バットマン役にホアキン・フェニックスを検討していた
映画『レクイエム・フォー・ドリーム』『レスラー』『ブラック・スワン』など、常に刺激的な映画を世に送り出してきたダーレン・アロノフスキー監督が、過去に手掛ける予定だったDCコミック作品「バットマン:イヤーワン」の映画化で、ホアキン・フェニックスを主演に検討していたと、Empireとのインタビューで明らかにした。
「バットマン:イヤーワン」は、後にスーパーヒーローとなるブルース・ウェイン/バットマンの1年目の活躍を、ジェームズ・ゴードン警部補が汚職に立ち向かう姿と交錯させて描いたもの。同作は当初、酷評されたジョエル・シューマカー監督の『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(1997)の後で、高評価を受けたクリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』(2005)より前の2000年公開予定で企画されたものだった。
この時点ではアロノフスキー監督は、『π』『レクイエム・フォー・ドリーム』でしかメガホンを取ったことがなかったが、スタジオは、彼がダークな素材や精神的に錯乱したキャラクターを扱うことができると判断し、白羽の矢を立てたようだ。
だが、アロノフスキー監督の方向性に対して、スタジオは考えを変えたそうだ。「スタジオは、フレディ・プリンゼ・Jrを要求していたが、僕はホアキン・フェニックスを要求していた」と語り、「『ああ、われわれは異なる2本の映画を作っている』と思ったことを覚えている」「わたしが書いた(脚本の)『バットマン』は、彼ら(スタジオ)が作ってしまったものとは明らかに違うタイプの解釈だった」と答えている。この時、アロノフスキー監督は、原作を手掛けたフランク・ミラーとタッグを組んで脚本を執筆していて、その内容は、『フレンチ・コネクション』や『タクシードライバー』に近いものだったらしい。
「僕は、彼(ミラー)のグラフィックノベル作品の大ファンだったので、それは驚くべき出来事だったし、だから当時、彼に会うだけで興奮もしていた。僕の手掛ける『バットマン』の前の作品は、乳首の形がついたバットマンスーツの『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』だった。だから、僕は土台を壊し、新たに作り直そうとしていた。その方向に僕の頭は向かっていた」と明かした。
当時、人々の間では、アロノフスキー監督とミラーの方向性の違いや、スタジオがダークな脚本に商業的な成功を見いだせなかったなど、さまざまな憶測が飛び交った。だが結局、クリストファー・ノーラン監督が『ダークナイト』3部作を手掛け、世界的に注目を浴びることになった。
現在、マット・リーヴス監督、ロバート・パティンソン主演で手掛けられている『ザ・バットマン(原題) / The Batman』は、アクション大作というよりも、ダークなネオノワール(フィルムノワールの要素を持ちながらも、現代的なテーマで描いたもの)作品になるようだ。(細木信宏/Nobuhiro Hosoki)