“電力の卸値”が25倍に!電気料金「市場連動型プラン」の落とし穴
「電気代10倍かも」。年初からこうしたツイートが見られ、電気料金の高騰が問題になっている。記録的な寒波による電力需要の増加と火力発電の燃料、液化天然ガス(LNG)の不足が重なっているのだ。そんな電気料金高騰について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■市場連動型プランが電気代高騰の原因に
大手の電力会社はLNGなどは長期契約を結んでいるので大きな影響はありませんが、深刻なのは新電力。’16年の電力自由化以来、新電力は約700社、18.6%のシェアがあります(’20年10月分・電力・ガス取引監視等委員会)。
新電力の多くは、自前の発電所を持たないか、持っていてもそれだけではまかないきれず、電力を日本卸電力取引所(JEPX)から調達しています。JEPXの価格(全国24時間平均)は、通常1キロワット時10円未満。ところが’20年末から上がり始め、’21年1月中旬にはなんと150円台。12月前半は6円台でしたから25倍もの異常な高値をつけました。1月25日ごろから落ち着いていますが、真冬の2月以降も予断を許しません。
とはいえ、従来の電力料金は、「120キロワット時まで19.88円」などと使用量に応じて単価が決まり、JEPXとは関係ないものでした。
ですが新電力には、JEPXの価格と連動して電気料金が日々変わる「市場連動型」を採用する会社があり、これが高騰の原因でした。JEPXが10円未満で落ち着いていた’20年は、市場連動型は従来型より安いプランでしたが、冒頭のツイートのように、前月の10倍に跳ね上がるリスクもあったのです。
新電力のうち、市場連動型プランをとっているのは、自然電力、エルピオ、ダイレクトパワー、ハチドリ電力などで、全国で約80万件が契約しているといいます。
このうち、ハチドリ電力は地域の大手電力の料金を超える高騰分はハチドリ電力が負担すると発表しました。また、自然電力は、高騰分を上限3万円まで割り引きます。また、ダイレクトパワーは解約手数料2,000円を無料にし、他社への切り替えを促しています。
各社対応はさまざまですが、新電力を利用中の方はまず、料金プランを確認して。市場連動型プランだった場合は、電力会社の切り替えも検討してください。
切り替えは、新しい電力会社と契約すれば、以前の電力会社とは自動的に解約になります。なお、新規契約の前に、今の電力会社と解約すると、停電を起こす可能性もあるので注意してください。
今回の高騰には、自然エネルギーを扱う新電力も含まれます。自然エネルギーはJEPXの価格で取引されますし、料金を下げるため市場連動型をとる会社が多いからです。ですがこの異常事態で、自然エネルギーの活用や新電力の台頭による価格競争が、後退するのは残念です。利用者への説明を尽くして、収束後に「また応援したい」と思える事業経営を目指してほしいものです。
「女性自身」2021年2月16日号 掲載