マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第二十六回 小笠原製粉「キリマルラーメン」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をレビューする連載の第二十六回目。今回は愛知のご当地袋麺、小笠原製粉の「キリマルラーメン」を紹介します。先日、エースコックからキリマルラーメンのカップ麺も発売されていたので、合わせて食べていきます。

「キリマルラーメン」の袋麺(左)とカップ麺(右)

キリマルラーメンは愛知のご当地即席麺

キリマルラーメンは、愛知県碧南市の小笠原製粉が製造販売する袋麺で、愛知県の西三河地方を中心に親しまれています。愛知県では知らない人がいない袋麺で、1995年に販売不振で一度は製造終了したものの、地元の方の復活の要望が大きかったことから2010年に製造を再開し、店頭に並ぶようになりました。

2018年までは「キリンラーメン」という商品名で売られていましたが、メーカー曰く「大人の都合」でキリマルラーメンに改名されました。キリマルラーメンとしては知らなくても、キリンラーメンの名でご存じの方も多いのではないかと思います。

キリマルラーメンは愛知県西三河のご当地袋麺

キリマルラーメンには、もともとの「しょうゆ味」の他に「しお味」「みそ味」があり、それ以外にも「ブンチョウラーメン」や「ペンギンラーメン」、「イルカラーメン」といった動物をイメージした商品や、女性用の「べっぴんラーメン」など、全部で15種類以上の袋麺がラインナップされています。

「しょうゆ味」「しお味」「みそ味」の1食入りは化学調味料不使用

化学調味料不使用や豆乳練り込み麺などの工夫

製造再開後は、販売網を全国に広げたり、ネット販売を活用したりすることで順調に売上を伸ばしており、ご当地袋麺の地位を確固たるものにしています。

また、一部商品で化学調味料などを不使用にしたり、「しょうゆ味」のみだった味の種類を多様化したり、さらには麺に豆乳や米粉を練り込むなどすることで、多くの工夫が加えられています。パッケージデザインは発売当初から同じでクラシックなものですが、中身は進化を遂げているそうです。

内容物は粉末スープと麺のみ

内容物を確認すると...

袋を開けると、内容物は透明のプラスチックトレイに粉末スープと麺がそれぞれ個包装されて入っています。トレイはデザイン性の高い袋の外観を損なわないための配慮か、確かにパッケージのキャラクター「へキリン」のデザインが形崩れしていませんでした。

麺量は80グラムで、サッポロ一番など他社の袋麺は90グラム程度なので、ちょっと少なめです。

また、具が一切入っていないので、自分で用意する必要があります。パッケージでは、卵、ねぎ、もやし、ほうれん草が推奨されています。今回はねぎだけ刻んで用意してみました。

キリマルラーメン袋麺完成 撮影のためスープは少なめに入れています

豆乳の存在を感じる醤油味スープ

スープは醤油味ですが、まるで豚骨スープのような白っぽい濁りがあります。これは豚骨ではなく、麺に練り込まれた豆乳が溶け出しているようで、よく味わうと確かにちょっと甘みのある豆乳の味を感じ取ることができました。

スープは麺に練り込まれた豆乳が溶け出して白く濁っている

醤油味は強めで、胡椒で輪郭を整えています。化学調味料不使用のスープだと、あっさり過ぎて輪郭がぼやけていることがままある中で、今回は不使用なことを感じさせないはっきりした味のスープでした。味がそれなりに濃いので、自分で用意する具が多めでも大丈夫でしょう。

豆乳と米粉が練り込まれた麺は弾力がある

多加水麺のようなつるみと弾力のある麺

麺は、「正麺」や「ラ王」といった袋麺の潮流となっているノンフライ麺ではなく、昔ながらの油揚げ麺が使われています。油揚げ麺としては麺表面につやがあり弾力も強めで、多加水麺のような食感です。

これは米粉が練り込まれていることが大きく作用していると思われ、ずっしりとした重みを感じる独特な麺でした。時間が経過しても比較的に伸びにくいようです。豆乳とともに、米粉による麺の食感がこの商品の大きな特徴となっていました。

エースコック製キリマルラーメンのカップ麺

ローソンでカップ麺も登場!

小笠原製粉製のキリマルラーメンは袋麺のみの展開ですが、最近エースコックとコラボしたカップ麺がローソンで発売されました。最後にこのカップ麺が袋麺をしっかり再現できているのか食べてみたいと思います。

カップ麺には具がたっぷり入っている

袋麺は麺に豆乳が練り込まれているのに対し、カップ麺ではスープに豆乳パウダーが入っていて、豆乳の味を感じられる醤油味に仕上げています。カップ麺は残念ながら化学調味料不使用というわけではないですが、味の再現性は高いと感じました。

また、袋麺のように米粉が練り込まれているわけではないものの、油揚げ麺としては弾力があって、袋麺の麺を再現しようとする意図がはっきり伝わってきます。袋麺ほどの弾力やつるみはないですが、それでも雰囲気は十分に感じられました。

そして、挽肉を模した大豆加工品、かきたま、メンマ、ねぎが入っていて、かなりボリュームがあります。最初から具が入っているのはお手軽で良いですよね。

袋麺の味を再現したカップ麺は、正直あまり再現性があまり高くないものが多いのですが、今回のカップ麺は比較的しっかり袋麺の良さを再現できているように感じました。

豆乳と米粉が印象的な袋麺

愛知県西三河のご当地袋麺、キリマルラーメンを食べてきましたが、単に昔ながらの懐かしい味を楽しむための商品というわけではなく、豆乳の甘みがほんのり感じられるスープや、米粉由来の弾力のある麺に大きな特徴を見出せ、化学調味料不使用とは思えないはっきりした味でおいしい袋麺でした。

愛知のご当地麺といえば寿がきやが有名ですが、パッケージデザイン含めてインパクトでは決して引けを取っておらず、面白い存在です。スーパーの地方フェアやネット通販等で見かけた際には、手に取ってみてはいかがでしょうか。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)