【真壁 昭夫】文在寅が頭を抱える…早くもバイデンから食らった「痛烈な一撃」の中身 米韓関係はどこへ向かうのか

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韓国経済への影響

米国の大統領選挙について、民主党候補のバイデン氏の当選が確実となった。

トランプ大統領は独断とトップダウンで政策を決めた。

一方、バイデン氏は実務家レベルの協議を積み重ねた外交政策を重視するとみられる。

ただ、バイデン氏は中国に対して一段と強い姿勢で臨むだろう。

それは、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済運営にマイナスになる可能性がある。

文在寅〔PHOTO〕Gettyimages

10月の韓国の輸出や失業率は、9月から悪化した。

米国が中国の通信機器大手ファーウェイへの半導体供給を事実上禁止したことや、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は大きい。

今後、米国が中国企業への規制などを強化する展開は軽視できず、韓国経済を取り巻く不確定要素は増大しつつある。

それに加えて、韓国の主力輸出品目である半導体に関して、グローバルな勢力図が大きく変わり始めている。

それに韓国は対応しなければならない。

特に、米アップルが自社で設計した半導体の製造を台湾のTSMCに委託したことは大きい。

設計と開発に注力する米半導体企業は増えている。

それに韓国のサムスン電子などがどう対応するかによって、韓国経済にはかなりの影響があるだろう。

文大統領の対中姿勢をけん制するバイデン氏

11月12日、韓国の文大統領との電話会談の中で、バイデン氏は“インド太平洋”に言及した。

バイデン氏は日豪首脳との電話会談でも同じ言葉を用いた。

つまり、バイデン氏はわが国が主張してきた“自由で開かれたインド太平洋”の構想に韓国を引きずり込み、インド太平洋地域における対中包囲網を強化したい。

バイデン氏はかなり早い大統領段階で文大統領に“踏み絵”を迫ったといえる。

バイデン氏〔PHOTO〕Gettyimages

経済面からバイデン氏の対韓姿勢を考察すると、中国の半導体自給率向上を阻止する狙いがあるはずだ。

ファーウェイへの規制発動を経て、米中の対立は半導体の製造能力の取り合いというべき段階に移行しつつある。

なぜなら、中国の半導体設計力は世界トップレベルにある一方で、半導体の製造力は発展途上にあるからだ。

世界地図を思い浮かべるようにして考えると、足許、米国から台湾へ、半導体の製造シェアが急速に移っている。

それを象徴するのが、米アップルが半導体大手インテルからのチップ調達に幕を閉じ、自社開発したチップ生産をTSMCに委託したことだ。

アップルはiPhoneやMacの性能向上と価格向上の抑制を目指し自社でのチップ設計・開発とTSMCへの生産委託をより重視するだろう。

これまで設計から生産までを手掛け、パソコンに搭載されるCPUを中心に世界の半導体産業をリードしてきた米インテルは自社の製造ライン確立が遅れ、外部への生産委託を重視しているようだ。

事実上、米国などの企業がTSMCの生産ラインを奪い合っている状況といっても過言ではない。

米国が世界のリーダーとしての地位を守るために、自国企業の半導体設計能力の向上やTSMCなどとの協力強化は不可欠だ。

対中接近がより難しくなる文大統領

今後、米国にとって中国の半導体製造分野の中核的存在であるSMIC(中芯国際集成電路製造)への制裁の重要性は増すだろう。

その一方で、米国はリスク分散の観点などからTSMC以外のファウンドリを持つ国との関係を強化しなければならない。

その意味で、米国経済にとってTSMCに次いで世界第2位のファウンドリである韓国サムスン電子の重要性は高まっている。

バイデン氏が文大統領との電話会議でインド太平洋構想に言及した狙いの一つは、サムスン電子を自由資本主義陣営にとどめるためだ。

サムスン電子にとっても、米国との関係強化はさらなる製造能力の向上に欠かせない。

なぜなら、同社の半導体事業は日米の技術に依存してきたからだ。

米企業が半導体の設計に注力し始めた状況は、サムスン電子のファウンドリ事業の成長を目指すチャンスでもある。

文政権下の韓国経済は、極めて重要な局面を迎えたと考えるべきだ。文政権が安全保障面では米国に依存しているにもかかわらず、経済面での対中関係を重視し続けるのであれば、米国はより毅然とした態度で韓国に接するだろう。

米韓関係の冷え込みは、サムスン電子がTSMCとの競争に劣後する要因になりかねない。

そうした展開が鮮明となれば、韓国の輸出にはさらなる下押し圧力がかかり、所得・雇用環境は一段と不安定化する恐れがある。

それに加えて、バイデン氏はトランプ政権の北朝鮮政策を批判している。

文氏が外交面での北朝鮮との宥和を目指すことは、これまでに増して難しくなる可能性がある。

そうなると、韓国の反日姿勢は一段と苛烈化する恐れがある。

そうした展開を念頭に、わが国は安全保障面で米国との連携を強化しつつ、アジア新興国など国際世論との関係をより強化すべきだ。