成田凌さんインタビュー「人間の本質は、10代も50代も変わらない」
『同期のサクラ』『家政婦のミタ』などの人気作品で知られる脚本家・遊川和彦さんが描く、美しく切ないラブストーリー映画『弥生、三月ー君を愛した30年ー』が3月20日(金・祝)より公開されます。
この映画で、30年という長きにわたって主人公・結城弥生(波瑠さん)を愛し続ける山田太郎役を演じた成田凌さんにインタビュー。写真とともにお楽しみください。
「50歳ってじつは若い」と成田凌さん
●離れていても、出会った瞬間に蘇る感情ってあると思う
――成田さんが演じる山田太郎(通称:サンタ)は、10代の出会いから50代に至るまで、30年もの間、たったひとりの女性、結城弥生(波瑠さん)を愛し続けます。50代になってもなお、サンタが想いを寄せ続ける弥生の魅力とは、どんなところだと思いますか?
う〜ん、どうでしょうね。ただまず、劇中に「恋に落ちる瞬間」というのはしっかりありましたね。サンタが高校1年生のときの、とても印象的なシーンですが、そこでサンタは「本当の強さ」みたいなものに出会ってしまったんだと思います。弥生という女性は、正義というものをしっかり心の真ん中に置いていて、責任感もあって、愛もあって…という女性ですが、サンタにとってはそんなにいろいろな理由はないというか。単純に、「心を打たれた」んでしょうね。
――出会いが10代だったから、という特別感はありますか。
そうですね。サンタが目撃した弥生の強さって、学生時代に出会うとなかなか衝撃的だと思います。学生時代って、皆さん一度は経験したことがあるかと思いますが、クラスの雰囲気を押し返してピシャッとなにかを言える人って、まずいないですよね。弥生の場合は、それができるんです。そして、その行動の裏側にはちゃんとした愛情みたいなものがあったりする。高校1年生で、そんな愛情をもっているって相当なこと。まぁそれは、彼女の家庭環境によるところも大きいわけですが…。とにかくサンタはそこに打たれてしまった感じですよね。
――そこから30年…。そんなに長い恋愛、実際にあると思いますか?
あると思いますよ! 30年とまではいきませんが、僕の高校時代からの友達が、幼稚園時代から好きった人と最近ようやく結ばれたんです(笑)。その間、ずっとマックスな状態でその人のことを考えていたわけではないと思いますが、どこかで「好きだな」というのはあって。それで、実際に顔を見て接したときに「やっぱり好きだ!」と思うことって、男女関係なくあると思います。僕自身、久々に高校や専門学校の友達に会うと、今でも仲がよかった理由がわかるんですよね。「そうだよなー」って。会うと一瞬で時間が戻って、感情も戻ってくる。人は生涯をとおして、そんなに大きく変わらないと僕は思っているので、長い恋愛もあると思います。
●「明るい」と思われている人って、つまりは空気が読める人なのかも
――サンタこと山田太郎は、どんな人間だと思いますか。役づくりで意識したことはありますか?
サンタは一言で言えば、純粋で明るい人。難しいところはなにもない、シンプルな人間だと思います。役はオーディションで決まりましたが、遊川和彦監督からは、『王道の恋愛ドラマで言ったら、1番手、2番手の二枚目じゃなくて、“3番手の明るいやつ”っていうのが、サンタのイメージ』と言われ、それを意識しました。
ただ、明るいやつって、つまりは「周囲を明るくしているやつ」であって、それってじつは優しさでもあると思うんです。周囲の雰囲気に敏感で、空気が読めるからこそ、明るく振る舞っているわけですから。ただ、いろいろなところにアンテナを張っていて、いろいろ受け取ってしまうということは、心の弱い部分にも敏感だということ。だから、ストーリーのなかにもありましたが、落ちてしまうときは落ちてしまうんですよね。
――弥生がサンタについて、「病気なんかで差別してくる人間じゃない」という意味合いの言葉を発したシーンも印象的でした。
言ってましたね。この作品の中のサンタは結局、僕がなにをしようと、「弥生から見たサンタ」なんです。僕がいないところで、周囲の人たちが動いたり、言葉を発することで、どんどんサンタという人間ができ上がっていく。とくに弥生のこんな一言があると、サンタという人間がとても立ってきますよね。そうなると、サンタのほんの短い登場シーンでの対応や言葉にも、意味が出てくるんだと思います。
――弥生にビンタされるシーンはインパクトがありました。
そうなんですよ! 僕たぶん、演じた役の半分以上でビンタされていると思う(笑)。2019年に公開された作品はほとんど、そして次に撮る作品でもビンタされるみたい。ビンタされる役柄ばかりお話をいただくので、「僕、どう見られてるの!?」ってちょっと心配になります(笑)。
●人間の本質は、10代も50代もあまり変わらない気がする
――成田さんは、サンタの10代から50代までを演じました。10代はあまり違和感はないにせよ、とくにご自身の年齢の2倍にもあたる、50代を演じるシーンは、難しかったのではないでしょうか。
10代は、ホントに高校生に見えました?(笑)50代は、「大人」ということより、「50歳ってじつは全然若いよな」ということの方を意識しました。今、僕の父親が50歳ちょっとなんですけど、サッカーもしているし、1日に2試合とかやって、めちゃくちゃ走っていて、すっごく元気!!(笑)まぁ、ここ痛い、あそこ痛いは言ってますけど、あんまり自分と遠い存在とも思えないんですよね。
だから、「50歳だから」ということより、こんな経験をしたらこうなるよね、こんな風に生きていたらこうなるよねっていう、映画で映し出されていない時間をどう生きたかっていうことを考えながら演じました。人って、そんなに変わらないと思うんですよ。10代だろうと、50代だろうと、ざっくりで言ったらあまり変わらない。そこにどんな経験をしたか、これをしたかしないか、ケガをしたかしないか…変化は、そういう部分だと思うんです。もちろん、難しく考えればいくらでも難しくできますけど。サンタという人間の「本筋」を拾いつつ、あとはわりと好きに演じました。もちろん、多少白髪交じりにしたり、ヘアメイクはしていますけどね。
――恋愛面でも、大きなベースは変わらない?
そうですね。知らず知らずに積み重なって、変わっていく部分はあるのでしょうが、ちょっと触れられると、わっと気持ちが溢れる…みたいなことは、いくつになってもあるでしょうね。その、さっきの僕の友達もね。この映画を撮ってるときに成就してほしかったなぁ(笑)。
【成田凌(なりたりょう)さん】
俳優。1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。O型。身長182cm。2013年に『MEN’S NON‐NO』専属モデルとなる。2014年から俳優として活動を開始、ドラマ『コード・ブルー ‐ドクターヘリ緊急救命‐THE THIRD SEASON』、ドラマ『人は見た目が100パーセント』など数多くのヒット作品に出演。2017年、映画「キセキ−あの日のソビト−」の出演者で結成されたグリーンボーイズでCDデビューを果たす。2020年、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』、2020年後期NHK連続テレビ小説『おちょやん』出演予定。
●映画『弥生、三月ー君を愛した30年ー』
ストーリー/1986年3月1日。運命的に出会った弥生(波瑠)と太郎(成田凌)。「もし、40過ぎてもで独身だったら、俺が結婚してやるよ!」互いに惹かれ合いながらも、親友・サクラ(杉咲花)を病気で亡くしたことで想いを伝えられずに、別々の人生を選んだ二人。子どもの頃に描いた夢に挑み、結婚相手を見つけ、子どもが産まれ…。しかし人生は順風満帆ではなく、離婚を経験し、災害に巻き込まれ、配偶者を亡くし、あのとき、抱いていた夢は断たれてしまう。希望を見失い、人生のどん底に突き落とされていたとき、30年の歳月を超えて、亡き友・サクラからのメッセージが届く―。『同期のサクラ』『家政婦のミタ』『過保護のカホコ』などの数々の人気ドラマを手がけてきた脚本家・遊川和彦が描く、激動のラブストーリー。
キャスト/波瑠 成田凌 杉咲花 岡田健史 小澤征悦ほか
脚本・監督/遊川和彦
<撮影/八杉和興 取材・文/小川聖子>
この映画で、30年という長きにわたって主人公・結城弥生(波瑠さん)を愛し続ける山田太郎役を演じた成田凌さんにインタビュー。写真とともにお楽しみください。
「50歳ってじつは若い」と成田凌さん
30年間同じ女性を愛し抜く役を演じた、成田凌さんにインタビュー
●離れていても、出会った瞬間に蘇る感情ってあると思う
――成田さんが演じる山田太郎(通称:サンタ)は、10代の出会いから50代に至るまで、30年もの間、たったひとりの女性、結城弥生(波瑠さん)を愛し続けます。50代になってもなお、サンタが想いを寄せ続ける弥生の魅力とは、どんなところだと思いますか?
う〜ん、どうでしょうね。ただまず、劇中に「恋に落ちる瞬間」というのはしっかりありましたね。サンタが高校1年生のときの、とても印象的なシーンですが、そこでサンタは「本当の強さ」みたいなものに出会ってしまったんだと思います。弥生という女性は、正義というものをしっかり心の真ん中に置いていて、責任感もあって、愛もあって…という女性ですが、サンタにとってはそんなにいろいろな理由はないというか。単純に、「心を打たれた」んでしょうね。
――出会いが10代だったから、という特別感はありますか。
そうですね。サンタが目撃した弥生の強さって、学生時代に出会うとなかなか衝撃的だと思います。学生時代って、皆さん一度は経験したことがあるかと思いますが、クラスの雰囲気を押し返してピシャッとなにかを言える人って、まずいないですよね。弥生の場合は、それができるんです。そして、その行動の裏側にはちゃんとした愛情みたいなものがあったりする。高校1年生で、そんな愛情をもっているって相当なこと。まぁそれは、彼女の家庭環境によるところも大きいわけですが…。とにかくサンタはそこに打たれてしまった感じですよね。
――そこから30年…。そんなに長い恋愛、実際にあると思いますか?
あると思いますよ! 30年とまではいきませんが、僕の高校時代からの友達が、幼稚園時代から好きった人と最近ようやく結ばれたんです(笑)。その間、ずっとマックスな状態でその人のことを考えていたわけではないと思いますが、どこかで「好きだな」というのはあって。それで、実際に顔を見て接したときに「やっぱり好きだ!」と思うことって、男女関係なくあると思います。僕自身、久々に高校や専門学校の友達に会うと、今でも仲がよかった理由がわかるんですよね。「そうだよなー」って。会うと一瞬で時間が戻って、感情も戻ってくる。人は生涯をとおして、そんなに大きく変わらないと僕は思っているので、長い恋愛もあると思います。
●「明るい」と思われている人って、つまりは空気が読める人なのかも
――サンタこと山田太郎は、どんな人間だと思いますか。役づくりで意識したことはありますか?
サンタは一言で言えば、純粋で明るい人。難しいところはなにもない、シンプルな人間だと思います。役はオーディションで決まりましたが、遊川和彦監督からは、『王道の恋愛ドラマで言ったら、1番手、2番手の二枚目じゃなくて、“3番手の明るいやつ”っていうのが、サンタのイメージ』と言われ、それを意識しました。
ただ、明るいやつって、つまりは「周囲を明るくしているやつ」であって、それってじつは優しさでもあると思うんです。周囲の雰囲気に敏感で、空気が読めるからこそ、明るく振る舞っているわけですから。ただ、いろいろなところにアンテナを張っていて、いろいろ受け取ってしまうということは、心の弱い部分にも敏感だということ。だから、ストーリーのなかにもありましたが、落ちてしまうときは落ちてしまうんですよね。
――弥生がサンタについて、「病気なんかで差別してくる人間じゃない」という意味合いの言葉を発したシーンも印象的でした。
言ってましたね。この作品の中のサンタは結局、僕がなにをしようと、「弥生から見たサンタ」なんです。僕がいないところで、周囲の人たちが動いたり、言葉を発することで、どんどんサンタという人間ができ上がっていく。とくに弥生のこんな一言があると、サンタという人間がとても立ってきますよね。そうなると、サンタのほんの短い登場シーンでの対応や言葉にも、意味が出てくるんだと思います。
――弥生にビンタされるシーンはインパクトがありました。
そうなんですよ! 僕たぶん、演じた役の半分以上でビンタされていると思う(笑)。2019年に公開された作品はほとんど、そして次に撮る作品でもビンタされるみたい。ビンタされる役柄ばかりお話をいただくので、「僕、どう見られてるの!?」ってちょっと心配になります(笑)。
●人間の本質は、10代も50代もあまり変わらない気がする
――成田さんは、サンタの10代から50代までを演じました。10代はあまり違和感はないにせよ、とくにご自身の年齢の2倍にもあたる、50代を演じるシーンは、難しかったのではないでしょうか。
10代は、ホントに高校生に見えました?(笑)50代は、「大人」ということより、「50歳ってじつは全然若いよな」ということの方を意識しました。今、僕の父親が50歳ちょっとなんですけど、サッカーもしているし、1日に2試合とかやって、めちゃくちゃ走っていて、すっごく元気!!(笑)まぁ、ここ痛い、あそこ痛いは言ってますけど、あんまり自分と遠い存在とも思えないんですよね。
だから、「50歳だから」ということより、こんな経験をしたらこうなるよね、こんな風に生きていたらこうなるよねっていう、映画で映し出されていない時間をどう生きたかっていうことを考えながら演じました。人って、そんなに変わらないと思うんですよ。10代だろうと、50代だろうと、ざっくりで言ったらあまり変わらない。そこにどんな経験をしたか、これをしたかしないか、ケガをしたかしないか…変化は、そういう部分だと思うんです。もちろん、難しく考えればいくらでも難しくできますけど。サンタという人間の「本筋」を拾いつつ、あとはわりと好きに演じました。もちろん、多少白髪交じりにしたり、ヘアメイクはしていますけどね。
――恋愛面でも、大きなベースは変わらない?
そうですね。知らず知らずに積み重なって、変わっていく部分はあるのでしょうが、ちょっと触れられると、わっと気持ちが溢れる…みたいなことは、いくつになってもあるでしょうね。その、さっきの僕の友達もね。この映画を撮ってるときに成就してほしかったなぁ(笑)。
【成田凌(なりたりょう)さん】
俳優。1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。O型。身長182cm。2013年に『MEN’S NON‐NO』専属モデルとなる。2014年から俳優として活動を開始、ドラマ『コード・ブルー ‐ドクターヘリ緊急救命‐THE THIRD SEASON』、ドラマ『人は見た目が100パーセント』など数多くのヒット作品に出演。2017年、映画「キセキ−あの日のソビト−」の出演者で結成されたグリーンボーイズでCDデビューを果たす。2020年、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』、2020年後期NHK連続テレビ小説『おちょやん』出演予定。
●映画『弥生、三月ー君を愛した30年ー』
ストーリー/1986年3月1日。運命的に出会った弥生(波瑠)と太郎(成田凌)。「もし、40過ぎてもで独身だったら、俺が結婚してやるよ!」互いに惹かれ合いながらも、親友・サクラ(杉咲花)を病気で亡くしたことで想いを伝えられずに、別々の人生を選んだ二人。子どもの頃に描いた夢に挑み、結婚相手を見つけ、子どもが産まれ…。しかし人生は順風満帆ではなく、離婚を経験し、災害に巻き込まれ、配偶者を亡くし、あのとき、抱いていた夢は断たれてしまう。希望を見失い、人生のどん底に突き落とされていたとき、30年の歳月を超えて、亡き友・サクラからのメッセージが届く―。『同期のサクラ』『家政婦のミタ』『過保護のカホコ』などの数々の人気ドラマを手がけてきた脚本家・遊川和彦が描く、激動のラブストーリー。
キャスト/波瑠 成田凌 杉咲花 岡田健史 小澤征悦ほか
脚本・監督/遊川和彦
<撮影/八杉和興 取材・文/小川聖子>