2代目ホンダ「N-BOX」は2017年に発売された(写真:ホンダ)

2019年3月末、ホンダ「N-BOX」の新車を買った。グレードは「G EX ホンダセンシング」で、色はプラチナホワイトパール。購入した主な理由は、商用だ。


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筆者は、福井県永平寺町エボリューション大使として、モビリティー関連の各種政策に携わっており、同町内に住居を借りて定期的に通っている。その活動の中で、ハンドル形電動車いすの普及に関する協議があり、当初は本田技術研究所の協力で「モンパルML200」という電動カートを3カ月間、貸与していただいた。

その後、永平寺町に隣接する勝山市内のホンダパワープロダクツ販売店で、筆者個人で中古の「モンパルML100」を購入。永平寺町での自主的実証を行い、社会受容性に関するデータ収集を進めている。

あえてNAエンジンを選んだワケ

こうした中で、永平寺町における商用車購入を検討した結果、モンパルを搭載できることが必然であるうえで、「どうしてN-BOXは売れ続けているのか?」を生活の中で検証したいという個人的な思いがあり、N-BOXの購入を決めた。

当初は、モンパル搭載が容易なことでスロープ仕様、北陸の冬季の天候を考慮して4WD、そうなると車重が増えるからターボ車を考えていた。


永平町役場前でホンダ「ML100」を積む様子(筆者撮影)

だが、永平寺町が豪雪となる年は数十年に1度。また、スロープ仕様では本来のN-BOXの使い勝手を判断することに直接、結びつかず、さらにノンターボのVTEC+CVTが巷で高評価、という観点からNA(自然吸気)エンジンの「G EX ホンダセンシング」を選択した。

ホワイトパールの外装色は、「再販価格がほかのカラーより確実に5万円高い」というディーラーセールスウーマンのひと言が効いた。

本稿執筆時点(2019年12月中旬)で、筆者はN-BOXオーナー歴は、9カ月と短い。だが、職業柄これまで数多くの軽自動車を試乗し、また親族が所有する歴代ダイハツ「タント」各車など、N-BOXのライバル車を日常生活の中で乗る機会もこれまで多くあった。そうした経験を踏まえて、N-BOXがなぜ売れ続けているのかを、オーナー目線で考えてみた。

最近、あおり運転の報道から世の中で広く知られるようになった、クルマの「ドレス効果」。高級な輸入車や“オラオラ顔”の大型ミニバンのハンドルを握ると、自分自身の社会的地位が上がったような錯覚を持ち“そこのけそこのけ”というワガママ運転となり、あおり運転につながるという解釈だ。

「負けていない」と思わせる

そこまで極端な気持ちの変化まで至らなくても、クルマに乗ること自体が歩行者や二輪車に対して運動特性上、優位な存在という意識から、多くの人がドレス効果を持つことは明らかだ。

N-BOXには、いい意味でのドレス効果がある。言い換えると「(周りのクルマに対して)負けていない」という気持ちになる。


目線の高さは大型ミニバンに匹敵する。視界もいい(写真:ホンダ)

「負けていない」理由の1つ目は、着座位置が高く、視点が高いこと。交差点で止まった時、トヨタ「ノア/ヴォクシー」「シエンタ」、ホンダ「ステップワゴン」はもとより、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」と比べても、地上からの目線の高さはさほど変わらない。

ミニバン・ヒエラルキー(序列)において軽は最下位にあり、それを“負い目”と感じる人が多いため、ホンダはあえて着座位置を上げている。こうしたドレス効果は極めて有効だと感じる。

また、外から見ても「負けていない」。駐車場でステップワゴンなどと見比べても、さほど小さく感じない。知人数人が「これでも、軽か!?」とビックリしていた。

ボディーサイズで見れば、軽自動車の規格にのっとっているため、タントやスズキ「スペーシア」と差はないのだが、ドレス効果の演出という点で、N-BOXが大きく感じられる。

ドレス効果は、室内の広さに対する感覚にも派生する。シートのスライドやアレンジ、収納スペースでも、Nライバルたちと大差があるワケではないが、実寸以上にドレス効果の影響が大きい。

また、自動車専門誌などが軽自動車の比較試乗をすると、N-BOXは必ずと言っていいほど「走りのよさ」で他銘モデルを圧倒するという記事になる。これは至極、当然のことだ。

ホンダはこれまで、ハイブリッド車やEV(電気自動車)など環境対応車であっても、他社との差別化要因として「ホンダらしい走りのよさ」を主張してきたからだ。

コストをかけた「走りのよさ」

ホンダは、2010年代までダイハツとスズキがほぼ占有していた軽市場に風穴を開けるため、N-BOXを筆頭とする「Nシリーズ」で「圧倒的な走りのよさ」を追及した研究開発を進めてきた。

では、実際に日常生活の中で「走りのよさ」をどう感じるのか?


NAエンジンながら加速は良好。減速もスムーズ(写真:ホンダ)

ひと言でいえば、「走りのつながり感」がいい。具体的には、ブレーキをかけた際にクルマ全体とドライバーが感じる、減速Gのかかり方が絶妙だ。ススゥーグググゥ〜という感じ。減速しながらのハンドル操作で、定常旋回に入れる。また、頭打ち感がなく伸びがいいCVT(とVTECエンジン)の加速感もよく、乗り心地も路面からの突き上げの収まりが早いため良好だ。

この感覚は、次世代車体DNGAに刷新した新型タントでは感じられない。タントの開発担当者が「商品の方向性はホンダとはっきり違う」と言うのだから、当然だ。

別のダイハツモデルの開発担当者は「衝突被害軽減ブレーキ等の安全装置など、製造コストが上がる中、軽自動車は販売価格が(事実上)頭打ちで、その中で走行性能にコストをかけることは難しい」と説明する。

こうしたダイハツの言い分が示すように、N-BOXに見られるホンダの軽開発は、極めて高コストなのだ。N-BOXの価格は、ライバルと比べると割高だと見られる場合が多いが、それでも「(価格が高い割には)儲からない」とホンダ関係者は言う。

モノづくりの高コスト社内体質に対して、ホンダ上層部は定例の決算報告会などを通じて近年中の大幅な見直しを明言している。

そうなると、N-BOXは今が「走りのよさの頂点」になってしまうのだろうか? それとも、先日発表された部品関連子会社の統合や、本社・研究所などの人員整理などによる固定費削減によって、走りのレベルの維持を図るのか?

福井〜東京7時間ドライブも余裕

そんなホンダの未来を考えながら、12月上旬には福井から東京までのロングドライブを行った。


ホンダ センシングにはACC(アダプティブ・クルーズコントロール)も搭載される(写真:ホンダ)

途中、名古屋での仕事で1泊したが、合計7時間ほどの単独運転でも、いい意味でのドレス効果と走りのよさを感じた。さらにホンダセンシングによって、疲れもほどほどだった。

2019年11月には、軽自動車の月間販売台数トップ(登録者含む)の座を27カ月ぶりにタントに譲るも、N-BOXは日本を代表するロングセラーカーであることに変わりはない。当分の間、わが家のN-BOXには、永平寺町での相棒として頑張って働いてもらおう。