映画『天気の子』は、肯定派とアンチ派で恋愛遍歴に差はあるか? 交際人数、経験人数、過去の恋愛トラウマを緊急アンケート
大ヒット公開中の今作。前作『君の名は。』のように万人ウケする内容でなく、賛否分かれているのが面白い
大ヒット映画『天気の子』。新海 誠(しんかい・まこと)監督自ら賛否両論を生む作品を作ったというように、恋愛描写はかなり特徴的なものだった。
というわけで唐突ですが、この作品の肯定派とアンチ派で恋愛経験にその差はあるのか調査してみた!
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Q.映画『天気の子』肯定派? アンチ派?
肯定派:52%
アンチ派:48%
※20〜40代で鑑賞済みの男性100人に聞きました(以下の質問も同)
■『天気の子』の賛否は恋愛遍歴と関係あり!?新海 誠監督の映画『天気の子』が大ヒット上映中。公開3週で興行収入60億円を突破しており、同監督の前作『君の名は。』を超える勢いだが、その内容に関しては賛否が分かれているという。青春視点で映画を紹介するwebマガジン『チェリー』の編集長・霜田明寛氏はこう解説する。
「ヒットを生み出した監督の次作は大々的に配給される上、監督が好きな作風を自由に作れる傾向にあります。『天気の子』は本来の新海ワールドである、もどかしい恋愛色が濃厚な作品となり、そこが賛否分かれる大きなポイントになっています」
というわけで、すでに本作を鑑賞した20〜40代の男性100人にアンケートを行なったところ肯定派が52%、アンチ派が48%と確かに拮抗(きっこう)していた。
そして、ここで次の疑問。賛否両論の大きなポイントとなるのが「恋愛」であるなら、その人の恋愛遍歴によってこの作品の受け止め方が違ってくるのではないかということ。
くだらない内容だが、ツッコんでアンケートを取ってみたので、その結果を実際に賛否の分かれたシーンや設定と共に見ていこう! ちなみに、多少のネタバレも含まれるので気になる方はご注意ください。
Q.これまでの交際人数は?
アンチ派:5.2人
肯定派:2.8人
Q.これまでの経験人数は?
アンチ派:8.3人
肯定派:3.1人
物語は主人公である高校1年生の家出少年・帆高(ほだか)と新宿の歌舞伎町でバイトをしていたヒロイン・陽菜(ひな)のふたりを中心に進む。まずこのヒロインに関して大きく賛否が分かれた。まずは肯定派の意見から。
「出会いのシーンで、空腹の主人公にこっそりハンバーガーを渡す優しさや、弟とふたりで暮らしている大人びた雰囲気はまさに理想の彼女。高校時代に好きだった女子に重ねて見た」(25歳)
「主人公が家に来たときにサッと料理を作ってくれるシーンは家庭的で良かった」(24歳)
一方、アンチ派からはこんな不満が。
「主人公に突然名前を聞いたり、ボディタッチをしたり......。距離感の詰め方が異常。モテない男の妄想上の女子感が強い」(32歳)
「お金のために風俗で働こうとしたり、出会って間もない主人公を家に上げたり、男慣れしすぎ。この年齢設定では無理がある」(30歳)
この意見とアンケート結果に関して、前出の霜田氏はこう分析する。
「アンケート結果を見ると、肯定派はこれまでの交際人数がおよそ3人、アンチ派はおよそ5人と、現実の女性に慣れていない男性に今作のヒロイン・陽菜は支持されています。彼女はたとえるなら、新海監督もファンと公言している映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のヒロイン・なずなのミステリアスさと積極性を持ち合わせ、さらに『君の名は。』の三葉(みつは)の穏やかさとかわいさまで足した奥手ぎみの男子にとっては超理想の女性像。しかし現実の女性をよく知っている人からしたら、隙がなさすぎて嘘っぽいと感じてしまうポイントになります」
■ラブホシーンはどうなのか!?続いて印象的なシーンとして、主人公とヒロイン、ヒロインの弟の3人で雨の中ラブホテルに行くシーンがある。これに関して肯定派の意見は。
「やっと入れたラブホで、並んで寝たり、ドキドキするシーンもありながら、結局ふたりは何もしない。昔、一緒の部屋で女性と寝たけど緊張してできなかった思い出とかぶり、甘酸っぱい気持ちになった」(33歳)
では、対するアンチ派の意見は?
「好きな子とたまたまラブホに入るという設定が都合よすぎる。バスローブまで着るのはどうなの」(26歳)
この場面の賛否に対して霜田氏はこう語る。
「このシーンは、好きな子とセックスできそうで踏み出せない主人公の『エロもどかしさ』を体現しています。アンケートを見ると、肯定派の経験人数はおよそ3人、アンチ派は8人とかなり開きがあります。経験人数が少ない人は、過去に自分があと少しでヤレなかった日のもどかしさを思い出して共感しているのでしょう。経験人数が多く、当たり前にセックスしてこれた人には実感が湧かないのかも」
Q.恋愛に関するトラウマがある
アンチ派:ある 29.1%/ない 70.9%
肯定派:ある 36.5%/ない 63.5%
主題歌は前作に続きRADWIMPSが担当。『愛にできることはまだあるかい』というタイトルにも賛否があった
主人公は中盤からヒロインへの恋心を自覚するが、なかなか伝えない。肯定派の中には主人公のこのはっきりしない性格に感情移入した人もいた。
「今好きな女性が実は既婚者だと最近知った。何回かデートもしたが、この先に踏み込めない。主人公がヒロインの秘密を知ったときに思う『これ以上僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください』というセリフが自分の状況と重なってちょっとウルっときた」(36歳)
一方、アンチ派はこんな意見だ。
「告白もしていない段階で、さも両思いかのように話が進んでいるのが都合よく感じた。主人公は大事なところから逃げている弱い男に見えてイライラした」(30歳)
このシーンは恋愛観とどう関係が? 霜田氏によると。
「前作『君の名は。』の主人公・瀧(たき)は、ヒロインにはっきりと恋心を伝えていますが、今作の帆高はなかなか伝えないまま物語が進む。違いがよく表れています。アンケートでは、恋愛に関するトラウマがあると答えた人が肯定派で36.5%、アンチ派で29.1%と肯定派に少し多い結果です。トラウマがある人は傷つくのが怖い。だから自分から告白もしたくないし、付き合うよりも現状維持を願う主人公の気持ちに自分を重ね合わせやすかったのかもしれません」
Q.過去に叶わなかった恋をしたことがある
アンチ派:ある 54.1%/ない 45.9%
肯定派:ある 65.3%/ない 34.7%
思春期まっただ中の恋愛に、自分を重ねて涙したという肯定派の意見もあった
最後は結末に関する賛否。霜田氏いわく、新海作品にはおなじみのテーマが存在するという。
「新海作品は『個人の感情』と『世界の平和』を天秤(てんびん)にかける物語が多い傾向があります。特に『天気の子』にそれは色濃く、結末は賛否を呼ぶ結果になりました」
肯定派の意見を見てみると。
「ここまで、一途(いちず)に人を好きになれるのはものすごいことなんじゃないかと一周回って感心した」(32歳)
これに対しアンチ派は。
「自分の恋愛のために他人を犠牲にしたり、お世話になった人まで裏切ろうとするのはちょっと人としてどうかと思う」(31歳)
この賛否に関して、霜田氏はこう分析する。
「アンケートでは、過去に叶(かな)わなかった恋があると答えた人が肯定派で65.3%、アンチ派で54.1%と肯定派が多め。何かと天秤にかけて自分の恋を諦めた経験のある人が、すべてを犠牲にしてでも愛を貫こうとする主人公の姿勢を支持しているのだと思います」
以上のようなポイントに注目してもう一度見たり、まだ見ていない人は映画館に足を運んでみると面白いかも。
取材・文/菱山恵巳子 イラスト/福田嗣朗 写真/時事通信社