常識を破壊し、新しい「価値観」を創造した5名のGK
人は生きていく中で経験を積み重ね、それによって同じ過ちを回避するものである。
しかしそれは時に、余分な先入観や固定観念に繋がってしまうこともあるだろう。サッカー界でもステレオタイプな見方や考え方は根強く存在するものだ。
今回は、そんな先入観や固定観念、サッカー界で当たり前だった常識をぶち壊し、新しい価値観を創造したGKを紹介しよう。
ホセ・ルイス・チラベルト(パラグアイ)
GKはいわば“縁の下の力持ち的”な存在であるが、チラベルトはその圧倒的な威圧感と存在感によりピッチ上の主役であり続けた稀有な選手である。
内陸国パラグアイの先住民グアラニー族の勇敢な戦士を彷彿とさせる大男は、最後方で味方を鼓舞する一方、隙あらば相手陣内まで駆け上がり、フリーキックやPKでゴールを狙うというプレースタイルを確立。“攻撃型GK”の代名詞となった。
2002年日韓ワールドカップのスペイン戦でFKを蹴るチラベルト
その知名度は国際的にも高く、国内では大統領候補にも挙げられたほど。歯に衣着せぬ発言で物議を醸すこともしばしばだが、闘将カーンと並びサッカー史上「最もカリスマ性のあるGK」の一人となっている。
ロジェリオ・セニ(ブラジル)
ブラジル代表ではマルコスやジーダの控えに終わったが、ロジェリオ・セニは名門サンパウロの守護神として1237試合に出場したレジェンド中のレジェンドだ。
彼の名前を有名にしたのは、何といってもフリーキックである。前述のチラベルトは力強くズドンと突き刺すものだったが、セニの場合は丁寧にコースの隅を狙う、中村俊輔のように正確無比なものだった。
後年には背番号「01」を付けて話題に
そんな彼が現役時代に決めたゴール数はなんと131(フリーキックが62)。これは2位チラベルトの67を大きく引き離すもので、文句なしに歴史上「最もフリーキックに優れたGK」といっていいだろう。
ホルヘ・カンポス(メキシコ)
自作のど派手なユニフォームを着用し、メキシコ代表として129試合に出場したカンポス。
彼の身長は公称175cmだったが実際には165cmくらいのものであった。しかしその小柄な体を驚異的な運動能力でカバーし、1994、1998年ワールドカップに守護神として、2002年大会には控えとして3大会に出場した。
凄まじい跳躍力を見せるカンポス
それだけでも異次元なのだが、さらに彼は俊足を生かし時にFWとしてプレー。通算38得点を記録している。今でいう「二刀流」の先駆け的な存在といえるだろうか。
マヌエル・ノイアー(ドイツ)
バイエルンとドイツ代表で守護神を務めるノイアーは、現代サッカーに“革命”を起こした存在だろう。
長身ながら足元の技術に優れていた彼は、ビルドアップへの参加はもちろん、広大な守備範囲を生かして時にはハーフウェーライン近くまで駆け上がり、GKが「11人目のフィールドプレイヤー」であることを完璧に実践してみせた。
基本に忠実かつより結果が求められる欧州という舞台、また戦術的に発達した近代サッカーにおいて、これほどまでに常識を覆したGKは他におらず、今や世界のトップを目指す若手たちの目標となっている。
レネ・イギータ(コロンビア)
バルデラマ、リンコン、アスプリージャらを擁し、1990年代に南米を席捲したコロンビア代表。そのチームで守護神を務めたのがこのレネ・イギータである。
もじゃもじゃ頭に髭面と、見るからに只者ではない雰囲気を醸し出していたこの男は、その見た目通り、サッカー史上に残る破天荒な選手であった。
今でこそGKに攻撃が求められるのは当たり前となっているが、30年ほど前までGKはゴール前で守りさえすればいいというのが常識的だった。
というのも当時はGKに対してのバックパスが認められた時代(1992年に改正)であり、GKは味方のパスを手で取ることができたのである。
しかし、破天荒を具現化したようなイギータはそんな常識に抗った。味方がセットプレーを獲得すればFKとPKを蹴り、エリア外へと飛び出せばドリブルを敢行した。
その結果、1990年ワールドカップのカメルーン戦ではボールを奪われ失点する大失態も犯したが、彼の姿勢は後のチラベルト、セニ、カンポスらに大きな影響を及ぼすことになった。
さらに、彼は伝説を残した。
今から20年前の1995年9月6日、ウェンブリー・スタジアムで起きたこのプレーである。
GKを務めたイギータは、相手のクロスを俗にいうスコーピオンキックで弾き出したのである。
FKやPK、ドリブルはGKに求められてはいなかったものの、それでもサッカーの一部ではあった。…がこればっかりは意味不明であった。
しかしこの伝説的なプレーは、彼の破天荒さと異次元さを示す象徴的なプレーとして今なお語り草となっている。
ちなみに今年は世界中で新型コロナウイルスが大流行し、コロンビアでも自宅待機が発令された。
すると、イギータのSNSに「外に出るな」という文字が入った画像が大量に送り付けられた。これはもちろんジョークであったが、彼が現在どのように認識されているかを示す微笑ましいエピソードであろう。
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なお、その際にイギータはこのように反応している。「健康が第一さ。自宅で済むのならとどまってくれ」と。
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このスカウトには、ライオンのたてがみのような髪型と美しいプレーにより、ピッチで誰よりも眩い光を放ったコロンビアの英雄「カルロス・バルデラマ」(OMF/トリックスター系統)、非常に広い守備範囲と、意外性に富んだプレーで観客を魅了した「レネ・イギータ」(GK/スイーパーGK系統)、抜群のスピードを誇り、独特のボールタッチと高い身体能力を武器に、ゴールを量産したオクトパス・ハンター「アスプリージャ」(CF/ストライカー系統)が登場します。
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