北朝鮮「マスク密輸」の背後に妹・金与正氏の影
北朝鮮は新型コロナウイルスの拡散防止のため、今年1月28日から中国との貿易を全面的に停止し、31日からは国境を完全に封鎖した。だがそんな状況下でも、国家から半ば公認を得て、中朝間の密輸を主導する会社がある。
中国の貿易業者の間では「新型コロナウイルスで国境が封鎖されたが、鴨緑江から鉱物資源を密輸する(北朝鮮の)外貨稼ぎ会社がある」との話が広がっていると韓国デイリーNKの現地情報筋は証言する。社名を知る者は少ないが、権力中枢の大物が承認した「ワク」(輸出許可証)を持っているのではないかと噂されているという。
普通のトイレを使えない
ある中国の貿易業者は、そのような噂が流れていて、探し出して取引したという中国の業者が非常に多いと情報筋に述べている。
「バックに確実な人が付いているのだから、安定した取り引きができるということでつながろうとしている、噂では、その会社の密輸は一度も停まったことがないらしい」(業者)
この会社の正体は、人民武力省傘下の貿易会社である金峰合営会社だ。そしてこの会社に「ワク」を承認したと噂されているのは、金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第1副部長だ。
この会社が取引しているのは鉱物資源だけではない。韓国製のマスクを中国に取り寄せ、商標を外した上で国内に供給しているという。さらには他の医薬品に加え、ちゃっかりと日本製の家電製品も密輸しているという。家電製品は、金正恩党委員長が利用する特閣(別荘)で使用されるものと見られている。
金与正氏は、金正恩氏の動線を管理しながら権力中枢で足場を築いてきたとされる。地方にも頻繁に視察に出る金正恩氏だが、彼には一般人と同じトイレを使うことが出来ないという状況もある。そんな条件下で金正恩氏の動きを取り仕切る事ができるのは、やはり信頼できる身内しかいなかったのかもしれない。
(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳)
それだけに、金与正氏がマスクや兄の特閣の備品を扱う会社のバックにいるという噂が事実であっても、何の不思議もないように思える。ちなみに北朝鮮が海外からマスクを調達するのは、権力者たちの健康を守る以前に、金正恩氏の健康を守るためなのだ。