あのバフェットが投資する米国高級家具の正体
RHの旗艦店・ニューヨーク店の内観(写真:RH)
“投資の神様”バフェットが買った銘柄は、米国株式市場でつねに話題になる。その中でも、2019年9月に投資を開始した高級家具小売りのRHという銘柄が異色だ。
「今さら、家具屋さんに投資するの?」と思う人も多いはずだ。バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは長期投資家の代表格。継続的な成長が期待できて、そこから生み出されたキャッシュを裏付けに配当する銘柄を好む。バフェットはRHのどこを気に入ったのだろうか?
増収増益を続けるRH
同社はレストレーション・ハードウェアの社名で1979年に創業した。ビンテージ家具の金具が発祥だ。
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現在のゲイリー・G・フリードマンCEOが、高級家庭用品のウイリアムズ・ソノマで積んだ経験を生かし事業を発展させた。
業績は増収増益を続けており、営業利益率は10%台と小売業の中では高い。さらに継続的に利益率は改善される見通しだ。直近の2019年1月期は売上高約25億ドル、営業利益2.5億ドルとなっている。
事業内容をみると、商品は高級だがクラシックなものが多い。家具、照明、テキスタイル、ベビー&子供向けなど幅広い。季節ごとに「コレクション」としてコンセプトを統一したカタログも充実だ。最新版の「スキーハウス」では、リゾートの別荘地のイメージで商品を提案する。
店舗は宮殿、高級ホテル、美術館のような豪華な建物で、「ギャラリー」と呼んでいる。リースした物件を独自にデザインして改修するモデルだ。旗艦店のニューヨーク(トップ写真)は廃墟同然の建物を、中央にガラス張りのエレベーターを設置したユニークなデザインで仕立てた。ニューヨークだけで年間1億ドル以上の収益を稼ぎ出す。
そのほかシカゴ、ハリウッド、ボストンなどアメリカの主要都市を中心に70店を展開する。カフェや屋上レストランを併設し、富裕層向けに唯一無二の空間を演出するのが特徴だ。さらにアウトレット店を展開しているところも見逃せない。豪華なギャラリーで付加価値の高い商品を売る一方で、倉庫のような簡素なアウトレット店で在庫リスクを軽減しているわけだ。
RHの何が違うのか
こうしてみると、明確なターゲットとコンセプト、それに合わせて定期的に更新される商品やカタログ、店舗づくり在庫管理の工夫。RHはオーソドックスな高級小売店の経営を徹底し業績を伸ばしている。フリードマンCEOは「比べるものがないブランド、オンラインで複製できない顧客体験、コンセプトから顧客まで管理した統一性」を重要なポイントと強調する。
最近の小売業は、Eコマース、SNSに対応しなければアマゾンに負けてしまうという風潮が支配的だ。しかし、RHの例が示すように重要な点はそこだけでない。バフェットは「オーソドックスな経営で差別化したブランドを確立した企業は、アマゾンに簡単に負けないよ」といっているのかもしれない。
※RHは『米国会社四季報2020春夏号』(2020年4月発売予定)に掲載予定。