NECソリューションイノベータは2020年7月9日、新会社となるフォーネスライフを設立し、SomaLogicとの協業を開始することを発表した。SomaLogicが持つ血中タンパク質の解析技術を活用し、個人向け健康支援サービスを展開する。

人の身体を形作る三大栄養素といえば、炭水化物、脂質、タンパク質だ。WHO(世界保健機関)およびFAO(国連食糧農業機関)が1日の栄養摂取目標範囲として10〜15%と定めているように、人が生きていく上で重要な栄養素だが、その種類を厳密に分類すると数千万といわれる。

今回のテーマは血中から検出できるタンパク質。米国のSomaLogicは、2〜3滴の血液から5,000種類以上の血中タンパク質を解析する技術を備えており、研究者が疾患に関わるタンパク質バイオマーカーを検出し、診断に応用する「SomaScan」プラットフォームを開発してきた。SomaLogicは「ゲノム情報では人の変化を見極められない。遺伝子は時間で変化しないから。だからこそ体内で変化するタンパク質に注目した」(SomaLogic CEO, Roy Smythe氏)と説明する。

SomaLogic CEO Roy Smythe(ロイ・スミス)氏

NECグループのNECソリューションイノベータは、SI(システムインテグレーション)サービスやソフトウェア開発を軸に事業展開する企業だが、近年はAIを活用したヘルスケア領域に注力している。上記のSomaLogicは2010年8月からNECと協業関係にあるが、NECソリューションイノベータは今回、新会社のフォーネスライフを設立し、SomaLogicと新たな協業関係を結んだ。

ビジネス的要素はさておいて、ここでは消費者のメリットに注目したい。今回の協業によって、SomaScanとNECグループのIT技術、AI(人工知能)を組み合わせ、個人の健康状態を可視化、疾病リスクの予測、健康な状態を目指すための改善提案やシミュレーション結果を提供する。

SomaLogicの「SomaScan」とNECグループのIT&AIを組み合わせ、健康支援のソリューションを提供する

フォーネスライフは東北大学循環器内科と共同で研究を行い、2020年10月からは再発した循環器疾患、2021年1月には初発の循環器疾患に対応する。2021年度中は糖尿病や肝疾患、2022年度は認知症(名古屋大学神経内科と共同研究を検討中)、肺疾患、腎疾患と範囲を拡大していき、2023年度以降は50以上の疾病リスクが予測可能になるという。

「2020年10月のサービス開始に向けて、人間ドック系の医療機関(2カ所)と交渉中。サブスクリプションモデルを想定し、費用は数万円程度にしたい」(フォーネスライフ 代表取締役 江川尚人氏)

ただし、フォーネスライフが消費者に直接サービスを提供するのではなく、医療機関を通じて利用可能になる予定だ。我々消費者は、本サービスを導入した人間ドックを受診するときや、本サービスを契約した企業の産業医経由で利用することになる。

フォーネスライフ 代表取締役 江川尚人氏

フォーネスライフの取り組みが直接消費者に影響を与えるのは、消費関連企業との共創事業だ。たとえばフィットネスジムなら、疾病リスク低下に向けたパーソナライズトレーニングメニューの開発、美容関連企業なら科学的根拠に基づく化粧品開発などを手がけることで、「生活に密着した価値に貢献したい」(江川氏)とする。

フォーネスライフが提供するサービス内容(水色の部分)

内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省の調査によれば、2018年の段階で約120兆円の社会保障給付金は、2040年に約190兆円まで増大すると予想されている。個人の目線から予防や健康改善の重要性をふまえると、仮に脳梗塞で1カ月入院した場合、5カ月のリハビリ期間を含めて約880万円の出費と、半年間の収入源が発生してしまう(2019年政府統計情報をベースにした推計)。

フォーネスライフの取り組みを通じて、ITの力で疾病リスクを可視化できるのは実に興味深い。「健康は富に勝る」のことわざではないが、我々の健康維持をサポートしてくれるフォーネスライフのソリューションに期待したい。なお、フォーネスライフはSomalogicの開発状況をふまえつつ、新型コロナウイルスの重症化リスク予測や、重症化につながる基礎疾患のリスク予測にも取り組む予定だ。