「上級会社員」と「下級会社員」で年収格差が広がってるワケ
■社内転職で上級会社員に
2019年は上級国民、下級国民という言葉が流行りました。上級と下級があるのはサラリーマンも同じ。年功序列でみんな一律という時代は終わり、上級か下級かで給料に差がつき始めています。
まず最新の給料をデータで確認してみましょう。国税庁の「民間給与実態統計調査」(平成30年)によると、給与の分布は図の通りです。また、民間の給与総額は前年比で3.6%増。一人当たりの平均給与も2.0%増えています(女性の就労者が増えた影響で増加幅が縮小)。ところが、一方で所得税額も10.2%増えています。給与に占める所得税の割合も4.95%と、過去10年でもっとも高くなっています。これでは給与が増えた実感を持てない人が多いというのも納得です。
昔から高給取りはごく一部にすぎませんでしたが、以前とは中身が違います。若手でも高給を取る人たちが現れ始めたのです。NECは難関学会の論文採用など高い評価実績のある研究職志望の新卒に、年収1000万円以上を提示すると発表しました。IT系だけではありません。くら寿司やオンデーズといった飲食や小売りでも、優秀な新卒を特別に処遇する制度を取り入れています。初任給が横並びだった昔と違い、いまはスタート時点から上級組が存在します。
■インターンが普及したことも見逃せません
この背景は2つあります。まずIT系では、イノベーション重視で企業が大学の研究室とのパイプを構築したがっているから。例えば、卒業生を優遇することでAIの研究室を丸ごと抱えようという戦略です。もう1つ、インターンが普及したことも見逃せません。入社前に社員以上の働きを見せるインターン生がいたら、他社に流出させたくないと考えるのは当然です。
もっとも、新卒1000万円の真の“上級”はレアな存在です。その他大勢は以前と同じで初任給横並びです。ただ、以前は緩やかだったペースを上げて昇給をさせる会社が増えてきたのです。インターンの普及で入社前に教育されていること、20代は転職が容易で、ある程度の給料がないと離職されることなどが理由です。
そして賃金カーブが立って20代の給与が増えた影響で、40〜50代で変化についていけない社員は逆に給与を下げられています。実際、役職定年で給料が下がったり、早期退職が常時募集になって、それとなく退職を促される人が続出しています。上級が役員になり、その後も余禄として他社の社外取締役などを務めて稼ぎまくるのとは対照的です。
この状況の中で、どうすれば給料を増やすことができるのか。おすすめは社内転職。いま、あるいはこれから会社が力を入れるであろう事業部に異動するのです。儲かる事業部は賞与が多く出ます。結果を出せば目立つので、次のチャンスにつながって長期的にも昇給が期待できますよ。
----------
平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
人事コンサルタント
1969年、大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。日本総合研究所などを経て、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。150社以上の人事評価制度改革に従事。『逆転出世する人の意外な法則』など著書多数。
----------
(人事コンサルタント 平康 慶浩 構成=村上 敬)