日産に残るセダンは400万円以上! 日本で「シルフィ」生産終了 中国ではシルフィ人気過熱の理由

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日本でシルフィ生産終了も中国では爆売れな理由

 日産が、セダンのラインナップでエントリーモデルとなる「シルフィ」の新規オーダーを2020年11月で終えていたことが明らかになりました。
 
 セダン人気が下火のなかで残っていたシルフィが今回生産終了したことにより、日産が国内でラインナップするセダンは「スカイライン」「フーガ」「シーマ」という高級セダンのみとなります。
 
 一方で中国ではシルフィの人気は高いといいますが、日本と事情が異なった背景にはどのような理由があるのでしょうか。

2012年に登場した3代目となる現行シルフィ。2020年末で生産終了となる。

 シルフィは、かつて日産のセダンで人気を博した「ブルーバード」「パルサー」といったモデルの後継に位置づけられて、日本では2000年に初代モデルが登場し、2代目まで「ブルーバードシルフィ」という車名で販売。また、海外では「サニー」や「アルメーラ」などという別名でも展開されていました。

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 日本で販売されている現行モデルは、2012年に登場した3代目です。2020年12月現在、日産のセダンラインナップは、約202万円から設定されるシルフィ、約435万円からのスカイライン、約502万円からのフーガ、約823万円からのシーマというラインナップです。

 約260万円から設定されていた「ティアナ」が2020年7月に生産終了し、続いてシルフィも廃止されるため、今後の日産には400万円以上の高級セダンのみが残る形となりました。

 近年のシルフィについて首都圏の日産販売店は次のように話します。

「現行シルフィは、日産のなかでも3ナンバーサイズながら価格が抑えられていたこともあり、登場当初はそれなりに売れていました。

 しかし、競合となる他社セダンの安全性能が刷新されていったことに加え、セダン自体の人気低下もあり、最近では月間販売台数が1桁台のことも珍しくなかったと思います。

 また、最近のセダンにおいては全体的な台数は大きくないですが、2019年にマイナーチェンジしたスカイラインの400Rが比較的に売れている印象です」

 実際に過去5年の登録車販売台数においても、公表されるTOP50にランクインすることはなく、シルフィの販売が厳しい状況だったことがわかります。

 また、2020年12月上旬時点のシルフィについて前述とは別の販売店は次のように話します。

「シルフィは工場への新規オーダーを2020年11月末には基本的に終了しています。

 現在では、メーカー側の在庫車両としてまだ生産ラインに入っていないものが数十台分あるため、希望の装備やグレードが合えば、まだある程度選べる状況です」

※ ※ ※

 このようなセダン市場の縮小は日産だけに限らず、ホンダは2020年7月と8月に同社セダンラインナップのエントリーモデル「グレイス」と「シビックセダン」の生産終了を発表しています。

 また、2020年12月1日にはトヨタが国内で販売するセダンの「プレミオ」と「アリオン」の生産終了を2021年3月末とアナウンスしました。

 一方、中国では数多くあるセダンのなかでもシルフィが人気で、2018年には年間で48万1216台も販売。この数字は、2019年4月に開催された「上海モーターショー2019」で新型モデルが発表される前の、先代モデルの台数です。

 なぜ、日本と中国ではこれほどまでシルフィの人気に大差があるのでしょうか。

なぜ中国ではシルフィが圧倒的な人気を誇るの?

 中国では前述のとおり2019年から4代目となる新型モデルが販売されています。

 一方、今回日本での生産終了が明らかになったシルフィは先代にあたる3代目モデルとなり、中国以外にも北米市場では「セントラ」、オセアニア市場では「パルサーセダン」、台湾市場では「スーパーセントラ/セントラエアロ」として販売されるなどグローバルモデルとして展開。

 新型モデルは全長4641mm×全幅1815mm×全高1450mmとなり、3代目モデル(日本仕様)の全長4615mm×全幅1760mm×全高1495mmと比べて一回り大きいサイズになっています。

 また、3代目モデルより低重心でワイドなスタンスにしたことで空力性能を向上。プラットフォームは、新設計のものが使われ3代目モデルよりも広い後席の足元空間は実現しました。

 パワートレインは、1.6リッターガソリンエンジンにCVTを組み合わせたもので、燃費性能を向上させています。

 中国と日本のシルフィ人気の差について、日産の担当者は次のように話します。

「シルフィは2006年に中国市場への投入以来、中国の家族をターゲットとして、セダン市場をリードする空間の快適性、燃料効率、信頼性でユーザーのニーズを満たしてきました。

 中国市場のマーケティングリサーチから、シルフィのコアアドバンテージを強調することで、中国の家族層においてユニークな製品としての位置づけを確立しました。

 また、中国では高級感と後席の広さが重要なポイントとなり、新型モデルではその点も考慮して開発がおこなわれました。

 これらの理由から、シルフィは中国自動車市場の激しい競争においても高い支持をいただいております」

4代目となる新型「シルフィ(中国仕様)」。3代目とは異なり現在の日産デザインが取り入れられている

 日産と同様に、日本と比べてセダンの販売が海外で好調なのがホンダです。

 前述のとおりシビックセダンは生産終了となりましたが、中国市場における2018年のシビックの販売台数は20万台を超え、日本の同時期と比べて20倍以上となります。

 ホンダの担当者は、中国市場のセダン人気について次のように話します。

「中国では、北米同様にシビックやアコードが人気です。その要因としては、セダンそのものが人気なのもありますが、両車の質感の高さが好評だとも聞いています」

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 日本では、セダン市場が年々縮小傾向にあるものの、走りに特化したスポーティなセダンは、中高年層から一定の人気があります。

 一方で中国では、新型モデルを購入したユーザーに若年層が多いといい、先代モデルよりも向上した質感が好評のようです。

 こうした日本と中国のニーズの差がセダン市場における人気の差といえるのかもしれません。