ゴールゲッターは多いに越したことがない…/原ゆみこのマドリッド

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「代表戦が日曜に終わると余裕があっていいわよね」そんな風に私が実感していたのは火曜日、セルヒオ・ラモスがこの金曜からアマゾンプライムで配信開始となる自身のドキュメンタリービデオ・シリーズのプレゼン記者会見を実施。その模様がマルカ(スポーツ紙)で中継されているのを見た時のことでした。いやあ、こちらの撮影を巡っては、昨季のCL16強対決アヤックス戦2ndレグ、アムステルダムでの1stレグで累積警告となる3枚目のイエローカードを受けたラモスが華々しい看板のかかったサンティアゴ・ベルナベウのパルコ(貴賓席)で観戦する様子が予定に入っていたことでひと悶着あったんですけどね。

折しもレアル・マドリーが逆転敗退を喫したのとも相まって、当時はこの試合に合わせてわざと出場停止を仕組んだことやら何やら、かなり批判されていたものの、喉元過ぎれば熱さを忘れる?丁度、今は当人がスペイン代表167試合出場を果たし、カシージャス(ポルト)の最多記録に並ぶという、胸を張ってお祝いできるタイミングとあって、日曜深夜にヒホン(スペイン北部のビーチリゾート)から戻り、火曜の午前にはカルバハルと共にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場ジムで汗を流した後、最近、マイブームになったような帽子ファッション(https://bit.ly/2kaaVLE)で意気揚々とラモスがマスコミの前に姿を現したのも当然だったかと。

まあ、そのドキュメンタリーの方は日本でも視聴可能のようなので、興味のある方はアマゾンプライムで探してみるといいと思いますが、実は彼がキャプテンを務めるスペイン代表も6月には骨肉腫を患った9歳の娘さんを最後まで側で看取ろうとルイス・エンリケ監督が辞任。アシスタントだったロベール・モレノ監督が引き継ぐという不測の事態はあったものの、このユーロ2020予選は絶好調なんですよ。いえ、もちろんいつもながら、55カ国が参加するヨーロッパの予選は強豪が2つ入ったグループができる方が珍しく、しかも本大会には2016年に続いて24カ国が出場ということで、2位までが出場権をゲット。

今回、スペインのいるグループFは全勝で首位に立つ彼らの下、スウェーデン、ノルウェイ、ルーマニアが星を潰し合っているため、それ以外の相手と対戦する時には勝利は当たり前、どこまでgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)できるかの方が焦点になったりするんですが、日曜のフェロー諸島戦がどうだったか、お話していくことにすると。いやあ、実はこの日、スペインのキックオフ前にはたまたま、GOL(ゴル/スペインのスポーツ専門民放)で1節につき、2カードがオープン放送になる枠にマドリッドの2部の弟分、アルコルコンとサラゴサのリーガ戦が当たったため、午後6時半から、延々とTVの前に座り続けることになった私だったんですけどね。

収穫は普段、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)では流れることのない2部の試合を今季、初めて見られた上、開幕から先発を続けている香川真司選手の活躍ぶりをしっかり自分の目で確認できたこと。いえ、自爆気味に前半ドワメナとルイス・スアレスにゴールを許し、終了間際にもビガライに決められ、0-3と、先週は1部のお隣さん、レガネスとのプセラ杯(親善試合)でスコアレスドロー。PK戦勝利でトロフィーを勝ち取ったアルコルコンがあっさり負けてしまったのは残念だったんですけどね。自身でゴールを挙げることはなかったものの、中継役として常にプレーの中心となり、CKやFKのキッカーとしても香川選手が働いていたサラゴサはこれで3勝1分けとして、2位に上昇。

当人もプレゼンで誓っていた1部昇格の目標達成にいいスタートを切ったように見えましたが、この日のお昼には先週、ウエスカ入団が決まった岡崎慎司選手もエル・アルコラスでのスポルティング・ヒホン戦で後半39分にピッチに入り、リーガ2部デビューを実現。チームが1-0で勝利するのに貢献していましたが、土曜にデポルティボがアルバセテに0-1で負けていたのは柴崎岳選手が日本代表に招集され、プレーできなかったせいなのかどうかはよくわかりません。

おっと、話が逸れてしまいましたが、スポルティングがウエスカ(スペイン西部の内陸の町)遠征でホームを留守にする間に行われたエル・モリノンでのフェロー諸島戦に戻ると、この日のスタメンはモレノ監督が木曜のルーマニア戦から、代表出場記録更新を目指すラモスとロドリゴ(バレンシア)を除き、9人を変える大刷新ぶり。今回の相手も5人DF体制で守りを固めてきたんですが、先制点は意外と早く決まります。ええ、前半13分にはエリア前でもつれ合って倒れたチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)が地面から押し出したボールをオジャルサバル(レアル・ソシエダ)が受け、最後はロドリゴが押し込んで、ゴールにすることに成功。

ただそれ以降は低調でラモスなどもエリア外から、積極的に狙っていったんですけどね。追加点を取ることはできず、1-0でゲームは後半に。すると5分、父親がどちらもブラジルのサッカー選手で子供時代、ビーゴ(スペイン北西部)で一緒に過ごして兄弟のように育ったという、仲の良いチアゴからのパスを受けたロドリゴが、今度は敵DFの足に当たって軌道が変わるシュートで2点目を決めてくれたとなれば、もしやアトレティコが逃した魚は大きかった?

いえ、8月中には1度、パテルナ(バレンシア郊外)の練習場でチームメートに自ら別れを告げ、移籍秒読みと言われていた日々もあった彼ですけどね。結局、コレアのミラン行きが実現しなかったため、いつの間にか、ロドリゴ入団の話もなくなっていたんですが、当人も試合後、「Solo puedo decir que estoy bien, estoy contento donde estoy/ソロ・プエド・デシール・ケ・エストイ・ビエン、エストイ・コンテントー・ドンデ・エストイ(ボクに言えるのは自分は大丈夫で、今いるところに満足しているってことさ)」とすっかり、気分は切り替わっていることをアピール。

まあ、ロドリゴを獲らなくても開幕3連勝、滅多にない単独1位の高みにこの2週間、君臨しているアトレティコですから、今のところは誰も悔やんでいたりはしないんですけどね。ついでに言えば、代表戦明けにはバルサ戦に挑むバレンシアとあって、エースがゴールづいてきたのは喜ばしい限りだったりするんですが、それはそれ。今はフェロー諸島戦の続きで、ようやく5試合ぶりに先発に復帰したGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)も27分にはこの試合唯一とも言える、敵の危ないシュートをセーブして面目を保つと、38分にはラモスが前売りチケットは2万程しか裁けなかったものの、当日の入りもあって、かなりの盛況を呈したスタンドからオベーションを浴びながら、ウナイ・ヌニュネス(アスレティック)と交代となります。ちょっとスコアは物足りなかったものの、これで私も今日は店仕舞いかと思いきや…。

とんでもない!どうやら代表では16試合で10得点、抜群のゴール効率を誇る途中出場のパコ・アルカセル(ドルトムント)が黙っていられなかったようで、45分にはチアゴのパスを流し込むと、ロスタイム3分にも「Con Gayá ya tuve muchos partidos en Valencia, me dio muchas asistencias/コン・ガジャ・ジャー・トゥベ・ムーチョス・パルティードス・エン・バレンシア、メ・ディオ・ムーチャス・アシステンシアス(ガヤとはバレンシアで一緒に沢山プレーしていて、何度もアシストを受けた)」という左SBのクロスを頭でネットへ。いやあ、今季も彼が2年目となるブンデスリーガでゴールを入れ続けているのは知っていましたが、ふっと気づけば、来週火曜、CLグループリーグ1節のドルトムントの相手は当人のもう1つの古巣、バルサ。

その日はベンチで見学していたブスケツやジョルディ・アルバもチェックを入れていたんじゃないかと思いますが、おかげで4-0というゴレアダのスコアでスペインが試合を締めくくれたのは良かったかと。代表200試合出場が目標というラモスと入れ替わり、初招集だったウナイ・ニュネスもデビューしたことで、今回のメンバーでプレー時間がまったくなかったのは第3GKのパウ(ベティスからローマへ移籍)だけでしたしね。

正規の最高責任者として、2連勝を飾ったモレノ監督は「No hay ningún titular indiscutible/ノー・アイ・ニングン・ティトゥラル・インディスクティブレ(不動のレギュラーは1人もいない)」と言っていたものの、どうやらこの2試合でレベルの高いチームと低いチーム用の選手構成が垣間見られのでは?いよいよ、予選突破が確定する可能性が高まってきた10月のノルウェイ、スウェーデン北欧遠征2連戦では今回、負傷でいなかったモラタ(アトレティコ)やイスコ(マドリー)が戻って来られるのかも焦点になるかもしれません。

そしてスペイン代表は日曜夜に解散し、選手たちもそれぞれのチームに帰って行ったんですが、何せユーロ予選は火曜まで試合がありますからね。各国代表への出向選手が13人と多いマドリーなど、月曜にはクロース(ドイツ)、モドリッチ(クロアチア)、ベイル(ウェールズ)、クルトワ(ベルギー)が、8人のアトレティコもオブラク(スロベニア)がプレー。この6節最終日の火曜にもそれぞれ、バラン(フランス)、ジョアン・フェリックス(ポルトガル)が出場している上、ブラジルやウルグアイ勢は木曜まで帰還しないというのはインターナショナルマッチデーのお約束のようなものですが、やはり気になるのは負傷により、代表には行かず、この週末のリーガでの復帰を目指している選手たちかと。

そんな中、いいニュースがあるのはマドリーで今週は開幕直前に太ももを痛め、まだ公式戦デビューをしていないアザールだけでなく、ハメス・ロドリゲスも全体練習に参加。何せ、土曜のポルトガル戦、残り3分程出場しただけのヨビッチがケガをして、早々にセルビア代表から引き揚げてきたなんて話もありましたからね。ここまでリーガ3試合で初戦のセルタ相手にしか勝てず、バジャドリー、ビジャレアルと2連続引き分けしているジダン監督にとっては、使えるアタッカーの数が増えるのは心強いに決まってますって。

ただイスコだけはまだグラウンドに姿が見えないんですが、今週末土曜のレバンテ戦を皮切りに来週水曜はCLグループリーグ1節のPSG戦、次の日曜にはサンチェス・ピスファンでのセビージャ戦とマドリーにはハードな日程が待っていますからね。金曜の記者会見後、夜にはマドリッド市内で開かれたラモスのドキュメンタリーのプレミア上映に一張羅をまとい、奥さん同伴で駆けつけたジダン監督もチームメートたち(https://bit.ly/2kElgzM)も水曜からはしっかり、サッカーに専念してくれるといいですよね。

一方、アトレティコでは相変わらずモラタがヒザのリハビリ中なんですが、実はこちらも土曜のレアル・ソシエダ戦から、水曜にはCLユベントス戦、来週土曜にはセルタ戦と忙しくなるのはお隣さんと同じ。まずは代表に行っている選手たちがケガせず戻って来るのを祈るばかりですが、実を言うと、火曜のリトアニアvsポルトガル戦を見て、ちょっと落ち込んでいるんですよ。というのも前節のセルビア戦では後半に20分ぐらい出ただけのジョアンがCFとして先発に抜擢されていたんですが、先制点となるクリスチアーノ・ロナウドのPKをゲットしたのこそ、彼の誘発した敵のハンドだったんですが、前半28分にはセットプレーで長身のアンドリウスケビチウスに競り負け、リトアニア唯一の得点を許してしまうことに。

それはともかく、その後、5、6回はあったシュートチャンスにことごとくジョアンは失敗。逆に後半だけでロナウドはハットトリックを挙げ、計4ゴールともなると、移籍金では上回っていてもやっぱり、まだまだポルトガル代表大先輩の足元には及ばない?まあ、それは当人もまだ19歳と若いため、仕方ないんですが、今季は彼を中心に攻撃を組み立てているアトレティコですからね。来週こそは昨季のCL16強対決2ndレグでロナウドがハットトリックを達成、ユベントスに逆転敗退を喫したリベンジをワンダ・メトロポリターノで見られるかと期待しているファンにはちょっと、厳しい現実を突きつけることになったかと。

いえ、まずは週末のリーガ戦の方を考えないといけないですけどね。そうそう、マドリッドの弟分チームたちにはスペインA代表の選手はいないんですが、U21ユーロ2021予選では金曜のカザフスタン戦(0-1)、火曜のモンテネグロ戦(2-0)でもヘタフェのククレジャ、レガネスのオスカルがプレー。2連勝に貢献してお勤めを終え、水曜からはクラブの練習に復帰するはずですが、いやあ、その2試合の3得点全て、やはり移籍市場終盤に噂の出ていたダニ・オルモ(ディナモ・ザクレブ)が決めているのを見たりすると、やっぱりアトレティコのフロントはちょっと、詰めが甘かったですかね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。