ハッブル宇宙望遠鏡が観測し続けた消えゆく超新星の輝き
▲棒渦巻銀河「NGC 2525」。左端には超新星「SN 2018gv」が輝いている(Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES team)
こちらは南天の「とも座」(艫座)の方向およそ7000万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 2525」の姿。おなじみ「ハッブル」宇宙望遠鏡によって撮影されました。NGC 2525は地球からは正面(真上または真下)に近い角度で見える銀河のひとつで、中央の棒状構造やバルジを取り巻く渦巻腕の様子がよく見えています。
私たちは天の川銀河の中にいるので、はるか遠くの銀河を観測すると、その手前にある天の川銀河の星が銀河と重なり合って見えることがあります。この画像でも天の川銀河の星々がところどころに明るく写っていますが、画像の左側中央、NGC 2525の端のあたりに見える輝きは違います。これはNGC 2525で発生した超新星「SN 2018gv」の輝きなのです。
▲SN 2018gv(左)の付近を拡大したもの(Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES team)
ハッブル宇宙望遠鏡は、2011年にノーベル物理学賞を受賞したジョンズ・ホプキンス大学/宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のAdam Riess(アダム・リース)氏らの研究の一環として、2018年2月からSN 2018gvの観測を始めました。ハッブルによる2019年2月までの1年間に渡る観測データをもとに、SN 2018gvが徐々に暗くなっていく様子を再現したタイムラプスが冒頭の画像とともに公開されています。
▲暗くなっていくSN 2018gvのタイムラプス(右のグラフは明るさの変化を示す)▲
Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Kornmesser, M. Zamani, A. Riess and the SH0ES team
2018年1月15に板垣公一氏が発見したSN 2018gvは、白色矮星と恒星から成る連星で起きる「Ia型超新星」だったとみられています。質量が太陽の8倍よりも軽い恒星が進化した姿である白色矮星は核融合反応を起こさずに余熱で輝く天体ですが、連星としてペアを組む恒星からガスが流れ込んだりすることで一定の質量(太陽の約1.4倍、チャンドラセカール限界と呼ばれる)を超えると核融合反応の暴走が起こり、超新星爆発に至ると考えられています。
Ia型超新星はピーク時の明るさがほぼ同じとされていて、銀河までの距離を測る際の標準光源として用いられており、Riess氏がノーベル物理学賞を受賞する理由となった宇宙の加速膨張の研究にも役立てられています。
NGC 2525とSN 2018gvの画像はハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」を使って可視光線と赤外線の波長で撮影され、2020年10月1日に公開されています。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES team
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏