橋下徹「野党大騒ぎ"桜を見る会"真の問題点」
■「説明には納得できないが、政権を倒すほどではない」
春の公的行事である首相主催の「桜を見る会」をめぐって、野党やメディアが大騒ぎしている。
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まあ、野党は数打ちゃ当たるの様相で手あたり次第に安倍さんを批判しているけど、世論調査における内閣支持率は、数ポイントほどの減になっているものの、内閣が倒れるような減少幅ではない。
もちろん、安倍さんの説明には「納得できない」が70%程度になっているが、他方、桜を見る会を廃止にするかどうかは賛否が拮抗している。それでいて、内閣支持率は50%弱と内閣が倒れるようなものではなく、野党の支持率が急上昇しているわけでもない。
メディアは、安倍さんの説明に「納得できない」という世論調査の数字ばかりを強調するが、内閣支持率の減少幅がそれほどでもないことには言及しない。中には、なぜ内閣支持率が下がらないのか、これは国民の判断がおかしいんだ、と国民をバカにしたようなコメントをするものもある。
世論調査の結果を見て、僕は日本国民の絶妙な政治感覚というものを痛切に感じるし、ほんと日本国民って賢明だな、とつくづく感心する。だから、僕は賛否が激しく分かれる政治課題について、最後の最後は選挙で決めるべきだし、憲法改正も国民投票で決めるべきだと強く思う。
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桜を見る会に関する安倍さんの説明には納得できない。でも、安倍政権が変わるほどのことでもない。
的確な追及ができずに大騒ぎしている現在の野党を見ると、国民のこの感覚は極めて賢明で、合理的だと思う。
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■野党は「不正」と「不適切」を分けて追及すべき
では、安倍さんの事務所ないしは後援会が主催した「桜を見る会前夜祭」はどうか?
参加者は5000円の参加費を払ったという。
まず、5000円以上の料理がしっかり出ていて、にもかかわらず、参加者には5000円しか徴収していなければ、これは公職選挙法違反の疑いが出る。
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他方、ホテル側が特別なサービスを提供したということであれば、それはホテルから安倍さん側への寄附にあたるが、企業の政治家個人への寄附は認められていない。そうすると、こちらは政治資金規正法違反の疑いが出る。仮に政党支部への寄附ということであれば政治資金収支報告書への未記載となり、安倍さん側も同法違反の疑いが出る。
野党は、この点で安倍さんを徹底追及するなら、しっかりと裏取りをすべきだ。安倍さんが差額を補填したのか、ホテルが特別のサービスを提供したのか。裏取りがないままに、なんとなく怪しいという感覚だけで追及すると、結局のところ森友学園問題や加計学園問題と同じ様相を呈し、多くの有権者はついてこないだろう。
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だから、野党が森友学園問題や加計学園問題であれだけ大騒ぎしたのに、野党の支持率は伸びていない。「安倍政権憎し」の有権者からは支持されるのだろうが、政権交代を実現するには、その程度の支持では足りず、「安倍政権憎し」ではない多くの有権者の支持も得なければならない。今の野党に欠けているのはこの戦略だ。
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まず野党は、不正の話と不適切な話を分けなければならない。不正の話は、政権を倒すことにつながり得る話だ。その代わり、それなりの裏付けも必要になる。
他方、不適切な話は政権を倒すことにはつながらない。ゆえに裏付けもそれほど要らない。ただし、これは政権の姿勢を正す効果が期待でき、襟を正すことをしっかり政権に促して、それに相応しい新ルールや新制度を提案していけば、すぐに野党の支持率が急上昇することはないかもしれないが、じわじわと野党への信頼が厚くなっていくことは間違いないだろう。
今の野党は、裏付けもないのに、不正の話に持ち込んで政権を倒しにいこうとするから、国民がついてこないんだ。不正の裏付けがなければ、不適切な話として、政権を倒すとういよりも政権の襟を正す雰囲気で政権に迫らなければならない。ただちに政権を倒すことにはつながらないが、そのような野党の姿勢は着実に有権者からの信頼を勝ち取るはずだ。
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これらは不正を糾弾し政権交代を迫るものではなく、不適切を改めるための提案というものだ。このような政治家の襟を正す細かなルールの制定は、有権者にしっかり響くと思うね。まあ、野党がこれくらい厳格に政治家の襟を正す新ルールを提案するなら、企業団体献金を禁止したり、領収書抜きの年間1200万円の経費である文書通信交通滞在費を改めたりする新ルールを提案して成立させてほしいよ。こういう肝心なことについては、野党はやらないんだよね。
■安倍首相側は「ホテルの明細書」は出すべきだ
安倍さんも、政治行政をよりよいものにしていくために、野党に対して応じるべきところは応じるべきだ。
一つは、ホテルの明細書の提出だ。
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今回の安倍さんの前夜祭においても、ホテルは赤字営業はできないから、何らかの試算をやっているはずで、もし安倍事務所ないしは後援会がその明細書を持っていないというのであれば、安倍さんは、ホテルから明細書を出してもらうようにホテルに働きかけをすべきだ。
野党はこの点を確認すべきである。
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安倍さん側が参加者から参加費用を徴収し、参加者に対して領収書を交付する。安倍さん側がホテルにパーティー費用を払い、ホテルから明細と領収証をもらう。そしてこのお金のやり取りは全て政治資金収支報告書に記載する。
これが政治家が後援会行事を行うときのあるべき姿だ。
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野党はまずは自ら裏付けをとる努力をし、裏付けがとれれば不正を糾弾し、場合によっては政権を倒す追い込みをかける。裏付けが乏しければ、政権を倒す追い込みではなく、襟を正す提案をしていく。これが有権者の支持を広く得るための野党の戦略だと思う。
そしてこんなことよりも、政権が倒れるかもしれないほど重大な問題は、役所による招待客名簿の文書廃棄と、それを正当化するための文書廃棄ルールの事後的な変更の方なんだよ。
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(ここまでリード文を除き約2400字、メールマガジン全文は約9500字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.177(11月26日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【桜を見る会問題(1)】前夜祭での「供応」などが問題じゃない。野党の追及ポイントはここだ!》特集です。
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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)