宇佐美が輝きを取り戻した理由に迫る【写真:Getty Images】

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今夏G大阪に復帰した宇佐美、リーグ3戦連発と絶好調

 ガンバ大阪FW宇佐美貴史が、“復活”を遂げている。

 10月からの出場した公式戦6試合6得点で、現在3試合連続ゴール中。特に11月に行われた第30節湘南ベルマーレ戦(3-0)の2発と第31節大分トリニータ戦(1-2)は、「This is 宇佐美貴史」というような精度の高いシュートで決め切った。リーグ終盤戦に差しかかって好調を維持する要因はどこにあるのか。大阪府吹田市内で練習に励む宇佐美を直撃し、輝きを取り戻した理由、高難度のシュートについて、宇佐美自らが“解説”した。

 誰もが宇佐美の“帰還”を確信した。

 11月3日の湘南戦、1-0で迎えた前半アディショナルタイム。中央でMF矢島慎也とのパス交換から徐々に加速すると、左のMF遠藤保仁へパス。遠藤が再び宇佐美へ返し、ペナルティーエリア内で持つと、DFを1人かわして小さな振りで強烈な弾道のシュートを突き刺した。さらに、後半5分には自陣からのクリアボールを相手と競り合いながら拾うと、ドリブルで約25メートル突破。今度は左サイドから、再びほとんどモーションのないコンパクトな左足の振りでファーサイドに決めた。

 思わず「シュート上手い……」という言葉が漏れてしまうような2発。宇佐美としては、2ゴールとも「狙い通り」だったようだ。

「ヤットさん(遠藤)が返してくれたのがすべて。コースとかシュート、ヤットさんが返してくれた以降は狙い通り。慎也とボール交換している時はイメージなかったけど、相手の表でボール回しているから『そろそろ真ん中にぐんっと進んでいきたいな』という時にヤットさんがふわっと来てくれたから、出したら返してくれて、狙い通り」

 “宇佐美劇場”はこれだけで終わらない。2点目、左足でのシュートはファーサイドへの一撃。毎日、居残りでシュート練習を行い、20〜25本打ち込む。練習を重ねるなかで、左サイドから左足のシュートはニアサイド、ファーサイドを絶対に決め切る。児玉新コーチと対峙する形、当たり、振りを細かくチェックしながらイメージを思い描く形、何本も何本も確認する。湘南戦の2点目は“練習通り”だった。

「ちょっとファウル気味かなと思ったけど、1対1で。アデ(アデミウソン)はちょっと見えたけど、アデが見えた時はパスすんの遅いと思った。縦に突破して、アデ(にパス)かなという選択肢を加えたなかで、打ったら入ると思った。左足でも振れば入ると思った。1点目はニアやったから。(練習では)あそこ(ファー)とニアは絶対。むしろニアのほうがフィーリングはめっちゃいい。ニアにズドン。大分戦は練習終わった後のシュート練習では何十本と決めてるような形やった。縦に突破して近いほう」

“復活”を遂げた理由…「これを武器にするほかない」

 そう話す大分戦のシュートは、左サイドからニアに打ち込んだ火を噴くような一発。湘南戦と合わせた3ゴールは、いずれも「This is 宇佐美貴史」というべき一撃だっただろう。ただ意外なことに、宇佐美自身はこれまで自分の「シュートが上手い」ことを強みだと感じていなかったという。

「(自分の)シュートが強く武器であるとは思っていなくて。振りが速いとかシュートが上手いとか言われてきたけど、聞き流していたところもあったし、自分としては10番的な(トップ下のような)スタイル、多彩さというのも求めていたから。でも、(G大阪に)帰って来てシュート練習しても、自分のシュートの弾道とかキレはやっぱり……手前味噌やけど、自分が一番シュート上手いと思ったし、これを武器にするほかないと」

 針に糸を通すような正確なパスでゴールを演出したり、吸い付くようなトラップで局面を打開したり、あるいは、突飛なアイデアで攻撃の形を作ったり……。このようなプレーが自身に要求されていると感じていた。

 二度目となったドイツ挑戦ではアウクスブルク(16〜17年)とデュッセルドルフ(17〜19年)に所属。ブンデスリーガで中位以下のクラブでは「90分間、無駄走りも含めてどれだけタフに走れるかというところしか求められていなかった」という。

 だが、G大阪に復帰後は違った。宮本恒靖監督からも“救世主”として、とにかくゴールを求められた。

「ツネさんからは『(足が)振れる位置でボールを受けることを意識して欲しい』と言われて。自分で(シュートが上手いと)認めた部分もあったし、周りから言われたことも、もう一回体にすんなり入れた。シュートは意識していないといざという時に強気な決断ができひんかったりもするし、そういうことを念頭に置いてプレーしていると、いろいろ変わってくる場面もある。そのあたりは改めて人にないものを打てる、人に打てないシュートを打てる強みがあることをしっかり自覚した。いい方向に変わり出している感じかなと思いますね」

 ようやく自身で認めた「シュートが上手い」ということ――。その自信、自覚こそが宇佐美貴史“復活”の原動力となっている理由だ。

 23日の第32節ベガルタ仙台戦(2-0)でも、パスカットした宇佐美が右サイドで独走し、最後はGKとの1対1を決めた。このシュートも小さな振りで力強い弾道で射抜いた一発。シュートという武器を纏い、日々磨き上げる宇佐美は相手にとって今まで以上に脅威の存在となっているはずだ。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)