2020年を総ざらい! 『食楽web』編集部が選ぶ2020年の「ベストグルメ」は?
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2020年も残すところわずか。振り返れば、コロナ禍によって、働き方や休日の過ごし方、そして飲食方法など、誰もがライフスタイルの大きな変化を余儀なくされた一年でした。
そこで、2020年のグルメ事情はどう変わったのか、年間1500件以上のグルメ情報を扱う『食楽web』の編集者3人が、今年を振り返りつつ鼎談しました。外食情報からお取り寄せ、テイクアウトまで、各自が心に残ったグルメについて話し合いましたので、ご紹介しましょう。
2020年の食はどう変わった? 改めて1年を振り返る
『Pan&(パンド)』の冷凍パン
まずは2020年の総括から。今年は外食する機会が減り、家で食事をとるシーンが増えた、という人も多いと思います。テーマに挙がったのは、お取り寄せグルメ、テイクアウト、お弁当、冷凍食品など。
かね太:さっそくですが、2020年のグルメを振り返ってどうでしょう? 自分的には家で巣篭もりする時間が増えた結果、「お取り寄せ」は大きなキーワードだったんじゃないかな、と。
T:あとは「デリバリー」と「テイクアウト」。とにかくコロナの影響が大きかったね。営業時間短縮で、22時以降にあったぶんの利益をどこで取り戻すのか、苦労して模索する店もいっぱい見かけた。
まみくま:テイクアウトでいえば、行列店や予約困難の人気店が持ち帰りやデリバリー対応を始めたことで、これまで食べられなかった料理が手軽に味わえるようになったのは、素直に嬉しいかな。
T:同時にウーバーイーツの自転車もめちゃくちゃ増えて、よくぶつかりそうになった(笑)
かね太:確かに! 「弁当」という日本の食文化も再注目されて、あとは「冷凍食品」のレベルアップぶりもスゴかったですね。
まみくま:そうそう。『Pan&(パンド)』の冷凍パンや『ロイヤルデリ』の冷凍パスタとか。特にロイヤルデリは、冷凍パスタを温めて、こんなにちゃんと“お店の味”になるのかとビックリ(笑)
かね太:“家で手軽に美味しく”という意識の変化が如実に出た一年でしたね。
2020年に編集者たちが印象的だったお店は?
荻窪『人と羊』の「ひつじそば」
かね太:コロナ禍で店舗取材が難しかったけど、皆さんはどんな味に出会いました? 印象に残っているお店を教えてください。
T:僕の場合、趣味の海外旅行に出かけられなくなったので、「現地に行った気分になれる店」をテーマにして店を巡ってました。
まみくま:GoToも微妙な感じだし、東京には旅気分が味わえる店も多いから、それはいいかも!
T:けっこう衝撃的だったのは、荻窪の教会通りで、月曜夜だけ間借り営業してる『人と羊(ひととよう)』っていう羊ラーメンのお店。めちゃくちゃ作り込まれた羊のパテ・ド・カンパーニュ、羊の肩ロース、羊のコンフィなんかがのってて、ラーメンというより、もはや完全に新しい羊料理。羊骨からとったスープを絡めて麺をすすると、羊ならではの芳香がぶわっと鼻に抜けて、もうなんだか気分は完全に遊牧民(笑)
かね太:ああ、あそこ! かなり熱烈なファンが列をなしてると噂ですね。
『SUNSET BEER FC』の「キューバンサンドイッチ」
T:あとは新井薬師前の『SUNSET BEER FC』もよかったです。キューバ料理の名店を食べ歩いた店主が作る、キューバンサンドイッチの専門店。ラードを練り込んだパンに、8時間くらいかけて焼き上げるローストポークやハム、チーズ、ピクルスを挟んで、プレス機でバターを塗りながら焼いていくんだけど、カリッと香ばしいパンと旨みたっぷりの具材が見事に調和していて、危うく中毒になりかけた(笑)
まみくま:美味しそう! キューバンサンドイッチのお店って、実はほとんど日本にないよね。
かね太:自分の場合、コロナで家にいることが多かったので、暗い気持ちを少しでも明るくできるような、“見た目に楽しく、ワクワクする”お店によく足を運びました。
『イル ジェンティーレ』(恵比寿)のオムライス
かね太:印象深いのは恵比寿の『イル ジェンティーレ』の「オムライス」。見て美しく、割って楽しく、食べて美味。美しい半円形のフォルムのオムライスの中にポーチドエッグが入っていて、スプーンを入れた瞬間に玉子の黄身がとろ~りと流れ出てくるんです。
まみくま:うわ、美味しそう! 動画を撮りたくなる。オムライスは家庭でも作れる料理だからこそ、プロの腕が試される奥深さがあるよね。
かね太:何十時間もかけて旨みを引き出した赤ワインソースがまた美味しくて。濃厚&ビター。ご飯は胡椒を効かせたバターライスで、卵とソース、ライスのバランスが絶妙。まさに大人のオムライスという印象です。
『AWANOUTA』の「ムール貝のエスプーマ塩ラーメン」
かね太:あとは、湘南の七里ガ浜にある『AWANOUTA』の「ムール貝のエスプーマ塩ラーメン」。ムール貝を煮詰めたスープを泡状にして塩ラーメンに加えた一杯。もはやラーメン界にも当たり前のように化学の波が到来してることに驚きました(笑)
T:動きがあって、エンタメ性も高いのが今どきの料理っぽいね。
日本の魅力を再発見! ステーキのような油揚げ『谷口屋』(福井県)
『谷口屋』の「おあげ」
まみくま:今年はお取り寄せやテイクアウトなんかの記事を多く扱ったんだけど、お取り寄せで特に美味しかったのが、『谷口屋』の「おあげ」! 油揚げ消費量1位の福井県の名物で、厚揚げ並みに肉厚で。油揚げの概念を覆すほど美味しかった。
かね太:これは分厚い! 食べごたえありそう!
まみくま:ステーキ感覚で焼いて食べると、カリッふわっとした食感で、にじみ出てくる豆腐と油の旨みに完全ノックアウト。改めて、素朴ながら日本の伝統食は素晴らしいなぁ、と。
T:お取り寄せだと、本当に全国各地の隠れた名物が楽しめるのがいいよね。これまで日の目を浴びていなかった料理も発見できるし。
『レティシア』の「塩チーズケーキ」
まみくま:テイクアウトスイーツのNo.1は、隠れファンの多い祐天寺にある町の洋菓子屋『レティシア』の「塩チーズケーキ」ですね。真っ白い飾り気のない白いケーキだけど、塩とクリームチーズ、イチジクのコンポートが口の中で優しくとろける食感で、ひと口目から感動!
T:使っている素材を見ていると、コーヒーはもちろん、アルコールも進みそう。
まみくま:まさに。お酒好きの店主が考えただけあって、ワインにもピッタリ。駅からちょっと遠いけど、時々どうしても食べたくなって買いに行っちゃう。
2021年のグルメはどう変わる? 来年のトレンドを予想
かね太:来年も引き続きキーワードは“withコロナ”で、変わらずテイクアウトやお取り寄せなどのおウチ需要が強いんですかね。
T:一部の専門家によると2023年頃まではこんな感じが続くという見解もあるみたいだね。
かね太:健康系グルメも、より脚光を浴びそうな気がします。
まみくま:大豆ミートなんかも今年は注目されたけど、その流れがより加速しそう。プロテイン入りのお菓子や飲み物とか増えて、しかも美味しくなってるから。
T:ヴィーガンもかなり普遍的になってきつつあるしね。ひと昔前のちょっとヒッピー文化の香りがするヴィーガンじゃなくて、一流のシェフが本気で美味しく作るヴィーガン。
まみくま:見た目がカラフルなグルメや、台湾系スイーツ、ITとグルメを組み合わせた新時代のグルメなんかも、ますます面白いものが出てきそうです。
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というわけで、コロナ禍で大変な思いをしている飲食店も多く、食の世界はまさに大きな変革期に差し掛かっています。期待と不安が入り混じりつつ迎えることになる2021年ですが、美味しいものに出合うのはやっぱり楽しいもの。明るい話題が増えることを祈ります!
(写真◎土原亜子、かね太、まみくま)