空席だらけの会場が、4年後には満員。太田雄貴が挑むフェンシングの“エンタメ革命”
2013年の「全日本フェンシング選手権 決勝戦」。日本一を決める大舞台にも関わらず、空席が大きく目立っていた。
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しかし、その4年後の2017年、18年は2年連続で満員御礼。
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その背景には、日本フェンシング協会の太田会長が「フェンシング界の発展のためにも、なんとしてもやりたい」と挑み続ける“革命”があった。
◆「オリンピック競技から外されるかもしれない」
太田は、フェンシングが置かれている状況に、危機感を抱いていた。
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「今のままだと“衰退競技”になってしまうと思っていて。フェンシングがそもそもオリンピック競技から外されるかもしれないという危機感を持っています」(太田)
オリンピックですら空席が目立ち、人気は停滞。その状況を打破するべく、太田は最新技術を駆使することで、誰にでも分かりやすい競技に変革し、人気向上に努めようとしていたのだ。
そして、その成果を試す機会として、昨年2018年12月の「全日本選手権決勝」に照準を絞っていた。
昨年も、“非日常空間”を演出するため、普段ミュージカルなどが行われる東京グローブ座を会場に選んでいた。
「最高のエンターテイメントを実現しているのは、ディズニーみたいなところだと思うのですが、どれだけ非日常的な時間と空間をつくってあげるかということだと思っています。
この場所だったら、テクノロジーと演出面を頑張ったら、かなり面白いことになるのではないかなと思いました」(太田)
会場にLEDを設置することで、得点が入った選手側の空間を赤や緑の色で光らせる演出を実施。
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また、フェンシングは選手の表情がマスクによって見えにくいため、心拍数をモニターに表示することで選手の感情を伝えるなど、競技を分かりやすく、かつエンターテイメントとして“魅せる”工夫を行った。
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さらに、2020年東京五輪での実用化を目指しているという、剣の動きを可視化する「Visualized」。
フェンシングは、剣の動きが速すぎて、どちらの選手がポイントを取ったか、分かりづらい難点がある。そこで、最新の画像解析を駆使し、画面上の剣の先に色をつけ、リアルタイムで映像化する仕組みを開発しているのだ。
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◆ポスター写真は篠山紀信氏が撮影
まもなく11月2日(土)、3日(日)に行われる「全日本フェンシング選手権大会」。
カメラマンの篠山紀信氏が撮影した写真をポスタービジュアルに採用したり、10月に新しく生まれ変わった渋谷公会堂を会場にしたりするなど、今年も“魅せる”仕掛けを用意している。
また、剣の動きを可視化する「Visualized」を、世界で初めて試合中にリアルタイムで導入する予定だ。
「昨年よりも、さらにエンターテイメント性に富んだ大会が実現できると考えています」(太田)
全ては、フェンシングというスポーツをエンターテイメント化するため――。太田が挑む“革命”は続いていく。