Uber配達員、17人で組合結成 「組合加入のメリット、結果で示したい」
フードデリバリーの「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達員が10月3日、労働組合を結成した。東京都内で開かれた設立総会には17人が参加。規約が全会一致で承認されると、拍手が上がった。
その後、執行委員長など役員を決定。執行委員長に就任した前葉富雄さん(29)は「私にできることは限られているが、皆の力を借りながら、ウーバーイーツユニオンをよくしていきたいと思っています」とあいさつし、設立趣意書を読み上げた。
ウーバーの配達員は、好きな時間に働いて報酬を得られる「自由な働き方」が注目されている一方、個人事業主のため労働基準法などの保護はない。これまで配達員は、支援する弁護士有志やユニオンなどと共に、2019年6月から3回にわたって「ウーバーイーツユニオン準備会」を開き、ウーバー側への要求事項などを検討してきた。
海外では、こうしたインターネットを通じて仕事を受けて自由に働く「ギグワーカー」が賃上げなどを求めて立ち上がる動きが広がっている。
菅俊治弁護士は、ノルウェーで配達員が労働組合を作り、会社側と賃上げなどの協約を締結した事例を紹介。「(ギグワーカーの)労働組合結成の動きは、日本では初めて。大変画期的な出来事で、この取り組みを大事にしていきたい」と話した。
●「傷害補償制度」出来るも、補償額に上限Uber Eatsは10月1日から、全ての配達員を対象に「傷害補償制度」の提供を開始すると発表した。三井住友海上火災保険と共同で作ったもので、事故にあった際に、治療費(上限25万円)、入院費(1日7500円で最大30日)、死亡見舞金(上限1千万円)などが支払われる。
設立準備会を支援してきた川上資人弁護士は「自分だけではなく、仲間のためにも動いている配達員の動きを、会社側が無視できなくなったのではないか」とこれまでの活動を評価した。
ただ、補償されるのは、配達リクエストを受けて店に商品を受け取りに行く時点から配達が完了する時点までの間の事故に限られ、治療費にも上限がある。
前葉さんは「配達後に次の注文を受けるため、配達先から注文の多い繁華街まで移動することもある。その間もお金は発生しないが、アプリはオンラインにしていて働いているともいえる。その間に事故を起こしても、お金が出ないというのはどうなのか」と話した。
川上弁護士は「医療費が全額補償される労災保険に照らすとまだまだ不十分」と指摘。副委員長の鈴木堅登さん(27)も「重傷で入院したら、治療費はすぐオーバーするのではないか」と懸念を示した。
●組合員をどう増やすか今後、組合員をどう増やしていくのか。前葉さんは「今は組合加入にどのくらいメリットがあるのか、具体的には示せていない。配達員が集まって会社側に要求すれば、効果があるということを、結果を出すことで知らせていけたらいいなと思う」と述べた。
また、アプリのバグや不備についても、Uber Eats側に伝えていきたいという。
「走った距離とアプリ計算が違って、報酬が実際よりも少ないことがあった。また、頻繁にアプリにバグが発生しているが、ウーバー側からアナウンスがないので、配達員は現場で混乱してSNSで情報交換して解決している。こうした不備について、ウーバー側に知ってもらいたい」
●Uber Eats「彼らのニーズと真摯に向き合っていく」配達員の労働組合結成について、Uber Eats側は弁護士ドットコムニュースの取材に以下のようにコメントした。
「多くの配達パートナーがUber Eatsの仕事のフレキシブルさに価値を感じてくださっている中で、同時にこの個人事業主という働き方の質と安全性を高めるために、日々取り組んでおります。
ちょうど3日前(編注:10月1日)には、従来の対人・対物賠償責任保険に加え、配達パートナーご自身の怪我などを補償する傷害補償制度の提供も発表いたしました。
我々は常に、Uber Eatsにおいて配達パートナーにより良い体験をしていただく方法を模索しており、今後も彼らのニーズと真摯に向き合っていく所存です」