「標高の高い地下鉄駅」日本一の座は、一時、神戸市営地下鉄の総合運動公園駅から仙台市営地下鉄の八木山動物公園駅に移りましたが、いま再び神戸市営地下鉄に戻っています。ただ新たな「日本一」の駅は、新駅ではなく既存の駅です。

「高さ日本一の地下鉄駅」神戸から仙台に変わるも

 地下鉄というと、名前の通り地下を走る鉄道であり低い所を走るイメージがあります。しかし地形などの都合から、東京メトロ銀座線の渋谷駅が地上3階にあるように、高い所を走っているケースも。なかには、標高100m以上の地下鉄駅も存在します。


八木山動物公園駅の駅舎屋上から仙台の街を一望。「日本一標高の高い地下鉄駅」の表示も見られるが、すでに日本一ではなくなっている(2016年5月、佐々木基博撮影)。

 国土交通省鉄道局監修『鉄道統計年報』で「地下鉄事業者」に分類されている東京メトロや9の自治体のうち「高さ日本一の地下鉄駅」はどこでしょうか。

 神戸市営地下鉄西神・山手線の総合運動公園駅(神戸市須磨区)は、レール面が標高102.74mの地上駅です。この辺りは丘陵地帯で標高が高く、総合運動公園駅の近くでは日本で唯一、「地下鉄」が高架で新幹線(山陽新幹線)を乗り越える場所もあります。

 総合運動公園駅はそれまで「高さ日本一の地下鉄駅」でしたが、2015年、この座を仙台市営地下鉄東西線の八木山動物公園駅(仙台市太白区)に譲ることになります。

神戸の既存駅が「高さ日本一の地下鉄駅」に

 八木山動物公園駅は2015年12月に開業した仙台市営地下鉄東西線の西側の終点で、ホームや線路は地下にあります。ただ、丘陵地帯に位置するため、レール面の標高は136.4m。地下2階の駅からエレベーターで上れる駅舎屋上の「八木山てっぺんひろば」からは、仙台の街を展望できます。

 しかし八木山動物公園駅の「日本一」も長く続きませんでした。神戸市営地下鉄がその座を2020年、およそ4年半ぶりに“奪還”したのです。

「高さ日本一の地下鉄駅」を“奪還”した神戸市営地下鉄、そのカラクリは新線や新駅の開業などではなく「市営化」でした。


神戸市営地下鉄の総合運動公園駅と谷上駅(画像:国土地理院の地図とデジタル標高地形図「京阪神地区」【技術資料D1-No.899】を元に作成)。

 2020年6月1日、相互乗り入れしていた北神急行電鉄北神線(新神戸〜谷上)は神戸市交通局に移管され、「市営地下鉄北神線」に改称。これにより谷上駅(神戸市北区)が「地下鉄の駅」に仲間入りしました。谷上駅はレール面の標高が244mですから、八木山動物公園駅の136.4mより100m以上引き離し、既存の駅ながらも断トツトップに躍り出たのです。

 ただし谷上駅は六甲山西北部の丘陵地にある高架駅です。そのため、より典型的な地下鉄らしい駅という観点で考えるならば、駅も線路も地下にある前トップの八木山動物公園駅の方に分がありそうです。