AFX通信によると、米FRB(連邦準備制度理事会)は10日、金融政策を決定するためのFOMC(米連邦公開市場委員会)会合を開き、全員一致で、1昨年6月以来、連続16回目となる利上げの実施を決定した。この結果、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標は市場の予想通り0.25%ポイント引き上げられ、年5.0%となった。

  FOMC会合後、FRBは金融政策姿勢を示す声明文を発表したが、それによると、「今後、インフレリスクに対処するために、さらなる金融引き締め(利上げ)が必要になる可能性がまだ残されている。しかし、そのような金融引き締めがどの程度まで、また、いつ実施するかについては、今後、発表される経済指標で示される経済の先行き次第である」としており、FRBとしては、今後の経済データが、FRBが期待している経済のソフトランディングとインフレ抑制を示すかどうかを注意深く見守るとした。

  FRBは、インフレが予想以上に強まる事態、あるいは、最近のエネルギー価格の高騰と住宅市場の成長鈍化で、企業や個人の消費支出が落ち込むことを警戒しているが、市場では、今回の声明文は利上げが行き過ぎて、景気が沈滞化しないよう慎重に利上げの休止のタイミングを探りながら、次回の6月以降のFOMC会合では、景気が急速に落ち込めば、利上げを休止する可能性に含みを持たせ、また、一方で、景気の強さが依然、持続し、インフレ上昇圧力が増せば、利上げする可能性にも含みを持たせたと見ている。

  これを受けて、ニューヨークの外為市場では、今後の金融政策が経済の先行き次第で、不透明となったため、ドル/円は前日の1ドル=111.14円から110.18円に急落した。また、FF金利先物市場で見た利上げ確率は、6月下旬のFOMC会合での利上げ確率は、前日の32%から発表後は36%にやや上昇、8月初旬での利上げ確率も64%から68%にやや上昇したが、水準的にはほとんど変わらずという状況だった。

  このほか、声明文では、景気の現状認識について、「景気は依然、かなり強いものの、成長が緩やかになり、より持続的な成長に落ち着く可能性がある」とし、エネルギー価格の急騰の影響についても、「これまでのところコア・インフレ(価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたインフレ率)への影響は緩やかで、インフレ期待も依然として抑制されている」とした。しかし、「(エネルギー価格の高騰による)原材料など国際商品市況の上昇や設備稼働率の上昇がインフレ圧力を高める可能性がある」と警戒も怠っていない。

  一部のエコノミストは、年末までにあと2回利上げされ、FF金利の誘導目標は5.5%にまで引き上げられると見る向きもある一方で、もう十分利上げしたとする見方で分かれている。【了】