30年以上にわたってTVのニュース番組を7万本以上のビデオテープに録画し続けた女性
TVでは毎日大量のニュース番組が放送されていますが、アメリカ・フィラデルフィアに住んでいた女性は30年以上にわたってTVのニュース番組を24時間体制で録画し続け、実に7万本もの貴重なベータテープおよびVHSテープを残しました。
'Recorder': Meet The Woman Who Recorded 70,000 Tapes Of American News | Here & Now
2012年に亡くなった元共産主義活動家のMarion Stokes氏は、30年以上にわたって24時間体制でCNN・FOXニュース・MSNBCなどのニュース専門放送局や、その他のニュース番組を録画し続けた女性として知られています。Stokes氏が残したテープ総数は7万本にも上り、これらのテープは近年のアメリカにおけるニュース番組を記録した、貴重な歴史的資料の宝庫として認識されているとのこと。
Stokes氏のテープは、大量のウェブアーカイブやメディア資料を保存するインターネットアーカイブによって引き取られました。また、Stokes氏の密かな活動はマット・ウルフ監督のドキュメンタリー映画「RECORDER: The Marion Stokes Project」に取り上げられており、YouTubeでトレーラーが公開されています。
RECORDER: The Marion Stokes Project - official US trailer - YouTube
古めかしいレコーダーにテープをセットするStokes氏。
録画しているのはTVのニュース番組です。画面の中には1979年11月に発生した、イランアメリカ大使館人質事件を報道するキャスターの姿が映っており、「DAY 1」というテロップが出ています。Stokes氏がニュース番組の録画を始めた契機がこの事件だそうで、時間と共にニュースで伝えられる物語が次第に変化していく様子を見て、放送されたニュースを録画して後世に残す活動を始めたとのこと。
録画されているのは実に多くの放送局のニュース番組で……
相撲のニュースなども含まれています。
何かに突き動かされるように録画を続けるStokes氏の後ろ姿。
Stokes氏は30年にわたりニュース番組の録画を続け、7万本ものテープを残しました。
その一方で、Stokes氏の個人的な情報についてはそれほど多くわかっていません。
大量のテープを保存するため、実に9つもの施設と3つの貯蔵ユニットを所持するなど、ニュースの録画を残すことについて大きな執着を持っていたことは確かです。また、Stokes氏は毎日11紙もの新聞を購読し、それらを保存することも続けていました。
かつて共産主義の活動家だったStokes氏は、若かりしころにTVの討論番組などに出演したこともありました。しかし、自身のプライバシーを優先するために1960年代から活動家としては一線を退いており、その後は表舞台に姿を現わしませんでした。
ウルフ監督はドキュメンタリーの制作にあたり、Stokes氏の息子であるMichael Metelits氏や、Stokes氏の秘書であったFrank Hileman氏にインタビューを重ねています。
ウルフ監督はStokes氏が前例のない「レコーダー」であったと共に、非常にユニークな先見の明と家族の物語を持っていたという点にも興味を持ったとのこと。
TV番組の中で舌鋒鋭く論戦を交わすStokes氏は……
FBIの捜査対象になることもあった模様。
Stokes氏は自身のプロジェクトについて秘密主義を貫いており、生前は大量のニュース番組を24時間体制で録画するという壮大なプロジェクトについて、外部の人間には全く漏らしませんでした。テープの購入に関しても慎重に行い、住んでいたアパートではテープが来客の目に付かないように隠していたとのこと。
TV局といえども全てのアーカイブを保持することは難しく、Stokes氏が記録を開始した時点で、すでにTV局は大量のアーカイブを破棄していたとウルフ監督は指摘。
また、Stokes氏が残した記録は単にニュース番組の記録だけでなく、合間に挟まるCMや公共サービスについての発表、ゲストが登場してのトークショー、コメディ番組なども含んでいます。ウルフ監督はこうした記録が、さまざまな文化や歴史についての洞察を与えてくれると述べています。
「RECORDER: The Marion Stokes Project」はアメリカの映画祭などで上映されていますが、日本での公開については未定です。