その作業がまだまだ必要」とも。再び日本球界にアジャストすることの難しさをうかがわせる。
その点、涌井は26日に実戦初登板して2回無安打無失点。許した走者は味方のエラーによる1人だけだった。単純に現時点では涌井の方が仕上がりが早い。
もともと、石井監督は開幕投手の条件に「基本的には前年しっかり頑張れた人」を挙げていた。その点でも、昨季チームで唯1人規定投球回数を上回る130イニングを投げ、11勝4敗で最多勝を獲得した涌井の右に出る者はいなかった。
優勝した2013年はWBCに出場した負担を考慮、開幕4戦目に先発
田中将にとって2戦目の先発に回ったことが「吉」と出る可能性もある。どのチームも、開幕投手を務めるのがその年のエース。2番手も、“カードのアタマ”となる開幕4戦目を任されることが多い。
となると、2戦目はチーム内の序列的にやや落ちる投手が先発することに。ここに田中将を持って来られるのは涌井、田中将、岸孝之、則本昂大と、開幕投手を任されてもおかしくない投手を4人も抱え、ドラフト1位ルーキーの早川隆久(早大)まで2桁勝利を期待されている楽天ならではなのだ。
ちなみに、ヤンキースで4度開幕投手を務めた田中将だが、楽天では2012年の1度だけ。24勝無敗という超人的な成績を残した13年も、開幕投手ではなかった。直前まで日本代表としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第3回大会で戦っていた負担を考慮され回避。当時の星野仙一監督は、新人の則本昂を代役に抜擢した。
田中将は4戦目にあたるKスタ宮城(現・楽天生命パーク)での本拠地開幕戦に回った。この年27試合に先発したが、相手の開幕投手と対戦したのは、7月9日の日本ハム戦(武田勝)1度きりだった。今年もまたマー君が土つかずで白星を稼ぎまくり、引っ張られるようにしてチームも上昇気流に乗る展開にならないとも限らない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)